究極のメンタル③−2 ゾーンに入りたくない!?コントロール編

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今回の記事は前回の続きです。
(前回記事はこちら↓)

 
 前回の記事で、篠原さんが勝ち続けるためにゾーンに頼らない戦い方を目指すようになったことを確認しました。
 今回はゾーンに頼らずに、どのように戦うかを見ていきましょう。
 
 
 すでにヒントは出てきていますが、ここからはゾーンに頼らずに勝ち続ける方法を見ていきたいと思います。
 キーワードは「コントロール」「駆け引き」です。
 前回記事の冒頭に引用したインタビューで「コントロール」という言葉が繰り返し使われていましたね。もう一度確認してみましょう。
 
篠原:ゾーンの状態って、これは俺の個人的な考えなんだけど自分でコントロールしてないんだよ、自分を。何かこう誰かにコントロールされているわけじゃないんだけど、無意識で動いている状態が嫌で。常に自分で自分をコントロールしてたい。プレー全体、ゲーム全体も自分でコントロールしてたい。ちゃんと相手の状況も理解してたい。自分のペアの状況も理解してたい。自分の技術的な調子もちゃんと分かってて、精神的な状況も分かってて、でプレーを選択したい。っていうふうな考えを持って、それから入れなくなった。
 
 コントロールする対象はいろいろあります。まずは自分をコントロールして、安定したパフォーマンスを発揮できるようにします。さらに、ペアもコントロールします。そして相手のこともコントロールします。そうすることでゲーム全体をコントロールすることが可能になります。様々な要素を自分の力でコントロールすることで、パフォーマンスが安定し、勝率も高まるのです。
 
 では、それぞれの要素をどのようにコントロールしていくか具体的に見ていきましょう。


自分をコントロールする


 簡単に言えば、しっかりと準備をするということです。
 例えば、ウォーミングアップをしっかりと行い、体と頭の調子を上げます。駆け引きが重要なので、頭をクリアでよく働く状態にしておくことも意識していたそうです。また身体面や技術面はただ調子を上げるだけでなく、自分のその日の調子を把握することも大切にしていたそうです。その日の調子でできることを把握して、それを基にして戦略を組み立てていくからです。
 
 メンタル面では「演じる」という方法をとって集中状態に入っていったと言います。
 篠原さんの発言を確認しましょう。
 
篠原:俺の場合はね、けっこう雑音が多いほど入れる。さっき言ったように相手がやる気ないとか、あとは応援がたくさんいるとかっていう状態の方が、まわりががやがやしてるとか。シーンとしてるとかじゃなくて。その方(雑音が多い方)が自分を作りやすい。けっこう演じている部分もあると思うんだよな。集中している自分を演じる、と、集中できるというような感覚があって。だから、周りががやがやして雑音が多いと、本来だったら集中できない状況だけども、でもそこでも集中する自分、っていう自分を演じるとこういう状態(いい状態)に入りやすくなる。
 
 ここでの「雑音」はかなり広い意味で使われると考えていいでしょう。集中する上で邪魔になる要素全般を指していると考えられます。篠原さんの場合は、集中を妨げるような要素をむしろ利用して集中状態に入ることができたということです。普通は、ネガティブなことは生じないでほしいと思うし、目を向けたくないですよね。それを逆に利用してしまうところに篠原さんのすごさがあると思います。安定したパフォーマンスを発揮できることも納得できますね。
 直接集中しようとするのではなく、集中している自分を演じることで間接的に集中状態に入っているという点が興味深いです。素の自分で勝負するのではなく演技することで、ある意味で自分を騙すようにして自分をコントロールしていることが分かります。この手法は広く使われています。「篠原・小林」ペアとして有名になってからは、そのイメージを利用してもいたと言います。
 
篠原:メンタルコントロールもある意味演じる。素の自分だったらもう、うわーってなって、いやだーってなっちゃったりとか、ね、イライラして、ゔーみたいな感じになったりとか、どんどん沈んでって、あーもうだめだってなっちゃうけど、そこを、「いやいや、ここに立っている自分はそういう自分じゃないよ」っていうふうに演じてコントロールしていくんだよ、自分を。それが、メンタルの安定につながるんだよね。「こんなところで凹んでる自分は、篠原小林の俺じゃないよ」みたいなさ、「いやいや諦めないで最後まで、あの、考え続けるのが俺でしょ」みたいなさ(笑)
筆者:でも、面白いですよね、それでそうなるんですからね。
篠原:まあね、そうだね。メンタルのコントロール、だからその演技力なんじゃない?(笑)メンタルの強さ(とは演技力のことだ)(笑)みたいな。
 
