【個人情報の壁を考える】支援が必要な人を見つけた私たちはどのような対応の選択肢があるのだろうか?

私は普段は介護保険事業をしています。その中で、個人情報の取り扱いに関する署名をもらうので、その範囲内での第三者への情報提供について悩むことはほとんどありません。

しかし、保険事業外で出会う方で悩むことがあります。出会った方の生活がちょっと心配だな〜とか、2週間後どうなってしまうだろうというように、生活の不安や困窮が予見されるような方と出会うことがあります。その場合、どのように対応するのかを悩みます。

例えば

  • 行政や、包括に情報提供した方が良いのか?

  • 個人情報保護についてどう考えれば良いのか?

  • でも、自分達だけでその人を支え切るのは難しい

  • 支援や対応遅くなればなるほどリスクが高くなりそう

などなど、現場では悩むことが少なくありません。

そんな時、皆さんはどうしていますか?

過剰な保護という問題

個人情報の壁についての問題は2つの面であると思います。
一つ目は、個人情報を適切に取り扱わず漏洩すること。
二つ目は、個人情報を過剰に保護してしまうこと。

今回私が問題と考えているのは、後者の場面です。
個人情報を過剰に保護してしまえば、例えば大きな危険が予見される場合において適切な機関への情報提供が遅れてしまいます。

また、東日本大震災後に顕在化した例として、災害時の要配慮者の情報をどのように取り扱うかという問題も、未だ取り残されていると感じています。

そのために最低限、個人情報保護法の範囲内で、第三者に情報提供をしても良いのかを知っておくと、有事の際の対応の選択肢が増えていきます。

個人情報保護法における第三者への情報提供に関して

主に直接的に人と対応する仕事において関連する部分は、法律では下記のように記載されています。

法第27条(第1項)
個人情報取扱事業者は、次に掲げる場合を除くほか、あらかじめ本人の同意を得ないで、個人データを第三者に提供してはならない。
(1)法令に基づく場合
(2)人の生命、身体又は財産の保護のために必要がある場合であって、本人の同意を得ることが困難であるとき。
(3)公衆衛生の向上又は児童の健全な育成の推進のために特に必要がある場合であって、本人の同意を得ることが困難であるとき。

https://www.ppc.go.jp/personalinfo/legal/guidelines_tsusoku/#a3-6

特に、(3)については、子供の虐待が疑われるような場合、国民は通報義務がある(児童福祉法25条)ので、個人情報よりも重要だと考えやすいと思います。

では、それ以外の方についてはどうかというと、(2)にあるように、生命や身体、財産の保護のために必要があり、本人の同意が困難である場合とあります。
例えば、生活困窮して食料が不足した場合や、ライフラインが止まった場合など、これに該当すると考えられます。

ここを、過剰に保護してしまうと、餓死してしまうリスクにつながってしまいます。

では、どのような立場で逡巡してしまうか。

NPOや民間事業者での対応に悩む理由

医療、介護、福祉系のような社会保障関連の事業の業界内であれば、このような方と出会う場面は多く割と一般的にあると思われますし、場合によっては事前に個人情報の取り扱いに関する同意書をもらいます。

難しいのは、この業界外で仕事や事業をおこなっているケースです。そして、同意書などを取らない日常的な関わりを行う方です。
その中で、生活が困窮している方に出会う可能性の高い仕事もあります。

例えば、NPOはその最たる例だと思いますが、それ以外でもたくさん考えられます。

  • 新聞配達や牛乳配達

  • 宅食サービス

  • 電気や水道、水道の検針

  • 家事代行サービス

  • 住宅のリフォーム

  • 飲食店や商業施設のフードコートなど

特に、これから支援が必要となる可能性の高い方に出会うのは圧倒的に上記のような方々ではないかと思います。

多様な立場の人とのディスカッションやダイアログが大切

”人の生命、身体又は財産の保護のために必要”という言葉も抽象度が高く、人によって解釈の幅が大きく分かれます。
むやみやたらに、第三者に情報提供すれば良いわけではありません。また、どのような第三者があるのかについても、地域や業種、経験によって様々ではないかと思います。

だからこそ、多様な立場の人とのディスカッションやダイアログが大事だと思います。それぞれの経験や実践、中には失敗から学ぶことがとても多いでしょうし、その中から自分のこれまでの行動を内省し学習することができます。

また、情報の受け取り手となるような行政やそれに近い関係機関の方は、どのように情報が届くのか、そして届けて欲しい情報やそのプロセスなど分かると、情報を届ける側の意識づけにもつながるのではないでしょうか。

そのようなことから、この問題は実践知が非常に多く、学び合うことが重要なテーマだと思いますので、ぜひ一緒に学んで行けたら嬉しいです。

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