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終わらないパレスチナ人の悲劇 〜 アメリカ合州国による徹頭徹尾のイスラエル支援のもとで

ナクバとは

本年1月13日付の筆者の note 投稿(以下リンク先)の冒頭の章「ナクバとは」に書いたテキストを, 以下の note 投稿リンクの下に, あらためて転載する(なお以下リンク先 note 投稿では, イスラエルにおいて兵役を拒否し, 母国イスラエルにおけるタブーである 「ナクバ」 に言及するイスラエル人の若者たちを取り上げているので, こちらも参考にしていただければ幸いである)。

ナクバとは、1948年5月14日のイスラエル「建国」に伴い、その数ヶ月前から始まっていたシオニストの民兵によるパレスチナ人に対する民族浄化(1948年4月9日、イスラエル「建国」前のパレスチナのディール・ヤシン村でユダヤ人のシオニスト民兵たちが女性や子どもを含むパレスチナ人村民107人以上 [犠牲者数は当初より254人とされてきたが, 近年の研究で107-120人と推定, 前者が流布した背景には加害者側が虐殺を「成果」として宣伝しパレスチナ人に恐怖感を植え付けようとしたという思惑があったことが指摘されている] を虐殺した事件をはじめ、数々の虐殺行為があった:因みにディール・ヤシン村虐殺の首謀者そのリーダーであったメナヘム・ベギンは後にイスラエルの首相になっている)とイスラエル・アラブ諸国間の戦争により、翌1949年にかけて 500以上のパレスチナ人の村が破壊され、70~80万人(75~90万人とする説もあり100万人近いとする見方もある)のパレスチナ人が故郷の土地と家を失って難民となったことを言い表わす言葉である。
ナクバはアラビア語であり(النكبة‎, al-Nakbah, Nakba)、直訳すれば、大破局、大災厄、大惨事、破滅的な状況、極めて大きな不幸といった意味合いになる。先に書いたイスラエル「建国」前後の期間に起きたことを指すのが一般的だが、一方でその後の70年余にわたり今現在も続くパレスチナ人の苦難をも含めて「ナクバ」と呼ぶ、すなわち「今もナクバが続いている」という文脈で使われる、広義の言い方もある。
また、ここでいうパレスチナ人とは、紀元前からの歴史があり16世紀以降その地を支配していたオスマン帝国が第一次世界大戦の敗戦国となって以降は戦勝国となった大英帝国、イギリスが 1918年から占領を開始、1920年からは「イギリス委任統治領パレスチナ」となっていた土地に、当時人口の上でも土地所有率の上でも圧倒的多数派として居住していたアラブ系住民を指す。

