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#1 左ききの野良犬と逆さまの虹

〈口癖〉


服を作っているからなのか、物事の判断基準が
格好良いか格好悪いかになってきている。

それは服やモノに限らず、景色や音楽、振る舞いや佇まい、文章や言葉にも当てはまり、それらが僕の格好良いの琴線に触れたとき、「かっけぇ」と口からこぼれる。

この世界には格好良いが溢れていて、僕の口からはたくさんの「かっけぇ」がこぼれてしまう。口癖とまでは言わないが、言っているのを聞いた人は多いと思う。
だけど勘違いをしないでほしい。「ヤバい」とは違うから。森羅万象ありとあらゆる局面で使える「ヤバい」とは違うから。僕の「かっけぇ」は明確な基準を元に適切な状況下でのみ発動するから。「ヤバい」を多用する人を僕は蔑如してるから。

僕の仕事上、一つの言葉を多用するのは良くない。
接客で話す言葉や、オンラインショップのキャプション、文章を書くシーンも多い。選ぶ言葉一つで服の魅力を上げることも下げることも出来る。
となれば一つの言葉に頼らず語彙を豊富に持っておくべきだ。だから本をたくさん読むし、先週遂に歌集まで購入してしまった。

有難いことに手記のアクセス数も伸びてきた。
動画全盛の時代に服の魅力を文章や言葉で伝える。風流で素敵じゃないか。
「かっけぇ」なんて安直な言葉は使わず、そのシーンに合った綺麗な言葉を選ぼう。その為の日本語だ。世界で一番綺麗な言葉は間違いなく日本語だ。僕はそれを愛でて優しく口からこぼそう。


この間、おでん屋さんに行った。
明治時代からある建物でそれはそれは素敵な佇まいだった。
おでんを幾つか見繕ってもらうと、大将が言った。

「うちのおでんは醤油を使ってないんですよ、だからほら、二日間煮込んでいるのに大根が白いままでしょ。」

ぬらぬらと白く輝く大根を見て僕は言った。

「かっけぇぇぇ!!!」



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