差別が近い、戦争が近い

壁のカラフルな落書きに、感動したことはありますか。わたしはあります。

前回ちょっと不真面目というか、どうせあんた留学先で目標もなくへらへら楽しくやってたんでしょ、親のすねかじりが!と言われてしまいそうなことを書いたので、今回は真面目に私が留学先で学び、感じたことを書こうと思う。自分に対してこうも辛く当たってしまうのはなぜだろう。人と楽しく会話していると突然神妙な面持ちで、りりこさんって自己肯定感がすごく低いよね、と指摘されてしまうときがあるが、それはわたしが自虐的に口にする言葉があまりに攻撃性が高いからなのだろうと推測する。
語彙の攻撃性が高い私も、あえて使わないようにしている言葉がいくつかある。例えば、飯テロ、●●難民、コンサートに参戦する、人権がない、等。
これらは、戦争やテロ、難民という問題から遠く離れた恵まれた人々だけが使える、配慮に欠けた、いわば平和ボケしている語彙だ。

そして私は、自分が平和ボケしている人間なのだと今回の留学で改めて実感した。
私には、LilianとPSHという、ミャンマー人の友達がいる。彼女たちは明るくてかわいくてまじめで、そして、軍事政府によりテロリストと呼ばれ、軍による攻撃を受けたことがある。今現在ミャンマーは内戦状態にあり、彼女たちは、母国に戻ることもままならない状況にある。Lilianは家族に会えない悲しみを口にしながら「今でも飛行機の音を聞くと、逃げないと、って思う」と言った。
それは、私が人生で経験したことのない、戦争と隣合わせの言葉だった。
Astaはロシアとの戦争を続けるウクライナからやってきた。深く話したことはないが、彼女は祖国から離れて自分だけ安全な場所にいること、戦争が再び激化したことなどを思うと気持ちが沈む、と語っていた。
寮から出て食堂に向かうと、壁にスプレーでFREE GAZA!CEASE FIRE!(ガザを解放しろ!戦争をやめろ!)と書いてある。教会のそばを通れば、#BlackLivesMatter、本屋さんの壁には#StopAsianHateのバナーが目に入る。
私の周りには、戦争と差別が、そしてそのことで苦しむ人々が生きていた。
そして、そのために立ち上がる人たちが生きていた。

ガザの侵略とパレスチナ問題、そして大学でのデモ活動について書いた友達のブログを読み、私は大学内で行われたデモ活動に参加した。
大学長のオフィスである建物の前で行われたデモ活動には、100人以上の学生が参加していた。主要メンバーの何人かは、昨日建物内に無断で押し入った罪で警察に連行されたらしい。やり方には賛否があると思うが、「経済学部が米国軍とずぶずぶの関係であり、ガザの侵略に私たちが払った学費が貢献している可能性がある。私達は人を殺したいのではなく、学びたい。大学はただちに軍との関係性を切れ」という主張は間違っていない。
マイクをもって声高に主張を叫んでいた人が、おもむろにマイクを別の人物に受け渡した。私達のもとにも、なにやら歌詞カードが渡される。
そして私たちは、声をあわせて歌い始めた。Stop Genocide(虐殺をやめろ)と。
人々が、いまだイスラエルの虐殺を支持する態度を崩さないアメリカ政府に声を上げるために、真夏に昼間から声を合わせて歌い始める。
歩いていた人が足を止める。

通り過ぎる人もいれば、加わる人もいる。
皆で歌い続ける。
歌いながら、私は、自分の力で社会を変えることができると信じる人がこんなにいるんだ!と感動していた。自分の声が社会に届くと信じることが、こんなにうれしいとは思わなかった。
私は、政治や社会問題などに詳しい人間ではない。政治の話をしたいとも思わない。できることなら楽しくて面白くてくだらない話ばかりしていたい。でも、人を殺すこと、誰かの権利を踏みにじった人が利益を得ることがいけないことである、ということは、誰でもわかる。
そして、私はそれを変えたいと思う。そして変えるために、何か行動したいと思う。
デモに集まった人々は「バカ高い学費、がんばって支払っているのに、戦争に使われるのか。最悪!そんなの最悪!」と歌っていた。
戦争に反対するために、自分が聖職者である必要も、人道的活動をしている必要も、友人に戦争を経験した人がいる必要もないのだ。
例えば、自分がなにかを買ったお金が、巡り巡って戦争に使われること。
それを嫌だと思うのであれば、今すぐ「最悪だ!」と声をあげればいいのだ。

そして声をあげる方法は、デモに参加するだけではない。
たとえば、戦争に加担している企業の製品を買わないことは、「最悪だ!」という意思表示以上の効果を生む。
世界は金で回っているからだ。金さえ生むならば人をいくら殺しても構わない、と考える人がいる。そんな怪物をとめるには、戦争は金を生まない、むしろマイナスになる、と気づかせる必要がある。

そのために、まずは私と始めてみませんか。
すでにいくつかの企業がボイコットによる業績の悪化を経験し、イスラエル支援から手を引いています。(ドイツのスポーツウェアブランドPUMAは、サッカーのイスラエル代表チームとのスポンサー契約を2024年の契約満了を持って終了することを明らかにした。)

ここに、イスラエル支援企業でボイコット対象の企業名のリストを貼っておきます。

留学先では、ミャンマー人にも、ウクライナ人にもロシア人にもイスラエル人にも出会ったが、パレスチナ人に出会うことはなかった。
いつか、近い未来、大学で彼らに出会って、その人が安心して勉強に励む姿を見ることができたら、本当にいいなと思っている。

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