*1 1947年のパレスチナ(当時はイギリス委任統治領パレスチナ):テキストは地図の下に続く。 

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1918年にイギリスが行なったパレスチナにおける人口調査によればアラブ人(ここで言うパレスチナ人)の人口は 700,000人、ユダヤ人のそれは 56,000人と前者の 1/12 以下だったが、その後、ヨーロッパにおける長年のユダヤ人差別の歴史を背景に(直接的きっかけは1894年のフランスにおけるドレフュス事件)前世紀 19世紀末に始まったシオニズムによるユダヤ人のパレスチナへの移民の動きが急速に拡大した結果(その原因の一つは1917年のイギリスによるシオニズム支持表明と言える「バルフォア宣言」、そして更に加速度的に拡大、つまりユダヤ人の移民を急増させたのはヨーロッパを席巻したナチス・ドイツによるユダヤ人迫害・弾圧・ホロコーストであった)、1947年11月29日の「国連パレスチナ分割」案決議の際の報告書によれば、その時点でのパレスチナにおける人口は、アラブ人とその他(その他とはアルメニア人やギリシャ人などの少数を指し、したがってこの大半はアラブ人 = パレスチナ人を意味する)が 1,237,000人と全体の 67%を占め依然として多数派であったものの、一方でユダヤ人は 608,000人にまでその人口を増やしていた(それでもイスラエル「建国」当時のパレスチナにおけるユダヤ人の人口は全体の 1/3 未満に留まっていたことになるわけだが)。
因みに上記の「国連パレスチナ分割」案は、アブラハムの宗教(ユダヤ教・キリスト教・イスラム教, うち後二者は仏教とともに世界三大宗教に数えられる)の聖地があるエルサレム市については国連を施政権者として信託統治とするとしたうえで、その時点でなお人口でアラブ人(現在言うところのパレスチナ人)の半分に満たず、また土地所有率に関しては全体の 8%にも届いていなかった(上記の通りもともと人口のうえで絶対的な少数派だったユダヤ人が30年ほどの短期の間の大規模な移民によって人口を増やしたのだからこれは当然の数字ではあった)ユダヤ人の側の新国家(後のイスラエル)にパレスチナの土地の 56%を与え、多数派であったアラブ人(同、パレスチナ人)側のものになるとして予定された国には 43%の土地しか与えないという、極めて不当・不公平・不公正なものだった。
結局、イスラエル「建国」前から始まっていたシオニストのユダヤ人によるパレスチナ人に対する民族浄化キャンペーン(虐殺など)、そしてイスラエル「建国」とイスラエル・アラブ諸国間の戦争結果(パレスチナ人にとっては「ナクバ」)、1948年「建国」当時のパレスチナにおける人口において全体の 1/3 未満だったユダヤ人シオニストたちの新興国家「イスラエル」は、パレスチナ全体の約8割の土地を獲得することになった。
そしてその後、イスラエルは残ったパレスチナ人の土地、すなわち以降はヨルダンが統治していた東エルサレムとヨルダン川西岸地区およびエジプトが統治していたガザ地区の全てを 1967年の第三次中東戦争により占領することとなり、「歴史的パレスチナ」全土がイスラエルによって支配されることになったわけである(なお 1967年11月22日採択の国連安保理決議242号を含む複数の安保理決議が 1967年の占領地からのイスラエルの撤退を要求し続けている)。
ともあれ、上記のイスラエル「建国」当時のアラブ系住民 = パレスチナ人の人口を踏まえ、あらためてイスラエル「建国」が引き起こしたパレスチナ人にとっての大惨事・大災厄 = ナクバによってどれだけの人数のパレスチナ人が自らの故郷・土地・家を失ったかを見れば、その悲惨さがなおいっそう伝わってくるであろう。
以下の *1 は 1947年のパレスチナを示す地図(注:今日はこの地図を先に, 冒頭3段落分の下に掲載した)、*2 はイスラエルが「ナクバ」の歴史的事実を隠蔽してきたことに関する Haaretz (イスラエルのメディア) の記事、さらに *3, 4, 5, 6 も本章に関連する同じく Haaretz の記事(*6 に関してはイスラエル「建国」後のイスラエル領内のアラブ人 = パレスチナ人たちに対する弾圧とその隠蔽に関する 2021年1月9日付の記事)。

今日はこの(地図の)下の *2~6 の前に、先に掲載した地図 *1 を補足するものとして, その後の「パレスチナにおけるイスラエル側の占領地・入植地の拡大, その変遷」を表わす地図を掲げておく。

