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[2章7項]商売人としての賢さ

前回に続き、今日は第二章「儲ける力」の第七項について読んでいきたいと思う。

第七項 準備する。しかし固執するのは計画ではなく、成果である

前始末の重要性
商売をしっかり回していくためには、準備が大切です。準備というのは、計画とか、段取りです。きちんと商売が回っていくようにするためには、こうした前始末をきちんとやっておくことが欠かせません。例えば、実際に店頭に商品を並べて、それがお客様の欲しいタイミングに、欲しいものが、欲しい量そろっていて、そして最後それがちょうどよく売り切れる。これをやるには準備が欠かせません。例えば、ある商品の商売計画がうまくできていなくて、期間中、後追い、後追いで発注。結果的にお客様が求めるタイミングで必要とされる量を提供できなくて、期中欠品が発生したとします。この場合、たとえその商品の売上が前年以上だったとしても、きちんと商売ができなかったと反省をしなければだめです。準備が足りなかったと反省をして、次からは、このタイミングで発注をかけて、このタイミングでチラシにのせて……などと行動計画の具体的な修正を加えていくようにします。こうやって準備力を高めていくことは、商売人として無駄なく儲けるためには、不可欠なことです。実際に、商売をする側に準備力が足りないと、お客様に迷惑をかけることになります。お店に行ったら、自分が買いたい色やサイズがないというのは、お客様にとっては腹立たしいことです。例えばチラシにのっているからということでお店まで来た、あるいは駐車待ちまでして店舗に入った。そういったお客様が、いざ店に入ったら、目的のものがなかった。どのような気持ちになるかは、お客様の立場に立ってみれば分かるはずです。
作っている側、売っている側は、もしかしたら「たったワンアイテムのこと」などと思うかもしれまません。しかし、実際に起きていることは、単にその商品の販売機会をロスしたということではないということです。お店、ひいてはファーストリテイリングに対するお客様の信頼をロスしたということです。この数が多いほど、あるいはこの頻度が高いほど、我々が商売人としての信頼をどれほどなくすか、想像してみて下さい。商売は信頼です。信頼を失った会社に未来は訪れません。準備する力、計画する力が甘いというのは、実は大変なことだと思わないといけないのです。

成功がイメージできるまで考え抜くこと
さて、ものごとの準備をするための計画を作る時、それを機械的に書いていないでしょうか。作業としての計画作りに意味はありません。計画を作る時に、最も大切なことは成功のイメージ化です。「こうすればこうなるんじゃないか」「この域まできたら、たぶんこういうことになっているのではないか」「ここでこれをおさえておくことがカギになるのではないか」などということを、頭の中に絵として浮かんでくるまで試行錯誤し、「こういうふうに進んでいけばうまくいっているはずだ」という、自分が成功しているイメージをビジュアル的にしっかり持つようにするのです。こうやって成功がイメージできるところまで考え抜くことが極めて重要なプロセスになります。これが本当の計画作りであって、そうでないものは単なる作業にすぎません。イメージをビジュアル的にしっかり持てている状態というのは、計画が通り一遍の数値や予定の羅列ではなく、物語性を帝びたストーリーになるところまで考えるということです。ある教育学者の話によると、スポーツ選手でも、優勝する人や一定の記録を出す人は、優勝する前や記録が出る前にそのイメージが前もって湧くそうです。経営者も同じことで、何かをやる時は、「こうすれば自分は成功するんじゃないか」というイメージが湧くまで考える。それが出てくるまで、その方法論を必死になって考える。そして出てきた方法論を具体的な計画に落とす。こういったことがないまま、ただやってみても成功しないのではないかと思います。

固執するものを間違えない
さて、準備することの重要性、そして、それを単なる作業的にするのではなく、こうすればうまくいくのではないかという成果イメージが湧くまで考えることの重要性を、ここまで伝えてきました。ここから先の話は、今まで話してきたことと矛盾するように聞こえるかもしれませんが、これもまた非常に重要なことですので、しっかりと理解をして下さい。「ものごとを進めていくための計画は重要だ、しかし、計画に固執してはいけない」という話です。「計画を作り進備をすることは大切です。しかし、いったん計画を作って現実に入ってから先は、固執すべきものは、紙に書いてある計画ではない、計画の結果として目指す成果」だということです。必死になって計画を作ると、計画に陶酔してしまって、計画に固執してしまいがちなのですが、それを取り違えてはいけないのです。固執すべきものは最終成果、ただそれだけなのです。状況が変わってその最終成果を手にしようとしたら、何ページにもわたる計画を捨てなければいけないのであれば、ためらいなく捨ててしまいなさい、ということです。
計画というのは、日常の現実、あるいは競合の状態、会社の状態が違ってきたら、全部修正していかなければいけないものなのです。

