見出し画像

ストーブ

 寒々とした冬の日々にはストーブを点灯させて暖まる。ストーブは点灯させて最初は寒かった。二~三分過ぎた辺りでやっとぼっと暖かくなる。ストーブ内部では炎が赤々く燃えだしエネルギーや普段吐き出せない感情を吐き出していた。ストーブが吐き出している感情は人間が見ても酷く醜いはずなのに、どこか綺麗で高貴で優雅でどんなものや人間よりも美しい。
 ストーブの目の前で暖まりながらサスペンス小説を読む。事件では被害者を襲うのは被害者に恨み・妬み・怒り・異常な執着心を持つ容疑者。サスペンス小説の読者を襲うのは薄ぼんやりとした睡魔。探偵が事件の関係者を集合させ推理する場面を読むがウトウト。睡魔が襲い頭の中に白く濃い霧がかかる。頭の中は一九世紀の倫敦市内。一つ欠伸をしサスペンス小説をパタンと閉じる。閉じた瞬間にふと思う。薄ぼんやりとした睡魔とこの暖かなストーブが共犯関係ではないかと。

スキ・フォロー・コメントだけでも嬉しいです。 サポートもしてくださったらピョンピョン跳びはねて感謝します。