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*2 「ナクバ」を埋める: イスラエルはいかにして体系的に・組織ぐるみで・手際よく、1948年のアラブ人(パレスチナ人)追放に関する証拠を隠してきたのか
 Haaretz, 2019年7月5日付の記事
*3 Haaretz, 2020年10月4日付の記事
記事のヘッド(見出し)にある Ben-Gurion (David Ben-Gurion) とは、1948年にパレスチナの地(本章のテキスト内でも言及した通り、パレスチナという名称は遥か昔の紀元前からあったが、この当時、直前 1920年から1948年までの正式名称は「委任統治領パレスチナ」, Mandatory Palestine もしくは「イギリス委任統治領パレスチナ」, British Mandate for Palestine で、その直前に関しては 16世紀以降の長い支配が続いた「オスマン帝国」の統治下にあった地域)の上に「建国」された「イスラエル」という名の新興国家の「建国の父」であり、初代イスラエル首相であった人のこと。
これも本章のテキスト内でも触れたが、当時の「パレスチナ」地域におけるユダヤ人の人口は、それ以前の数十年間にわたるシオニズムによる移民の(ナチス・ドイツによるホロコーストの影響をも受けた)結果としての急激な人口増加の経緯があっても、依然として同地域に住むアラブ人 = 今いうところのパレスチナ人 = の人口の半分に満たず、そうした歴史的経緯があったため土地所有率に至っては実に 8% にも届かなかったにもかかわらず、イスラエル「建国」前年の1947年11月29日に当時まだ欧米諸国が支配的だった設立間もない国際連合の総会で採択された「国連パレスチナ分割」案は、その案において国連の信託統治下とするとしていたエルサレム市を除いて「パレスチナ」全域の土地の 56% をユダヤ人、つまりその案が新たに建設されるものと内定していた「イスラエル」という名の「新興国家」に与えるという、極めて不当・不公平・不公正な内容のものだった。
そして、その「イスラエル」という名の「新興国家」は、1948年5月14日の一方的な「建国宣言」(一方の当事者であるアラブ系、現在いうところのパレスチナ人たちの意思を無視したわけだから一方的、イスラエルはこれを「独立宣言」と呼ぶが、上にも書いたように、それ以前にそこにあったのはオスマン帝国の支配が終わった後のイギリス委任統治領パレスチナ = その人口の圧倒的多数はアラブ系、いま言うところのパレスチナ人 = であって、その地において当時「イスラエル」という名の国やあるいは名前は別としてもユダヤ人の国がイギリスの植民地下にあったというような事実は全く、文字通り全く無い)と第一次中東戦争の結果によって、パレスチナ地域において、前年1947年採択の「国連パレスチナ分割」案における不当・不公正・不公平な内容のものよりも更に広い土地を得ることになった。
記事のヘッド(見出し): Even Ben-Gurion Thought ‘Most Jews Are Thieves’
本文の冒頭は 〜 The quote in the headline wasn’t uttered by an antisemitic leader, a Jew hater or a neo-Nazi. The words are those of the founder of the State of Israel (David Ben-Gurion), two months after it was founded (on May 14, 1948) ... ( ) は筆者が加筆(May 14, 1948 は "it was founded" の日として、上記のイスラエルの一方的な「建国宣言」の日を付した)。
*4 Haaretz, 2020年10月3日付の記事
*5 Haaretz, 2020年10月5日付の記事
*6 イスラエルが、イスラエル「建国」に伴って難民となって故郷を去る他なかったパレスチナ人たちだけでなく、イスラエル領内に残ったパレスチナ人たちに対しても、どれだけ酷い仕打ちをしたのかについての記事
記事のヘッドを丁寧に訳すならば、「イスラエルはその最初の数十年間において、いかにしてアラブ人(ここではイスラエル領内に住むアラブ人、彼らも当然ながら 1967年以降の被占領地に住むアラブ人やその他 イスラエル「建国」に伴いパレスチナの外の「世界」に離散した元パレスチナの住民であったアラブ人と同じく「パレスチナ人」ということになる)を肉体的・精神的にひどく苦しめ続けたのか 〜 そして いかにしてその事実を隠したのか」。
 Haaretz, 2021年1月9日付の記事

最近の パレスチナ/イスラエル の動向に関して

現在, この地域における暴力の連鎖にかかる事態は刻々と深刻さを増しているが、この 1週間程度の間に犠牲になった人の数について触れておくと, 筆者が様々なメディアの情報(BBC などの視点なり情報なりが些か不十分にも思えるメインストリームのメディアからソーシャルメディアなどに至るまで, 今日2021年5月15日, 日本時間午後5時頃まで)で把握する限り, イスラエルが 1967年6月の侵攻と占領(占領されたのは東エルサレムを含むヨルダン川西岸地区, ガザ地区, さらにシリアのゴラン高原の一部, 及びこれまでに唯一「返還」されているエジプトのシナイ半島)以来, 同年11月22日に採択された国連安保理決議242号等に違反しながら不当に占領を続ける東エルサレムを含むヨルダン川西岸地区において違法占領下のパレスチナ人が占領軍であるイスラエル軍や占領地内のイスラエル人違法入植者たちによって 10人以上殺され, またガザ地区(2005年までにイスラエルは同地区における違法なイスラエル人入植地を撤去し且つ陸軍を撤退させたが一方で周囲を封鎖した, 2006年にガザ地区における選挙でイスラム原理主義組織ハマスが台頭するとイスラエルによるボーダー管理・封鎖はさらに強化され, 以降約15年にわたりイスラエルによるガザ地区の軍事封鎖が続き, 同地区は人や物資の出入りが大きく制限されている:つまりガザ地区のパレスチナ人には「逃げ場」が全くない)ではイスラエルによる空爆により 30人以上の子供たち, 20人以上の成人女性を含む 130人以上が殺され(負傷者は 900人前後, 空爆で家を失った人の数は不詳, つまりイスラエルはハマスからのロケット攻撃を口実にガザ地区の住宅地を空爆し続けている; さらに陸軍による地上侵攻も開始した)、そして、「ガザ地区内」を実効支配するハマス(「ガザ 地区内」という書き方をしたのは, ボーダーをイスラエルによって完全に軍事封鎖されている環境下, ハマスのガザ地区「支配」というのはある意味「名ばかり」とも言えるからである)によるイスラエルに対するロケット攻撃によって命を落としたイスラエル人は 8人(もしくは 9人)。

