ずっと昔に書いて、結局渡すことができなかった手紙を捨てた。
人生で初めて書いたラブレター。
たぶん初恋だった。

今思えばとてもささやかで微笑ましいものだ。
好きだった理由もはっきりと思い出せないし、恋に恋していただけだったのかもしれない。
それでも私の中には伝えたい想いが確かにあって、それを言葉に載せたのだ。
だけど、その精一杯の言葉を伝えることはできなかった。

過去の、幼い自分の想いが詰まった手紙を手放すことは、その時の自分を見捨てることのような気がしていた。
届かなかったけれど、確かにあった想いをなかったものにしてしまいたくなかったのだと思う。

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思い切って手紙を捨ててからしばらく経った。
想像していたような喪失感はないみたい。
卒業アルバムを見返した時に感じる懐かしさと同じような気分。

こうやっていつかは思い出になっていくんだろう。