 試合中にネガティブな感情に襲われるときも同様に対処していたようです。
 
篠原:なんかこうネガティブな感情は殺すように演じてた印象の方が大きい、演じて、(ネガティブな感情は)あったけど、演じて抑えてたみたいな感じだと思う、うん。
 
 話を広げると、演じるということは以前の記事(↓のリンク先)で触れた「真似をする」ということに通じる部分もあるでしょう。直接課題に取り組むのではなく、演じたり真似したりすることで間接的に問題を解決しようとしています。

 
 集中という点にもう一度話を戻すと、篠原さんはそういう作業をあえて人が多いざわざわしている場所で行っていたそうです。
 
篠原:ざわざわしている方が集中しやすいなっていう、意外と。だから、試合会場とかでも(中略)結構ざわざわしているところに歩きに行ったりとか、ウォーミングアップ中に。結構したりとかする。
筆者:それはわりと実践的なアドバイスという感じですね。
篠原:やれるようになると、感覚がわかってくると。知ってる人の前通ってもわざと無視して行ったりとか。もう集中してるふりをして。そうすると、だんだん自分の世界に入ってくっていうか。
筆者:普通集中しようとするとみんな静かなところに行っちゃいそうな気がしますけど。
篠原:そういう時間も作るんだけどね。そういう(集中している)自分に入ってきたら、試合の直前は静かなところに行って、やることをチェックして。(中略)最後やることだとか戦略のことだとか相手のこととかっていうのをちょっと静かなところでチェックをして、で試合に入っていく。
 
 ここでも普通の感覚と違う方法がとられています。集中すると言えば、静かなところで自分と向き合うようなことをイメージしますが、篠原さんはあえて人が多いところに行って、そこで集中している自分を演じることで集中状態に入っていったと述べています。戦略の確認などは静かなところで行うと言っていますが、集中する作業は人が多くうるさいような場所で行っていたのです。
 なぜこういう方法が良いのでしょうか?それを考えるためには「集中」という言葉の意味から再考しなければなりません。「集中」は「中に集まる」と書くように、自身の内側に入り込んで、集中力を狭い対象に向けていくようなイメージがある言葉です。ところが、篠原さんが目指していた集中状態は、もっと注意力を広く、会場全体に向けるような感覚のものであったのです。というのも、駆け引きをするためには、相手の様子や会場の雰囲気や風などに注意を向けて、全体的な雰囲気を感じ取る必要があるからです。篠原さんの言う「集中」は内側に狭く向かうものではなく、外側に広く向かうものだったのです。
 
篠原:そう、まあなんか、そっか、そっか、いや集中した状態っていうのが、まず、あれなのかな。
筆者:ああ。
篠原:少し違う表現なのかな。なんか頭をこうクリアになるというか、なんかコートに、どっちかっていうと、自分に、こう集中っていうよりはコートに入り込むみたいなイメージ。で、相手も含めて、もうその空間に集中するっていうのが、うん、自分の中向いて、こうやって、うわー(狭く集中するような手振りをともなって)って感じじゃなくて、広く、こう視野が広がってとか、っていうイメージの状態に入るための方法だったんだよね。だから、なんか、まあその辺で言うと、あんまり、だから静かなところで、こう(狭く)やると、どんどんどんどん、こう、なんか自分の中に入ってくような感じがするじゃんか。じゃなくて、なんか周りも、こう見ながら、その、ちょっと人がいるところに行くみたいなのは、なんかそういうのは、そういう方法を選んだのはあるかもしれない。
筆者:ああ。
篠原:周りも見ながら、周りの状況も見て、なんか声かけたそうな人もいるなあっていうのも見ながら、でも、自分の方に入っていくとか。で、また周りの方見て、あ、なんかちょっと今見られてるなとか、あの、あの人、「篠原さんなんか集中してるな」と思ってるなとかっていうのをちょっと考えながらも、ちょっとまた自分の方に戻ってみたいな、そんな感覚。
筆者:あ、じゃあその、ざわざわした中でいるみたいな感じが、試合のときの状況に、
篠原:そうかもしんない、うん。
筆者:わりと近い感じで準備してる。
篠原:そうそうそう。だから、こう(狭い)じゃなくてこういう(広い)集中の仕方をしたいみたいな、イメージかもしれない。まあ、今ね、ちょっと想像してみると、たしかにそういうところはあるかもしんない。
筆者:なんかそんな感じが。
篠原:だからこう(狭く)なりたくなかったよね、あんまり。こういうふうに、ずっと自分の中に自分の中にっていうふうに。そこはだから集中の仕方が違うかもしれないよね。ゾーンに入るっていう、ウォーっていうのは、まあやっぱこう(狭く)なってた方が、周りが見えない、何も覚えてないぐらいみたいなのとはちょっと違う集中の仕方なのかもしんない。集中の質、質っていうのかな。うーん、たしかにそれはあるかも。その、その学生の頃とかは、やっぱりどっちかっていうとこういう(狭い)感じで。まあ集中ってそういうもんだと思っていたから。
 