イスラエル寄りもしくは少なくとも「中立」を装うようなメディアにおいて, ハマスによるイスラエルへのロケット攻撃を今の「危機的事態」における時系列的なスタートに置く例がしばしば見受けられるが(もちろん筆者はハマスによる一般市民を巻き込んだ無差別攻撃を支持しないし, そもそも武力による解決それ自体を支持しないし, イスラム原理主義組織ハマスの政策や戦略の多くを根本的に支持しない, 筆者個人はハマスに対して完全に批判者である, *2)、そうした報道は, 報道を受け取る側の多くの人による背景理解を大いに誤ったものにしかねないものである。

上に挙げたような今現在の「危機的事態」を時系列的に説明していくなら, こうしたことを挙げねばならない。つまり、まずはイスラエルによって 東エルサレムのシェイク・ジャッラ地区Sheikh Jarrah, そもそもこの地区はイスラエルが上に書いたように 1967年以来 国連安保理決議に違反しながら不当に占領を続けている東エルサレム内にあるパレスチナ人の居住地域)から強制的にパレスチナ人が追い出されようとしていることに対するパレスチナ人の抗議があり、この抗議デモに対する占領軍・イスラエル軍による弾圧が続き, さらにイスラエルの治安部隊によって, イスラム教(宗教に関して言うとパレスチナ人においてはイスラームが多数派だが, 他にクリスチャンや無神論者もいる, 念のため)において最も「神聖な」モスクの一つとされる東エルサレムのアル=アクサー・モスクに向かうルートをバリケード等などでこれまで以上に厳しく制御されるという事態が パレスチナ人たちの更なる反発を呼び、果てはそのアル=アクサー・モスクの中にまでイスラエル治安部隊が手榴弾や催涙ガスによる攻撃を仕掛けるといった暴挙(これはそもそも宗教戦争などでは全く無いパレスチナ/イスラエル問題を「宗教紛争」化しようとするかのようなイスラエル側の愚挙)があり、その前後にはイスラエル全土やイスラエルによる違法占領下の東エルサレムを含むヨルダン川西岸地区内において「アラブに死を」といった憎悪のスローガンを叫ぶイスラエル人(前者ではイスラエル内のアラブ系つまり「パレスチナ」系市民に対して, 後者においてはイスラエル人違法入植者によって違法占領下のパレスチナ人に対して)の群衆の動きが活発化する, 等々, そういった, 様々な, 複合的な緊張・緊迫の事態が進んでいたのである。

*アル=アクサー・モスクに対するイスラエル治安部隊襲撃(日本語字幕付き)

しかしながら、前段の冒頭で挙げた東エルサレムのシェイク・ジャッラ地区からのパレスチナ人追放の問題ですら, それは「今般の危機的事態」の始まりの一つであって、実際には根本的な問題の「始まり」では全く無い。つまり、前章で概観したイスラエル「建国」(1948年)の前から続くシオニストによるパレスチナ人に対する民族浄化(Ethnic Cleansing)が今も続いているのであって、すなわちそのことは「ナクバが今も続いている」とも言えるのであって、この大きな「パレスチナ/イスラエル問題」を見る事なしに, 同地域における危機を語ることは本来的に不可能なことなのである。

