近所のおじさん

5時とか6時とかに起きて
空気がおいしいから
散歩でもしようと外に出ると
いつもおじさんが徘徊している
夜が明けるか明けないかのころ
髪は白髪でボサボサで
着ているものもボロボロで
足を少し引きずって
しかめっ面で
ゆっくり、ゆっくり
近所をぐるぐる歩いている
はじめは怖かった
いや、結構長い間怖がっていた
おじさんが片手にゴミバサミを
もう片手にビニール袋を持っていることはわかっていたけれど
それよりも怖くて
ただただ警戒していた
けれど最近のこと
ふと、あのおじさんはゴミを拾ってくれているんだなぁ
誰にも感謝の言葉も言われず
怖がられているだけでも
ひとり、毎朝起きて
誰もいないうちに
誰かが汚した町を綺麗にして
足を引きずりながら
毎日、毎日
ありがとう
そう思って
ある日、「おはようございます」って挨拶したら
しかめっ面のままで
「おはよう」って返ってきた
それから、見かけたら挨拶するようにしていたら
今朝、少しだけ優しい顔で
「おはよう」
わたしもニコッて微笑んだ
まだ少し怖いけれど
人ってやさしいな
こわがらないこと
勇気を出すこと
それってときどき
難しいけれど
おじさんも
はじめてゴミを拾う時
勇気を出したのかもしれない

2024.04.23

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