たとえ話でよくする話ですが、優秀なマーチャンダイザーと、そうでないマーチャンダイザー。この違いはどこにあると思いますか。当初計画した通りやることに意義やプライドを感じて、最後まで計画通りにやろうとするマーチャンダイザ。これがだめなマーチャンダイザーです。当初計画した通りにいくなんていうことは、世の中、あまりないことなのです。世の中の現実は変化を前提にすべきなのです。その前提に立脚して、自分の判断・行動を早め早めに舵取りしないといけないのです。優秀なマーチャンダイザーというのは、変化の状況を見極めて、「当初計画はこれだけど、本質的にはこのシーズンは最終的にこういうことを達成しなければいけないので、だったら、この商品とこの数値はこういうふうに変えないといけない」というようなことをやっていくことができるマーチャンダイザーです。ですから、本当に優秀なマーチャンダイザーというのは、シーズンが終わってみたら、当初計画したこととシーズンを終えてやったことが違ったりする。違うかもしれないけれど、あげている成果は、当初予定した通りの成果をあげている。そういう人です。「世間で言う頭のいい優秀な人ほど、計画にプライドを持ちすぎてしまって、結果、計画と心中をしてしまいます。
我々は現実を相手に商売をやっているわけですから、役人的な賢さよりも、商売人としての賢さを大切にしないといけないのです。

準備に対する考え方は「お客様からの信頼に対する考え方」が投影される

作っている側、売っている側は、もしかしたら「たったワンアイテムのこと」などと思うかもしれません。しかし、実際に起きていることは、単にその商品の販売機会をロスしたということではないということです。お店、ひいてはファーストリテイリングに対するお客様の信頼をロスしたということです。

最初から完璧な計画を立てたり、準備をすることはできない。実際にプロジェクトが走り始めると、想定外の出来事の連続で、その都度対応が求められる。利害関係者が多ければ多いほどその不確実性も高まるため、事前にしっかりと計画を立てたにも関わらず起きてしまう失敗は「コントロールできないもの」として受け入れることが大切だと思う。でも大切なのは、「その失敗の後に何をするか」だ。

つい表面的な課題解決に終始し、仕事をやった気になってしまいがちだ。でも、そうではなくて「なぜ失敗したのか?」と原因を特定し、再発防止策を講じ、実践し続けることが何より大切。現実には、そこまでやる人はほとんどいないけれど。(ほとんどが「その場限りの反省」で終わる。)

「何故このような行動の違いが発生するのか」と考えてみたのだけど、それは「お客様からの信頼に対する考え方が甘いから」だと考えた。その甘さが、準備の甘さに繋がっているのではないだろうか。上司から指示されたことだけをこなし、失敗しないよう、責任を追わないように仕事をすることが目的になってしまうと、この「お客様からの信頼」に対する配慮がないように思う。(結果、再発防止を行うまでには至らない)それよりも、身内である上司やチームリーダーの顔色ばかり伺っているように見える。それこそ「どこを見て仕事をしているのか」という話だ。

お客様の信頼を裏切らないよう、誠実に仕事と向き合っていれば、自ずと「失敗する度に準備力」は上がっていくはずだ。

具体化した情報を伝える努力も怠ってはいけない

イメージをビジュアル的にしっかり持てている状態というのは、計画が通り一遍の数値や予定の羅列ではなく、物語性を帝びたストーリーになるところまで考えるということです。

プロジェクト計画において、抽象と具体のバランスはとても大切だと思う。机上だけの計画だと終始、抽象的な情報の取り纏めとなりがち。そうではなく、関わるメンバー全員が物語性を帯びたストーリーを共有できるようにすれば、情報がグッと具体化する。この具体化・共有する作業が不足すると、それぞれが担当する仕事のイメージが湧きづらく、結果、マイルストン直前になって準備不足が露呈する、といったことが起こる。

ここで言いたいことは「ただ具体化すればいい」という話ではない。全体的なスケジュールを共有するため「抽象的な情報の取り纏め」も大切だけど、それだけではなく「具体化情報の共有も重要」で、その両者のバランスが重要だということが言いたい。

計画を立てる側は、抽象・具体両方の情報を頭の中に描いておく必要があるけれど、メンバー各位には抽象化した情報(例えばWBS粒度の情報等)だけではなく、その担当者別のタスクに関する具体化情報を伝える努力も怠らないように。

結局、仕事はやり抜く力

「世間で言う頭のいい優秀な人ほど、計画にプライドを持ちすぎてしまって、結果、計画と心中をしてしまいます。
我々は現実を相手に商売をやっているわけですから、役人的な賢さよりも、商売人としての賢さを大切にしないといけないのです。

僕は割と計画に潔癖なタイプだと思う。それは自分の想定外の出来事に対する対応力が低いということでもあると思う。(つまり、弱い。)仕事なんて解決策はいくらでもあっていいし、その解決方法こそが個々人の多様性が表出される機会になりうるはずなのに、「自分の解決策」以外のやり方に対し柔軟になれないことは、結果的に弱いチームを作ることに繋がると思う。(メンバーもそれでは息苦しいと思うし)

現実に起こることは想定外のことばかりで、自分にはコントロールできないことだらけなのだから、「柔軟に自分が変化しながらも、結果に対してブレずにコミットし続ける」ほかない。これは「やり抜く力」に通ずる話だと思う。

結局、仕事はやり抜く力が全てだと思う。泥に塗れながらも結果を出すためにやり続けることが大切。やっているその姿はかっこ悪く、賢くは見えないかもしれないけれど、最後に結果を出して笑う人こそが「商売人としての賢さ」を持った人なのだと思う。

役人的な賢さだけではなく、商人的な賢さを身につけられるように。

来週も頑張ろう。









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