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再び、初めて出逢う2人。映画館で観たあの作品。

映画館、ときいてまず思い浮かぶのは高校時代だ。
毎日毎日部活で忙しかったはずなのに。
映画を見た本数で言えば、大学生の頃の方が多いのに。
きっと、今のようなシネコンではなく、昔ながらのいわゆる「映画館」で観たからに違いない。

その日、友人と私が映画館に着いた時、映画はもう始まってしまっていた。今でこそ、早めに着いて、席を選んだりパンフを買ったりすればいいのにと思うけれど、高校時代は本当に時間にルーズだった。
ただ、当時は今と違って、上映が終わっても、そのまま客席に残って次の回を観ることができた。だから遅れても作品自体は全て観られるという安心感も、はなからあった。


映画は、ちょうど主人公の2人が、初めて出逢うシーンまですすんでいた。
色鮮やかな魚たちが戯れている水槽。
ゆらめく水の向こう側に、初めて互いを見つける。

バズ・ラーマン監督の「ロミオ+ジュリエット」。


ロミオ役は、レオナルド・ディカプリオ。当時の彼はまだ線が細く、爽やかなルックスで、まさに王子様のよう。タイタニックが大ヒットする前年の作品である。彼自身はそんな風にアイドルとして扱われることは望んでいなかったと思うが、本当に、若く夢みるロミオぴったりのキャスティングだった。

ジュリエットは、クレア・デインズ。それまでこの役者さんを知らない人の方が多かったと思う。サラサラな髪にキュートな笑顔。私は68年の映画ロミオとジュリエットを観ていないので、ジュリエットというと今でもクレア・デインズの顔が浮かぶ。

(ちなみに、オーディションではナタリー・ポートマンもジュリエット役を受けていたらしい。主演2人が並ぶと、ジュリエットが幼なすぎて見えるという理由で受からなかったそうだ。ナタリーのジュリエットも、少し観てみたかった気はする。)

実家の段ボール箱から当時の映画雑誌が大量に出てきました。捨てられない‥。

舞台設定の斬新さと、原作そのままの古めかしいセリフ。
何百年も前に書かれたストーリーが、ぐさぐさと刺さってくる。私たちは映画を最後まで堪能した。
そしてその回が終わって帰ってゆく他の観客を見送って、改めて冒頭シーンを観た。

再び、初めて出逢う2人。

この恋が悲劇へと突き進んでいくことを、まだ知らない2人の、弾けるような表情をもう一度味わってから、私と友人は静かにホールを出て、帰路についた。

もし当時の私たちに門限がなかったら、また、この物語を最後まで観ていたかも知れなかった。

でも、そのシーン、そのタイミングで映画館を後にしたからこそ、あまりにストレートで単純すぎるようにもうつるこの恋物語が、記憶に美しくパッケージされているのかも知れない、と思う。デズリーの甘い歌声とともに。


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