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街とその不確かな壁

街とその不確かな壁

◎おすすめポイント

・村上春樹さんの最新作

・三部構成

・不思議さと丁寧な描写

・伏線回収しない文学

・600ページ超

・巧みな比喩

◉おすすめな人

・とにかく本が読みたい人

・新作を読みたいけど迷ってる人

・村上春樹さんの描く世界が好きな人

・村上春樹さんをまだ読んだことがない人

・長くて重厚感のある小説を読みたい人

・達成感を味わいたい人

・仕事にモチベーションが湧かない人

・転職したい人

・イエローのヨットパーカーが似合う人

・ポジティブな気持ちに変わりたい人

・本を心から愛している人

🟥【解説】

村上春樹さん6年ぶりの最新作

『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』の前に書かれ文學界に発表された村上春樹さん唯一の中編『街と、その不確かな壁』を書き改めてさらにアップデートした作品

ほとんど内容について告知もなく発表された

架空の街について語られるが時空間を自由に行き来する様は作家の真骨頂であるだろう

著者はデビュー作から比喩を大切にしているが今作ではさらに比喩の密度が上がり比喩に比喩を重ねる素晴らしい構成で聖書のような重厚感がある

『世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド』の元になった小説を再構成しているわけだが本作は全く違う物語になっている

手元に文學界の最初に発表されたものがないのでわからないが最初の作品からかなり書き改められたのではないだろうか

想像力の限界まで迫った作品だと思う

著者の集大成になるのではないか

少年期から老境までの人生を書いたのは著者として初めての試みではないか

村上春樹さん本人の影が出てこないのが特徴で技術的にかなり上がっていると思う

街とその不確かな壁という何のひねりもないように見えるタイトルが逆に内容に深く影響していて素晴らしい

第一部第二部第三部と全部異なる話が書かれていて緩い繋がりの中で描かれている

伏線回収という言葉が流行っているが街も壁も自分自身も何なのか伏線が全く回収されないまま終わるのが裏切りもあっていい

🟦【あらすじ】

冒頭で主人公は「きみ」との会話で「街」の存在を知る

第一部は『世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド』のように「街」と「現実世界」が交互に描かれる

第二部まで「きみ」との交流が描かれる

第二部に入ると歳をとった主人公が図書館で子易という珍しい名前を持つ老人との交流が描かれ場面転換する

第三部では再び「街」が登場し劇的なクライマックスを迎える

🟨【感想】

読んでいて「えーっ」と声を出すシーンが非常に多かった。かなり分厚い単行本なので持ち運ぶことができず全部自分ちのリビングで読んだが「わーっ」とか「うわっ」とか野球やサッカーを観るように楽しんでしまった。ここまでのめり込める作品を描けるのは村上春樹さんだけではないかと思う。これは「小説の聖書」であると断言できる。比喩も巧みだしストーリーも素晴らしいし第一部から第三部まで全部別々の小説とも同じ作品とも読める。今年度最高傑作の一つに挙げられる。これを七十四歳の作家が書いたというのが驚きであるし感嘆し素晴らしい。
読んだ人の中で賛否両論あるかも知れないが村上春樹さんの代表作と数百年後言われているのではないかと思う。私も趣味で小説を書くがそんな比喩なんで使えるのというような比喩が数多く出てきて右脳が対応できなかった。野球で言えば大谷翔平さんや田中将大さんのような怪物でありサッカーで言えばメッシやクリスティアーノ・ロナウドのようなエースストライカーであるのが作家の村上春樹さんだと思う。今の時代に本作品に出会えて嬉しい。言葉足らずだが村上春樹さんを好きな人達にとってはプレゼントだと思う。世界中にファンがいて毎年ノーベル文学賞の候補になっている作家が日本人なのも同じ国に住んでいるのも素敵。幸運に恵まれ小説家になることができたなら令和時代の村上春樹と呼ばれる作品を書きたいし個性を持った小説家になりたい。
この小説に感化されて小説を書き始めたがサブストラクトをコンセプトに書いている。
マイナスに削っていって仏像の彫刻のように運慶快慶の金剛力士像を彫り上げるような作品を書きたい。
一番影響されている当代の作家が村上春樹さんだ。
その中でも『街とその不確かな壁』は究極的に身体にインフルエンスする。久しぶりに小説で心臓が熱くなった。次回の作品に期待すると共に自分も少しでも近づける人間になりたいと思う。

fin.

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