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ファイト・クラブ 父なき迷える男たちとテロリズム

あらすじ

ジャック(エドワード・ノートン)は、保険会社に勤めるヤング・エグゼクティブ。
ここ数カ月は不眠症に悩み、さまざまな病気を抱える人々が集まる「支援の会」に通い始め、そこで泣くことに快感を覚えるように。
ある時、やはり「支援の会」中毒の女、マーラ(ヘレナ・ボナム・カーター)に出会い、電話番号を交換する。
出張先の飛行機で、ジャックはタイラー(ブラッド・ピット)と知り合う。
フライトから帰ってくるとなぜかアパートの部屋は爆破されており、ジャックは仕方なくタイラーの家に泊めてもらうが、タイラーは自分を力いっぱい殴れという。
タイラーはエステサロンのゴミ箱から人間の脂肪を盗み出し、石鹸を作って売っていた。
数日後、ジャックとタイラーは、再び酒場の駐車場で殴り合う。
次第に見物人は増え、ついにタイラーは酒場の地下室を借りて互いに殴り合う「ファイトクラブ」の設立を宣言する。
一方でタイラーはマーラを呼び出し、情熱的なセックスを繰り返す。
「ファイトクラブ」は会員が増え、全国に支部ができるまでになった。
ついにクラブは、いたずらとテロを組織的に繰り返すようになる。
タイラーは、ついにクレジット会社のビルを爆破する計画を立てる。ジャックはタイラーを阻止しようと走り回る。
暴力と狂気に魅入られていく男の姿を描いた異色ドラマ。チャック・パラニュークの同名小説の映画化。

感想

見えない格差に阻まれて豊かになれないホワイトカラーやブルーカラーの格差社会に対する忿懣や怒りがテロに暴走していく恐ろしさ、物を手に入れても精神的に満たされず消費者としてマスコミに操られるメディアによって作られた物質文明に対するシニカルな目線、文明社会の中で父というお手本を頼りにすることも出来ず古き良き男らしさを表現出来ず彷徨う男たちの不安を去勢されるイメージを散りばめてダークなコメディとして演出し、社会に対する閉塞感が個人の暴力からテロに暴走していく反社会的な内容に自分の中のもう一人の自分が暴走していくサイコスリラーの要素を組み合わせて、革命的なカルト傑作映画になっている。
エドワード・ノートンの狂気溢れる演技、マッチョなカリスマ性溢れるブラッド・ピット、物語のキーになるヒロインを演じたヘレナ・ボナム・カーターの見事な演技や物質文明に対する反抗的なメッセージが組み合わさって、マッチョになるのでもマスメディアの言いなりの社会の奴隷になるのでもない、マスコミが宣伝するこういうライフスタイルをすれば幸せになれますよというライフスタイル・オブセッションの洗脳から自分を解き放ち自分の殻を壊し、完璧を求めず弱さや欠点を含めたありのままの自分で痛みや苦しみから逃げずに全力で生きるという精神的な革命を起こしてくれるカルト傑作映画。

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