 私が考えるに、ざわざわしている状況の中で広く注意を向けながら集中している自分を演じることは、試合の状況そのものにかなり近いものです。篠原さんは試合中も相手を観察したり、会場の雰囲気を感じ取ったり、さらにはコート状況や風の状況も頭に入れたりしながら、戦略を考えて戦っていたからです。だから、この方法が試合に向けての集中の仕方として適切な方法なのです。それに対して、インタビュー中にも触れられている通り、ゾーンのときの集中状態は狭い集中状態であり、そのような状態では駆け引きができないので安定して勝つことが難しくなるのです。
 ゾーンに頼らない戦い方は「無心」という言葉でイメージされるような、何も考えていない状態とは違うと言います。むしろ、頭は常に高速で働いていて、瞬時に高度で正確な判断が行われているのです。篠原さんは、このような、ゾーンに頼らない自己コントロールの仕方について「俯瞰してる自分もちゃんと残しておきたい」とも表現しています。身体面ではゾーンのような状態で、頭だけは冷静な状態を残しているような感覚であるとも表現しています。体は熱く、頭と心は冷静な状態で戦っていたとも表現しています。面白い表現なのでインタビューを2つ確認してみましょう。
 
篠原:多分飛び抜けるのは難しい、(俯瞰する)自分を残すと。ここまで(首まで)浸かってる状態だよね。そのゾーンという何かプールみたいなものに。浸かっている状態でここ(頭)だけは浸からないで残してるっていう。で、だから残してる分、ガーンって行けなくて。コントロールしちゃってる自分がいるのでガーンっていきたくないわけだから。そこは抑えてる自分がいて。で、そのことによってゲーム全体をコントロールできるようにはなってるんだけど、自分もコントロールしてるから、自分は制御不能のもっとすごい、もしかしたらすごい世界には行けなくて、そこを全部浸かっちゃえばそこに行ける状態なのかもしれない。そこまではやったことないから分かんない。
 
篠原:俺は体、体はこう、体はこうガーって行ってて、常に頭はクリアみたいなイメージ。気持ちっていうよりは、体は熱く、で、気持ちと頭はちょっと落ち着いてみたいな。
筆者:ああ、気持ちと頭は落ち着いて。
篠原:うーん、かなあ。そういう印象かなあ。ガッツポーズして「おらあ!!」とかって言ってるけど、そういう自分も意外と客観視できてるっていう。
 
 身体的にはハイになって高いパフォーマンスを発揮しているけれど、同時に駆け引きのことを考える冷静さも常に持ち合わせているということです。正確に言えば、試合中に使い分けてもいます。大雑把に言えばポイント間は冷静に戦術を話し合うし、ポイント中は熱くプレーしています。この辺りの使い分けが絶妙であることが篠原さんの強さの秘訣でしょう。理屈では分かるけれど、実践するのはめちゃくちゃ難しいです。
 

