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『マエストロ:その音楽と愛と』、1stインプレッションのメモ

※当記事を無断流用するとちんこがもげます

レナード・バーンスタインと妻フェリシアのあまりにも唯一無二な形をした愛を描いた、ブラッドリー・クーパー監督・脚本・主演によるネットフリックス映画『マエストロ: その音楽と愛と』。

つい先ほど発表になったゴールデン・グローブ賞ノミネーションでも、最優秀作品賞(ドラマ部門)、最優秀監督賞(ブラッドリー・クーパー)、最優秀男優賞(ブラッドリー・クーパー)、最優秀女優賞(キャリー・マリガン)と主要4部門でノミネートされましたね!おめでとうございます。

20日から配信が始まりますが、待ちきれなくて先週末から封切られた劇場公開を見てきました。

やっぱ、映画館で観てよかった!楽しみにしている方は、ぜひとも劇場での鑑賞をおすすめします。2018年の『アリー/スター誕生』の後、ブラッドリー・クーパーが「次はレナード・バーンスタイン」と正式発表になった時からずっと楽しみにしていたのです。『スター誕生』ではクリス・クリストファーソンにしか見えなかったクーパーが、今度はレニー。架空のスターの次は実在のスターを演じるという。しかも、コンダクティング・コンサルタントとしてもヤニック・ネゼ-セガンが大活躍。前回書いたように、先週末にはメトロポリタン・オペラ『デッドマン・ウォーキング』でネゼの鬼天才っぷりを堪能したばかりというのに。なんというネゼまつりの12月。

クーパーは撮影が始まる前からずっとネゼと行動を共にして、指揮者としての振る舞いを学んでいたらしい。たしか最初はドゥダメルにも学び…みたいな噂もあったけど。ネゼのほうが北米エンターテインメントやポップ・カルチャーに通じているという意味では、適任だったと思う。クーパーが、ネゼの拠点であるフィラデルフィア出身というのも関係あるのかな。
ネゼがコーチとしてテクニックとしての指揮を教えるだけでなく、ネゼとバーンスタイン家の全面協力のもと、もうちょっと深いところでもクーパーと一緒に細かく役作りをしていったらしい。今のネゼは、まちがいなく米国クラシック界のキーパーソン。ただ有名な指揮者というのではない《スター指揮者》としてのレニーの内面を理解するにあたっても、ネゼの存在は大きかったのだろう。クーパー演じるレニーの指揮はレニーの形態模写にとどまらず、ネゼ推しのわたくしのひいき目ではなく、今のアメクラ界でもっとも旬な指揮者であるネゼの面影が端々に映り込んでいる。

サントラでもほとんどの曲をネゼ-セガンが指揮していて、彼がミュージカル『オン・ザ・タウン』を指揮していたりするのもなかなか面白いのだが。なかでも白眉はマーラーの『復活』。映画の中でもレニーとロンドン交響楽団の1974年のカテドラル公演での映像をほぼ完コピしている、物語のクライマックス場面なのですが。撮影現場のメイキングでは、オーケストラの演奏シーンをネゼが指揮している場面も。つまり《クーパー+ネゼ-セガン=レニー》の図式。しかも、実際に現在のロンドン響メンバーが出演している。若手メゾソプラノのスター、イザベル・レナードもいる。大スクリーンで観たら、私にもわかるおなじみのメンバーの方々のお顔がたくさん!
1974年のバーンスタインが指揮する、今のロンドン響。
すごい。
この時空のねじれだけでも、涙。
演奏しているオーケストラや歌手たちも、不思議な気持ちだったに違いない。

いろいろ書きたいことはあるが、今はぐっとこらえて(笑)。
そのうち、『細か過ぎて伝わらない《マエストロ》ガイド』を書くと思います。

しかし、しかし、ネタバレではないことを3点ほど書いておく。

その1。どうせ“クラシック音楽映画“みたいに語られるのだろうが、正直、かなりブロードウェイ映画でもある。わてが長年しつこく書き続けている説、ブロードウェイ劇場街とリンカーンセンターはつながってるっちゅう話と言っても過言ではない(個人の感想)。
そして、作品としては素晴らしいがまったく音楽映画ではない(音楽は小道具、美術として使われている)『ター』とは対照的な、あまりにも音楽的な(音楽が物語として使われている)音楽映画。第一印象としては『アリー/スター誕生』のパラレル世界、あるいは双子のような作品に思える場面があちこちにあった。

その2。主演のクーパーとキャリー・マリガンが演じるバーンスタイン夫婦が素晴らしいのはもちろんだけど、個人的には長女ジェイミー・バーンスタイン役のマヤ・ホークがめちゃめちゃよかった。

その3。八つ当たりかもしんないけど、フローレンス・プライスの手紙の一件を知ってから俺の中でのイメージダウンが止まらないクーセヴィツキー先生がますますイヤになったなー(笑)。


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