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ミュージカル嫌いでものめり込む映画【アネット】♯064

リュック・ベッソンの斜め上をいく、レオス・カラックスの強烈な新作。

アネット  2021年 フランス



【あらすじ】

スタンダップコメディアンのヘンリーは、
美しく人気のあるオペラ歌手のアンの心を射止めた。
深く愛し合ったふたりはやがて結婚し、アンは妊娠する。
そして二人の間に女の子が産まれる。
名前はアネット。
私生活では幸せに満ちたヘンリーだったが、
この頃から彼は才能溢れたアンへの嫉妬心を抱いてゆく。



【解説】

精神的に不安定になりやすいショービジネスという世界で
焦燥感に駆けられるコメディアン。

高尚なオペラ歌手アンは、演目で中で殺される。
反対にヘンリーは笑いという話芸の中で人を殺す。
彼らの精神は酷くすり減っている。

そんな中、彼らは結婚して心の安定を得る。しかし、
この平凡な幸せによってふたりの関係に亀裂が生じはじめる。
コメディアンというアーティストは、平凡な幸せに溺れていては
大勢の客を笑わす事はできない。
激情の中から才能は炙り出てくるものだからだ。
平凡が怖いヘンリーの焦りは、妻アンへ向けられてしまう。
ギクシャクした夫婦の間で、娘のアネットは
才能に恵まれた幼児に育っていく。

このアネットの登場。

見るひと全てがwhy⁉︎ってなるはず。

彼女への違和感はクライマックスとなる
二人が掛け合う歌のシーンで答えが出る。

怪物の様に変わっていくヘンリーや、
商業的に搾取される子供の姿も、ショービジネスの闇。
そういう部分を描いた作品だった。



【ぼやき】

まず始まりが強烈。画面のチューニングとも取れるような
ディゾルブされた効果を使用し、この映画の監督が自ら
ミキサーとして出演するレコーディングスタジオから始まる。
それからほぼMVみたいな映像でスパークスが歌いながら
本編に入るとういうこだわりのオープニング。
しかもそれをロックオペラでミュージカルにしてるっていう
レオス・カラックスの健在振り。
ロックオペラっぽいものは“クィーン“のボヘミアンラプソディしか
触れた事がない。そんな私であってもスパークスっていう
バンドの音楽と独特な映像センスで序盤からロックオペラの世界にガッツリ引き込まれる。

特にバイクに乗って歌う場面は、カラックスらしい鮮烈なシーン。
納得のカンヌ国際映画祭監督賞を受賞してるってもんだ。
シネマジェンヌ的にはパルムドール(最高賞)なんだけどね。
プロデューサーとしても名前を連ねてるアダム・ドライバーも
渾身の作品に仕上がったと満足してるに違いない。

今までみたミュージカルの中でいちばん面白かった、
今年群を抜いて、素晴らしい映画体験となった作品。

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