ペアをコントロールする


 篠原さんは、小林選手とペアを組んで、長年ダブルスで活躍してきました。篠原さんはペアの小林さんの状態もコントロールしようとしていたと言います。
 ペアの中で、メンタル的特徴を意識した役割分担のようなものがあったことが分かります。篠原さんが安定したパフォーマンスを発揮し、小林さんは波がある代わりに好調時には素晴らしいパフォーマンスを発揮するという役割分担だったとのことです。ただし、この役割分担は、話し合った結果のものではなくて、小林さんはこのような役割分担はあまり意識していなかったようです。
 
篠原:俺もそれが効いてるかわかんないけど、あいつ(小林さん)がそういう状態に入れるように、トーナメントの前日とかからコントロールしてくの。それが効いてるかわかんないよ。
筆者:具体的にはどういう?
篠原:乗せるというか。あいつを自分の世界に入らせるような声かけをしたりとか、あとはそういう雰囲気を作ったりくらいしかできないんだけど。で、そういう世界に入ったとしたら邪魔しないようにするとか、っていう感じかな。


相手をコントロールする


 いわゆる「駆け引き」と呼ばれるものです。(ソフトテニスは駆け引きが重要なスポーツであるし、楽しさもそこにあるということがしばしば言われます。)
 テニスは対人スポーツなので、勝率を上げるには、自分のパフォーマンスを上げることはもちろん、相手に実力を発揮させないことも、重要な方法になってきます。駆け引きを重視することで、そういう戦い方が可能になります。
 
 篠原さんが駆け引きの材料として重視していたのは相手の心理面です。篠原さんは相手のフォームなどの技術的側面よりも心理的側面を観察していたそうです。相手の仕草や表情をよく観察して、駆け引きの材料としていました。そして、その材料を活用すれば、相手が打ってくるコースを予測したり、さらには相手のボールや動きを誘導したりするようなことも可能になります。
 
 少し長くなりますが具体例が豊富な方が分かりやすいかと思うので、そのままの形で引用します。
 
篠原:どちらかというと、その何考えてるのかとか、今どういうメンタル状況なのかという方を見ていて、まあ多分フォームとかも見るんだけど、そっから動き出しても間に合わないから、その前の、その前に、前のところで、こう、相手が今どういうふうにどう考えてるからボールはこっちに飛んできやすくなるだろうなっていう、まあ逃げてくるのか、攻めてくるのか、それとも得意なところでくるのか、無難なところでくるのかってっていうのはフォーム見てもわかんないから。まあバランスとか見たらちょっとわかんのかもしれないけど、まあそれが、それを心を読めば、分かるわけじゃんか。まあ上手く読めれば。だから、そっちを見てる、まず。その、ポイント始まる前に。そこ、その心が現れるのって、表情だとか行動だとか、その辺に現れてきたりとか、あとはスイングが鈍くなったりとか、みたいなところに現れてきて、まあスイングが鈍くなるっていうのはまあちょっとポイントの前には見てないけど、そういう行動に現れる、行動から相手の心理面を見て、で、俺の場合はそれを重要視して、駆け引きを作っていくよね。で、最終的に、で、それを見て自分が、まあ自分が配球、好きなところに配球できるような状況だったら、より相手が嫌だなって思ってるようなところに配球をして、嫌だなって思ってるようなところに、嫌だなって思うようなボールを打って、速い球なのか遅い球なのか、スライスなのかとかね。っていうそこの選択をしていって、で、こっちに打たせるみたいな、そうすればこっちに打ってくるだろうっていうようなボールを打つ、っていうのかな?このメンタル状況でこういうボールを打てば、あいつはここに打ってくるだろうっていうところで決めてる、ほぼ。ほぼっていうとあれだけど、6割7割がたそこで決めて、最後の最後はそのときの踏み込み方だとか、もしかしたらちょっとフォームのところを見て最終決定をするみたいな感じなのかなあ。
筆者:そのメンタルの部分はじゃあその、ラリーの中でっていうよりも、そのポイント間とかそれまでのポイントとか
篠原:でも、ラリーの中でも感じることもある。あ、弱気になってる、みたいな、弱気になってるからこっち、みたいな、その瞬間に感じるときもある。
筆者:それはラリー中でも相手の表情が、
篠原:わ、復活した、みたいなときもあるし、弱気だと思ってたのに、わ、いきなり強気になってるみたいな、やべ、みたいな。それはなんなのかな、どこ見てんのかな、動き、躍動感とか(笑)うん。でも、体重の乗り方とか。ってなるとやっぱり動きも見てるね、ラリー中に。そういうところから、でも、どっちかというとそこから打ってくるコースを読むというよりは相手の心を読むみたいな、強気でくるのか弱気でくるのか、だから多分、ラリー中でも強気だったらこっちのコースに来るだろうな、弱気だったらこっちのコースに来るだろうなみたいなのがパッパッパって、このボールだったらこの確率でこうこうこうみたいなのがあって、で、それで判断するんだと思う。まあ簡単に言うと、俺らのスタイルだったら2人で前行ったときに弱気だったらセンターに来やすくなるし、安全だから。で、強気だとやっぱ、ストレート、ストレートのダウンザラインのボールっていうの、ストレートの一番コースも短いし、コースも狭いしっていうところに、こうねじ込んでくるみたいな、判断になるのかな。
 
