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患者はこう考える〜入院や入院継続は医学的リスクだけで判断しない〜

改めて、病気ではなく、「医療における入院」の基準や定義について調べてみたのですが、残念ながら見つけられません。では、何を根拠に「入院」を判断するのか。

一般的に医学的なリスクが高い場合に検討されるのではないでしょうか。例えば、命の危険があることや、後遺障害の可能性があること、治療に伴う重篤な副作用が伴うことなど。

そして、それを科学的根拠をもとに判断するのが、診療ガイドラインです。

このサイトをご覧頂くと、さまざまなガイドラインが検索できるので、皆さんや周りの方でご病気の方がいたら、一度調べてみるのも良いかもしれません。


仮)日本における入院に関する医療者、患者の視点の違い及び納得感に影響する患者の思考過程(橋ver1.0)

私たちは、当然自分の命だけではなく、さまざまな方々と生活を共にしていくことで暮らしを分かち合い、結果的に命を助け合っています。
自身の命を守り他者との交流がなくなることで、他者の命のリスクとなる可能性にもなります。

患者としてはそれらを総合的に考え、入院の意味や必要性を捉えることになります。つまり、医学的なリスク以外の因子および、それらの経時的変化における相互作用によって入院の納得感、整合性を判断します。

医学的リスク

医師の本文は、医療であり病気や怪我の治療です。それを最優先に、入院か外来の判断を行います。限られた時間の中で、全ての情報を把握することはできないので、当然の判断です。

医師の置かれている状況は極めて過酷です。
こちらの記事をご覧ください、驚くべきことが書かれています。

時間外・休日労働時間が年960時間をやむを得ず超えてしまう場合には、都道府県が、地域の医療提供体制に照らし、各医療機関の労務管理体制を確認した上で、医療機関の指定を行うことで、その上限を年1860時間とできる枠組みが設けられます(※2)。

医師の働き方改革_厚生労働省

これ、労働時間ではなく、時間外・休日の労働時間です。
1860時間/12ヶ月=155時間/月の時間外・休日の労働時間という意味です。
これが、労働時間にプラスされるのです。
8時間×5日×4週=160時間/月に合わせ、最大315時間/月。
仮に、月の労働日数を20日とすると、315/20=15.75時間/日。
1日、16時間勤務となります。過労死ラインを超える時間です。
全ての医師では無いですが、このような医師のおかげで私たち患者は治療を受けることが出来ています。

家族的リスク

2020年時点で、全世帯の38%が一人暮らし世帯(男女共同参画白書 令和4年版男女共同参画白書)であり、何かしらの暮らしにくさを支える人を誰か他サポートしているのが現在であり、さらにそれが進行していくことが予想されています。さらに、同居家族でも誰かのケア(育児、介護、看護、治療など)を担うことで、なんとか生活が成り立っている世帯もあります。
例えば、産後うつを見てとると、女性だけでなく男性も同様に、約10%の方が産後うつになると報告があります。(Prevalence of perinatal depression among Japanese men: a meta-analysis)。また、産後女性の1年以内の死亡率で最も高いのが自殺であり、産後の母子はもちろん、男性を家族を支えることも極めて重要です。。
また、障害者は全国に964万人以上おり、人口の約7.6%に相当しています。(障害福祉サービス等報酬改定検討チーム第25回(R4.3.28) 参考資料
このような状況で、家族の支え手が入院することは、家族の生活のリスクを、そして場合によっては命のリスクにも繋がります。

経済的リスク

入院することによって、社会活動が制限され、当然それは仕事に及びます。病状や治療の程度によっては、ある程度の時間が確保できるでしょうが、それまで同様に集中して仕事を行うのは当然難しくなります。そして、入院期間中には無収入になるリスクもあります。日本の労働の補償については、基本的には雇用保険と社会保険が前提となっているため、例えば傷病手当などフリーランスや経営者は対象から外れることがあり、経済的なリスクに直結します。経済的に苦しくなれば、野菜を購入することが難しくなります(平成26年国民健康・栄養調査報告)。また場合によっては、住まいの維持が難しくなることもあります。経済的リスクは、健康リスクに繋がります。