*1 なお、パレスチナに軍隊があるかのような大いなる誤解をしている人も少なくないのではないかと思われるが、イスラエル「建国」(1948年)以降70年以上にわたるイスラエルのシオニスト勢力による強力な支配のもと, いまだ国の体裁を整えるに至らないパレスチナ側には正規の軍隊はない。もちろんパレスチナは戦車など 1台も保有しておらず、イスラエル側が保有する(イスラエルを徹頭徹尾支援し続けるアメリカ合州国の最新鋭戦闘機である)F-35戦闘機など持ちようがない。パレスチナ側にある「武器」はパレスチナ人の言論と文字通りの「」などの原始的「武器」、そして武装組織としてのハマスが持つロケットなどであるが、そのロケットも「アイアンドーム」と呼ばれる最新鋭の防空システムを持つイスラエルからしたら、かなり原始的なものであるに違いない。

以下は、ユダヤ系アメリカ人であり, 世界的に著名な哲学者・言語学者であり, イスラエルに対する長年の批判者でもあるノーム・チョムスキーの言葉である。

「イスラエルとパレスチナの間にあるのは戦争ではない。(前者の後者に対する, 一方的な)『殺人』行為である。」

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*2 ハマスに関して言うと、単に武力による抵抗の面を捉えても、イスラエル側の挑発の有無にかかわらず、当然ながら市民を巻き込んだハマスのロケット攻撃は, まずば倫理に反するものであり、紛争における犯罪である(法的には「戦争犯罪」を構成すると言っていいのだろうが, 前項に記したような趣旨のもとでそもそも「戦争」と呼ぶのかどうかに疑問を感ずるところはある)。イスラエルのガザ地区への空爆は対ハマスを名目にしているものの 実際には多数の子供たちが巻き込まれ, そもそも住宅のある建物を破壊し続けているのであって, それは巨大な(法的な意味合いでの)「戦争犯罪」であるが、一方で被害の規模が相対的に小さいからと言ってハマス側のイスラエル市民を巻き込んだ無差別のロケット攻撃が許されるものであるはずはなく、正当化されるものではない。まずはその意味で, ハマスの攻撃は倫理的に誤っており反人道的と言えるが(念のため繰り返し言っておくが, 貴重な人命を奪うことは正当化されることではなく被害の規模・犠牲者の数だけでことの重大性を説明するものではないが, しかしイスラエルのガザ地区への攻撃が被害規模の上で「巨大な犯罪」であることは確かである)、それだけでなく、ハマスのイスラエルへの攻撃は 前述の倫理的な側面のみならず、戦略的にも全く愚かなものである。なぜなら、ハマスのイスラエルへのロケット攻撃はほぼ常に、イスラエルによって, イスラエルがガザ地区を空爆する際にそれを「正当化」する理由として(不当に)使われており、その結果、子供たちを含む非常に多くのパレスチナ人市民の人命が(イスラエルによる「戦争犯罪」の空爆によって)失われ、また、それに留まらず、ハマスによるロケット攻撃は, それ以前にパレスチナ問題を深く理解しようとし且つパレスチナ人に同情を禁じ得ないと感じ始めていたような世界の人々の少なからぬ部分を「どっちもどっちね」(どころか「やっぱりパレスチナ側が『テロ行為』をするから和平が進まないのだろうか」など)といった感情に追いやり「パレスチナ/イスラエル問題」の本質を理解する人が増えることに関して阻害要因にしかならないような愚策となっているからだ。

なお、念のため添えておくと、筆者自身は、そもそもイスラームであれ何であれ、宗教の教義に基づいて「国」や社会を治めることに対しては大反対である(ただし, それは一義的にはもちろんその地域の人々が決めることであるが)。

女性は男性保護者の許可なく旅行することはできない 〜 ガザ地区をサウジアラビア化しかねないハマースのイスラム法廷の愚」(2021年2月22日付 note 投稿)

最近の パレスチナ/イスラエル の動向を理解するために(インスタグラム投稿, ツイートなどから)

