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黛敏郎の代表作「曼荼羅交響曲」「舞楽」

黛敏郎の音楽に触れると、日本の伝統文化の深さや美しさを感じることができます。彼は日本の古典音楽や仏教の思想をオーケストラで表現することに挑戦し、独自の音楽世界を創造しました。今回は、彼の代表作である「曼荼羅交響曲」と「舞楽」について、岩城宏之指揮NHK交響楽団の演奏を聴きながら、その魅力に迫ってみたいと思います。

「曼荼羅交響曲」は、大乗仏教の金剛界曼荼羅と胎蔵界曼荼羅をモチーフにした2部構成の作品です。第1部は金剛界曼荼羅を表し、打楽器とオーケストラが断片的な音を交換しながら、次第に東洋的なイメージが強まっていきます。第2部は胎蔵界曼荼羅を表し、静かな仏教的な境地から打楽器や金管が大きく盛り上がる展開になります。この作品は、NHK交響楽団初の世界演奏旅行の際に各地で演奏されたそうですが、日本の音楽文化を世界に発信した傑作と言えるでしょう。

「舞楽」は、バレエ音楽として作られた作品ですが、西洧音楽の楽器を使って雅楽の音響を模した作品でもあります。笙やしちりきのような音色が交錯しながら段々と盛り上がっていき、東洋的なリズムの現代舞曲になっています。そのためか全体を通して平安王朝の雰囲気に満ちた作品です。バレエ音楽と言うよりは、能や歌舞伎の舞を思わせるような独特の魅力に満ち溢れています。

演奏は、これらの両曲の初演者である岩城宏之指揮NHK交響楽団によるものです。黛敏郎も生前において認めていた演奏だけに、現時点でも最も権威ある名演と評価しても過言ではありません。岩城宏之は黛敏郎の音楽を深く理解し、オーケストラを巧みに操っています。NHK交響楽団も素晴らしいアンサンブルで黛敏郎の音楽世界を表現しています。

黛敏郎は日本の伝統文化に深い敬意を表して、そうした伝統文化に根ざした傑作の数々を世に送り出しました。現在における日本の伝統文化や日本人としての誇りを蔑にするかのような嘆かわしい状況に鑑みれば、今こそ黛敏郎の音楽を深く味わうべき時にあると思います。彼の音楽は、日本人の心に響くとともに、世界に通じる普遍的な価値を持っています。ぜひこの機会に、黛敏郎の音楽に耳を傾けてみてください。


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