足跡を振り返れない(赤木 瞳)
私は、振り返ることができない人間だ。そして、省みて次へと生かすことがむずかしい人間だ。猪突猛進なのである。
初めて彼女と出会ったとき、同じにおいを感じた。私を好いてくれる女性は、だいたいなにかしらの共通点がある。彼女は、生き急ぐ感じといい、戦線へ出るわりには鎧すら着ないまま駆けていくところといい、私に似ていた。だから、はじめは心配をしていた(これは勝手な心配である)。
やはり彼女は傷ついてしまったけれど、その性質には似つかわしくない生命力があった。意外と立ち直りが早いのだ。