1) Jewish Voice for Peace, 「平和のためのユダヤ人の声」, イスラエルによるパレスチナの占領や母国アメリカ合州国の一方的イスラエル支援の政策を批判し、パレスチナ人の人権のために活動する ユダヤ系アメリカ人のグループ のインスタグラム上のヴィデオ投稿(2021年5月14日)。

When our Jewish elders and educators told us about Kristallnacht, we imagined it looked something like this — oppressors breaking glass windows as they stormed the stores, homes, and places of worship of the oppressed.
We don’t make this comparison lightly. It reflects how truly severe the situation is on the ground.
In both Palestine and Germany, the state authorities look on without even trying to stop the destruction. As we’ve seen recently in Palestine, they often partake in it themselves.
This mayhem has been happening across historic Palestine for days.

因みに Kristallnacht(クリスタル・ナハト)とは元々はドイツ語で, 日本語に訳すなら「水晶の夜」。「1938年11月9日夜から10日未明にかけてドイツの各地で発生した反ユダヤ主義暴動、迫害」(ユダヤ人の居住する住宅地域、シナゴーグなどが次々と襲撃、放火された)。20世紀の過去にナチスによる反ユダヤ主義が吹き荒れたナチス支配下のドイツでユダヤ人が被ったようなことを、21世紀の今、イスラエルのユダヤ人がパレスチナ人に対して行なっている と、彼ら ユダヤ系アメリカ人のグループ Jewish Voice for Peace が言っているわけだ。

2) 同じく Jewish Voice for Peace のインスタグラム上の投稿(2021年5月14日)。要スワイプ(ヴィデオが計2つとツイートのシェアが 4つ, 合計6点)。

HAPPENING NOW: Gaza is under Israeli attack from air, land, and sea. Hundreds of airstrikes have hit in just the last hour. Residents are saying this is even worse than the attacks of 2014.
Being under blockade, the residents have nowhere to hide and nowhere to go. They’re psychologically preparing themselves and their loved ones for death. Swipe left to better understand the terrifying experience of having to take “shelter” in your apartment from an airstrike. Trigger warning for the sound of children screaming and crying.
All eyes on Gaza, especially since residents are losing internet and electricity and will soon no longer be able to share their blood-curdling reality with the world.
#GazaUnderAttack

3) アメリカ合州国の IMEU (Institute for Middle East Understanding *1) のインスタグラム上のヴィデオ投稿(7分弱, 2021年5月14日)。

Jerusalem and Gaza Right Now
Confused about what’s going on right now in Palestine-Israel? We have you covered!
@obaddar(*2) lays out the brutal reality Palestinians are living under right now, as Israeli mobs stalk the streets, hunting Palestinians, and as Israeli warplanes bomb Gaza. Here’s what you should know:

*1

*2 Omar Baddar のインスタグラム, プロフィールより "Political analyst (US/Mideast). Secularist." 詳しくは https://www.instagram.com/obaddar/

ユダヤ人 〜 ヨーロッパで迫害され, ナチスに弾圧された歴史を持ちながら..

.. とはいえ、過去にヨーロッパで差別され弾圧され, 不当に人権を奪われたユダヤ人と, いまパレスチナ(パレスチナ/イスラエル)の地でパレスチナ人の人権を不当に奪うシオニストのユダヤ人とを, 同一視するわけにはいかない。にもかかわらず、現実を見るならば、残念ながら 前者(とその子孫)の少なくとも一部は、後者と重なっている。

なお、上掲 note 投稿の第2章 1948年に「建国」されたイスラエル, そして イスラエル と パレスチナの今 では、今日のこの note 投稿の第2章・第3章に直接つながる内容を取り上げている。

ワルシャワ・ゲットー蜂起, そしてアウシュビッツ強制収容所・マイダネク強制収容所の生存者である両親のもとに生まれた, ユダヤ系アメリカ人政治学者の, イスラエルによるパレスチナ人弾圧に対する激しい怒り

以下は、前章でリンクを付した筆者の note 投稿「ワルシャワ・ゲットー蜂起, アウシュヴィッツから、パレスチナへ」(2021年4月23日付)の第3章からの転載。