仕事的リスク

上記の経済的リスクとも関連しますが、仕事上でも大きな影響があります。
経済的なリスクが高まると、キャリアが変わる可能性や働き方が変わる可能性、最悪の場合は失業のリスクもあります。もし、経営者の場合、抱えている従業員とその家族に対する責任もあります。入院のタイミングや、期間によって大きなリスクに繋がり、せっかく退院したのに仕事が無いという状況を作らないようにどうすれば良いか、患者は考えています。

健康的リスク

病院は怪我や事故が最小限となるように、バリアフリーとなっています。さらにコロナ禍もあり、病院内の移動も制約もあるます。
当然生じるのが、運動不足。また、感染症対策もあり基本的には話をしないので、呼吸する機能が低下します。

さらにこの閉鎖性が生む孤独や孤立からメンタルヘルスにも大きな影響を及ぼします。例えば、高齢者では入院治療によって医学的リスクが改善し、退院したにも関わらず、残念ながら歩けなくなっていたという事がしばしば起こります。若年者の場合、そこまで行かなくても、悪影響を及ぼす可能性を伴うのが入院です。入院しているんだから健康になると思ったら大間違いです。治療する目的は、病気であり、健康な臓器やその人の社会性や精神性ではありません。それらは、自分で守らなくてはなりません。

医療提供体制の国際比較(厚労省)

さらに、忘れてはならないのが、人権侵害のリスクです。日本は世界で最も人口あたりの病床が多い国です。日本医師会の報告によると、2018年は日本中で病床は1,641,407床あり、人口1,000人あたり13.0床あり、これは先進諸国最多となります。

そして、日本ではハンセン病の歴史や、精神科病棟への入院(日弁連資料)など、人権を侵害する医療が昔から行われています。

コロナ禍でも遺憾なく発揮された、日本のゼロリスク思考に加え、従来よりある医療が持つ正義による侵害性によって、他国に比べ入院という選択が行われやすいのが、この日本だと考えられます。

患者が考える入院の意味と納得感について

医師の専門領域は当然医療です。中には、患者の家族や経済状況、仕事や入院に伴う健康上のリスクなど考慮する医師もいますが、限界があります。また、患者以上に患者のことを知っている人は存在しないため、患者が伝えなければ、入院や治療について変わらない可能性があります。

では、どのように考えれば良いのか、一つの参考として再び下記の図を参照ください。

上図のように、プラスであれば入院に納得し妥当だと判断します。しかし、マイナスである場合は、弊害の方が大きく退院を検討します。

特に、初期ではAが大きいと捉えますが、病状の経過によっては徐々に減少します。また、Cについては入院の期間が長引けば長引くほどに増大していきます。

それぞれの皆様へ

医療者の方へ

Aの因子については、本文でもあるので十分に行なっていると思います。その上で、各専門職が連携し患者にCの状態について不安がないか確認したり、話せる場や機会をぜひ作って頂きたいです。ただでさえ病院内は、ヒエラルキーや権力を強く感じさせます。

患者の方へ

突然のことで、さまざまな悩みや不安があることと思います。そのような状況で考えることや整理することは、とても難しいことです。僕自身もそうでしたし、今も正直戸惑っています。今回の入院の体験で感じたことを整理したのが上の図です。もし、お役に立つようでしたら幸いです。

家族や知人の方へ

患者さんが不安があったり、困っているようでしたら、お話を聞いてあげて下さい。チャットでやり取りをすることでも良いです。私自身もそれでとても救われました。もし、医療者とのコミュニケーションに悩んでいるようでしたら、一緒に作戦を考えるの良いかもしれません。
コロナ以降、病院は他者との接触を基本廃止し、病院によっては病棟から出ることも出来ないようです。ぜひ、患者さんとの心の交流を続けて下さい。

ここまで読んで下さった方へ

長文ご覧下さり有難うございました。
基本的に入院のようなネガティブなことは、他者に話しにくい事だと思います。皆さんの大切な方へシェア頂ければ幸いです。

また、今回の内容は抜け漏れがあるでしょうし、もしかすると認識の誤りがあるかもしれません。
ぜひ、フィードバック頂けると嬉しいです。

現時点ではこの記事が、誰の役に立つか全くわかりませんが、誰かの参考になれば嬉しいです。


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