スーダン日記 2018年8月22日
イード(犠牲祭)2日目。清々しく晴れた朝。
静かな表情で藁を食む羊に「君はこれから起こることを分かっているのかい?」と問うでもなく眺めていると、不意に明るい挨拶の声が聞こえてやって来た屠殺専門らしきオジサン。手に刃物を持っている。(この先血まみれ羊の写真が登場するので見たくない方はご注意を!)
早速、羊が家の前の通りに引っ張り出される。私と妹も「いざこの目で見ねば」と外に急ぐ。
仰々しいことは何もなく、子供たちが集まるのどかな雰囲気の中で羊さんはあっという間に犠牲に捧げられた。
あれよあれよという間に羊の首が切られ真っ赤な血が流れ出る。おじさんがナイフと拳(!)でてきぱきと巧みに肉を屠り臓物を処理していく動きから目が離せない。
大人は感謝の祈りをそれぞれに捧げている。バタバタっと動いたあと静かになる羊を前に子供たちはじっと佇んでいる。
ウチの子供たちが腰掛けと小机を運んできてくれた。「食べながら見たらいいよ」とおばちゃんがいつもの朝の温かいミルクティーと揚げドーナツのお盆を持ってきてくれて小机にのせる。
ルガイマーッ(揚げドーナツ)に砂糖をまぶしてミルクティーといただくとほっぺがほころぶ美味しさ。
羊が肉になっていく目の前の光景とは裏腹にミルクティーのように甘く優しい空気で満たされている感じがとても不思議だった。
我が家一番のおしゃべり小僧君が切り離された羊の頭を持ってきて、口を開けて見せたり目を開けて見せたり。
頭は脳みそごと煮込んでスープにするととても高価なご馳走らしく、それを食べさせる店もあるそうだ。
とにかく頭から内臓から足まで無駄なく食べる。羊の足先に開けた穴から息を吹き込むオジサン。羊がバルーンのように膨れ上がる。
血がおおかた流れ出ると、木の枝に羊を吊るして皮を剥ぎ始める。拳をぐいぐい押し込んできれいに剥いでいく。
お腹の中からはいろんなものが出てくる。胃袋や腸。その中に詰まった消化中のドロドロも外に出す。
男の子たちは色々気づいてお手伝い。いただけないのは肉を切る側からハエがたかること…。
道の反対側でも別の家族が羊を屠っている。さて、今日はどんな羊のご馳走になるのかしら。
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