最初に一点、書いておきたいのだが、冒頭の章(注:前章でリンクを付した2021年4月23日付の note 投稿の「冒頭の章」)で 1940年代当時のナチス・ドイツ支配下のユダヤ人隔離地域であったゲットーについての記述をした際、ゲットー内に強制的に住まわされたユダヤ人たちは、ゲットーの域外に出たくても、外に出ることが「絶対的に」必要であるということを証明できた場合にのみ通行許可証を与えられて出入り口を通過することができたという有り様であったということを書いたのだが、例えば その点、現在イスラエルによって軍事封鎖されたパレスチナ・ガザ地区や、ヨルダン川西岸地区でパレスチナ人の移動を繰り返し繰り返し妨げている,「占領」軍であるイスラエル軍がパレスチナ人の出入りを厳しくコントロールする為にイスラエル側が設置している無数のチェック・ポイントの存在を, 想起させるものがある。ガザ地区はまさしく「言わば陸の孤島であり屋根の無い巨大な監獄」であって、東エルサレム並びにその他のヨルダン川西岸地区内のパレスチナ人の街も, 居住民(パレスチナ人)に対するイスラエル側の非人道的行為の深刻さについては, 似たり寄ったりの有り様である。
さて、最後に、ユダヤ系アメリカ人の政治学者・作家で、反シオニストの活動家でもあるノーマン・フィンケルスタイン(Norman Finkelstein, 1953年ニューヨーク生まれ)の言葉(ヴィデオ)を掲載する。これは筆者のこれまでのパレスチナ/イスラエル問題にかかわる note 投稿の中で複数回紹介しているものだが、繰り返し繰り返し取り上げる価値があり、また今日の note 投稿テーマに関わって相応しいので、今日ここであらためて紹介することにする。
このヴィデオの中で本人が(ある意味, 止むに止まれず)語っている通り、ノーマン・フィンケルスタインの両親は共にナチス・ドイツが設置したワルシャワ市内のユダヤ人隔離地域であった「ワルシャワ・ゲットー」、そして "Warsaw Ghetto Uprising", すなわち今日の本 note 投稿(注:前章でリンクを付した2021年4月23日付の note 投稿)で取り上げた, ユダヤ人がナチスに対して絶望的な蜂起をした「ワルシャワ・ゲットー蜂起」の生存者で、母親は更にナチス・ドイツがポーランドに建設したマイダネク強制収容所の生存者でもあって、父親は更にアウシュヴィッツ強制収容所の生存者でもある。
以下のヴィデオで聴くことができるのは(英語、英語字幕付き)、その彼が、(反)ナチス、(反)ホロコースト等に言及してイスラエルをひたすら「擁護」する人たち、そんな特にイスラエル人もしくはユダヤ人に向けて、同じユダヤ人(ユダヤ系アメリカ人)として語った言葉である。

アメリカ合州国からの徹頭徹尾の支援なしで、イスラエルという国はこれまでのような在り方のまま存続し、そのパレスチナ人弾圧の政策をここまでずっと続けられただろうか?

イスラエル「建国」(1948年)以来、イスラエルを徹頭徹尾支援し続けるアメリカ合州国。例えば、アメリカのイスラエルに対する軍事援助は今や年間 38億ドルである。つまり、それだけ膨大な額のアメリカ人の税金が、イスラエルによるパレスチナ人の人権弾圧、ひいてはガザ地区への空爆や占領地でのパレスチナ人に対する弾圧においてパレスチナ人の命を奪うことにすら使われているのだ。

1) アメリカのイスラエル愛 〜 バイデン政権になろうが変わらぬその愚かさ

2) アメリカ合州国のお気の毒なまでに「一途な」イスラエル「愛」 〜 その度し難い非合理

3) アメリカが加担し続けるイスラエルのパレスチナ人弾圧を止めさせようとしてイスラエルに殺されたアメリカ人女性 Rachel Corrie

最後の 2つは, 日本の状況や 日本におけるイスラエル「擁護」者たち に触れつつ。

4) 演説の美辞麗句だけで政治家に「感服」してしまう、日本の「リベラルな」人たち

5) アメリカ大統領選挙に世界の眼が集中する中、パレスチナ人のコミュニティを破壊したイスラエル 〜 そしてそれを擁護する日本人


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