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母の何気ない一生モノの贈りもの

人が人生のとあるシーンにおける何気ない言葉を覚えていることはよくあると思う。ある人が偶然に言ったとりわけこれを他者に響かせようと狙っていない言葉が、ある人にとっては忘れれれない言葉になる。それは、素敵なことでもあり、恐ろしいことでもある。

私は、センター試験の翌日に言われた母の言葉をよく覚えている。母は、センター試験に大した対策をして望まず、失敗したと項垂れている私に対して、このような一言を残した。

「まあ、1年生からこのために努力している人もいるからね。」

母は、それ以上は何も言わなかった。私にとってもそれ以上は何もいらなかった。この言葉は、一言であらゆることを包含していたのである。どこか何か特別な作用が働いて、試験に失敗したと感じていた私に現実を突きつけたのだった。そして、地に足をつけること私に教えた。

それからも、よくこの言葉を思い出す。自分が言い訳をしそうになった時、何かに項垂れている時。

これを言った母は何も狙っていなかった可能性が高いし、今ではこれを言ったことを覚えていないかもしれない。けれど、この言葉は現在の私に多大なる影響を与えている。

この言葉は母が私にくれた立派な何気ない、一生モノの贈りものだと思う。

言葉は大事に使わなくてはならない。「まあ、1年生からこのために努力している人もいるからね。」という言葉が、座右の銘になるような人もいるくらいだから。


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