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生きていることの醍醐味。【エセ・エッセイ002】

2022年11月、寝台列車サンライズ出雲に乗ってひとりきり、夜の中を運ばれていたとき。心地いい酔いに身を任せながらこんなことを綴った。
(ヘッダーはサンライズ出雲車窓からの写真)

やばい、最高に楽しい。

ビールを飲みながら、窓の外を眺める。
夜の街を、夜と同じ暗さの部屋から。

じわじわとこみあげるなんとも言えない幸福感。
一人の、静かな時間の中で、窓の外の夜景が滑るように流れていく。美しい。これを好きなだけ、思う存分一人で味わうことができるなんて最高だ。

年老いてからの楽しみにするのもいいけど、こんなふうに感じる力がたっぷりあるうちに体験できる方がきっといい。
いつまででも起きて眺めていたい気分だ。

さらには月が明るくって、月と一緒に旅をしている気分になる。

明け方、止まることをやめたサンライズ出雲に貨物のように運ばれつつ、偶然にも大阪で目が覚めた。
第2のホームタウン、胸がザワつく。

カプセルホテルのような、巣穴のような落ち着く狭さに入っているだけで、行ったことのない場所へ運ばれていくのはとても面白い体験だ。

サンライズ出雲の中で書き留めたメモ

この時に窓の外を眺めながら湧き起こっていた高揚感を言葉にするのは難しい。だけど思い出せばすぐに、ぐっと熱く込みあがってくるものがある。

圧倒的なほどの「自分が生きている醍醐味」がそこにはあった。

ただ自分の感じるものにだけ意識も無意識も注いでいればよく、夜の中を流れ滑っていく景色を飽きるまで眺めていていいという、まったくの自由がそこでは自分に許されていた。

ふいに家々の灯りが途切れると車窓から外は本当に真っ暗で、景色と名の付く何も見えなくてもそれでもよかった。

そういう自由が、自分には必要だったのだ。

そうしてもいいし、そうしなくてもいい。
そうであってもいいし、そうでなくてもいい。

そうした類の自由が。

そしてもうひとつ必要なもの。
それは、この列車が必ずどこかに辿り着いてくれるということ。

いつか必ず終わりが来るということが、今を味わい尽くそうという気持ちをぐっと強く呼び起こさせるのだ。

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