 インタビューを正確に読めば、相手のフォームを判断材料にしていないわけではないことが分かります。フォームも見ているけれど、フォームからも相手の心理面を読み、それも駆け引きの材料にしているのです。とにかく、篠原さんは心理面を重視して駆け引きをするプレーヤーであったと言えます。
 
 駆け引きを重視するようになってから上記のようにして、相手の動きを予測していました。一方、ゾーンのときにも読みは鋭くなりますが、それは駆け引きに基づいた予測とは違う感覚のものだったそうです。身体的機能が極限まで高まることで、相手のフォームを見て相手の打つコースが正確に読めるような感覚でした。
 
篠原:相手のことがすごい見える状態、細かいこういう動きだったりとか、そこまではっきり覚えてないけど、雰囲気みたいのとか、言ったら目線とか、っていうところまで見えてるような印象、っていう感じかな。


試合全体をコントロール


 ここまで見てきた様々な要素をコントロールすることで、試合全体をコントロールすることができるようになります。篠原さんは、自分だけでなく、ペアのことも考え、相手の挙動を観察していて、かなり広い範囲に注意を向けていることが分かります。しかし、注意を向ける対象はそれだけではありません。コートの状況や風の状況も頭に入っています。そして、試合の流れも感じ取っています。これら全てを感じ取りながらプレーする感覚は、試合会場の空間と一体になるような集中の仕方であったといいます。
 
篠原:(空間と)一体になるみたいな、ペアのことも考えなきゃいけないし相手のことも考えなきゃいけないし、風も感じなきゃいけないしコートの状況も全部把握したうえでプレーをしなきゃいけないっていうなんかそこの空間と一体になるみたいな感覚はあった。
 
 さらには会場の雰囲気を感じ取り、国内の試合であれば会場の雰囲気を味方につけたり、海外での試合であればヒールを演じたりすることも意識していました。
 
篠原:ガッツポーズしておらあとかって言ってるけど、そういう自分も意外と客観視できてるっていう、
筆者:ああしてるときも
篠原:それもパフォーマンス。(中略)国内(の大会で)はもう完全にパフォーマンスみたいなもんだね、あとは相手の、相手にとって、
筆者:どう見えるか。
篠原:そうそうそう。と観客がどう見てるかみたいな。で、そうするとやっぱああいうの好きじゃん、みんな。そうすると空気がこっちに(笑)
筆者:へえー。
篠原:っていうのはちょっと計算してた。俺らが点取ったときの方が拍手が多くて、相手が点取ったときには拍手あるけど、それよりもこっちの拍手の方が多いとかさ、なんかちょっと感じてた。
 
 このように様々な要素をコントロールすることで、最終的には試合全体をコントロールすることができるようになり、駆け引きを重視した戦い方が可能になったのです。そして、そのことにより、勝率が上がり、安定した戦績を残すことが可能になったのです。また、このような戦い方は、ゾーン状態とは相容れないものであったので、篠原さんがゾーンに入ったのは25歳ごろまでで、それ以降ゾーンに入ることはなくなったわけです。
 
 次回の記事では、篠原さんが試合の中でどのように駆け引きを行なっているかを具体的に見ていきましょう。


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