短編小説【タイトル:花嫁姿と君との決別】



「あともう少しよ。準備できてる?」
とお母さんの声がした。
私は白いウエディングドレスを着てその時を待っている。
君はどう思うかな?
私を許さないかな?


君が旅立ってから10年が経った。
その間いろいろあったんだけどね・・・・。

社会人になって仕事が忙しすぎて君という存在を忘れかけていた。
毎日毎日、納期を気にする生活。
その時、ちょうど彼氏もできて生活も充実し
私は幸せの中にいた。
君の小説も押し入れの奥にしまってしまい存在を忘れていた。

ふと彼氏と卒業アルバムを見ていると
「あっ・・・・」
「どうした?」
私の目から涙が溢れた。
君の写真が載ってあって
懐かしさと悲しさが溢れてきた。

そういえば・・・小説・・・
私は君の小説を必死になって探した。
そして見つけた。
見るのは怖いけど・・・・。
全部読まないと前に進まない気がして
と決心してページをめくった。

何ページかめくって心を痛めていると
最後のページにこう綴ったあった。

“君と過ごした時間はかけがいのないものになったよ。
出会った時の印象は悪かったけどね。
よくからかわれてたっけ・・・・。
その時の君の笑顔が好きだった。
何回でも君の笑顔を見たかった。
君を笑わせたかった。
一緒に笑っていたかった。
ずっと一緒に生きていくんだと思ってた。
僕は何か悪いことしたのかな?
何か天罰食うようなことしたのかな?
神様に怒りを買うことしたのかな?
ただ・・・ただ・・・君と一緒にいたかっただけなのに・・・。
みんな死ぬ時はこんなこと考えるのかな?
みんな無念を残して死んでいくのかな・・・。
・・・・・・。
君にありがとうも伝えたいし
君にごめんねとも伝えたい・・・。
僕に出会わなければよかったと君は思ってしまうかもしれない。
君の心に生き続けていたい。
もし忘れそうになったらこの本を見返してほしい・・・。
でも辛いかな?
多分、この本全部読めないかもしれないね。
君は優しいから・・・。
それはそれでいいよ。
まだ僕のことを好きでいてくれていると言うことだから。
まだ君の心に生き続けていると言うことだから。
僕はそれで幸せだよ。
この気持ち君に届くといいな。
君はこの先、何十年生き続けるけど
君は幸せになってね。
君のウエディング姿見たかったな・・・。
僕が君の1番でありたかったな・・・。

君と生きていきたかったな・・・・・。”

と綴ってあり私は途中から涙が溢れ出していた。
ごめんね・・・。ごめんね・・・・。
と彼に背中をさすってもらいながら
泣き続けた。


私は彼と結婚することになり
ウエディングドレスを着ることになった。
君が見たいと言っていた姿・・・。
君はどう思うかな?
私は幸せになるよ。
君のことは忘れないよ。
ありがとう・・・・。









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