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【書籍紹介】『終の盟約』&『神域』

「終わりかた」も考える時代になりました

前回の【書籍紹介】で
『ソクラテスの弁明』を紹介したとき、
「人間は変わらないですね」とお話ししました。

ソクラテスの時代から2000年以上経っても、
人間の本質はまったく変わっていません

しかしここ数十年で、
劇的に変わったものがひとつあります。

人間の寿命です。


個人的な例になりますが、
明治43年(1910年)生まれの祖母は、昭和の終わりに
70歳を超えて自転車に乗っていると元気だと驚かれ、
80過ぎに亡くなったときは「大往生」といわれました。

ところが、
その息子である父(昭和6年:1931年生まれ)は、
80歳のころには若いころと変わらない生活をしていましたし、
90歳過ぎた現在でも健在です。

わずか一世代で劇的に寿命がのびた実感があります。


「人生100年時代」の流行語を生み出しベストセラーとなった
リンダ・グラットン著『ライフシフト』によれば、
2007年に日本で生まれた子どもの半分は107年以上生きる
と予想されています。

次の世代では、さらに寿命が伸びそうです。

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長生きできることは喜ばしいことですが、
寿命が伸びることで心配なこともあります。

それが、今回ご紹介する両書のテーマになっている
アルツハイマー病に代表される認知症です。


ヒトの細胞は死滅と誕生を繰り返して入れ替わるのですが、
脳細胞にはごく一部を除き、このような仕組みがありません。
死滅した脳細胞はそれきりなのだそうです。

寿命が長くなればなるほど死滅する脳細胞は増え、
認知症になる可能性が高くなってしまうんですね。

※参考:
 人間は年齢にかかわらず生涯ずっと脳の神経細胞(ニューロン)を
 増やしているという研究結果もあるようです。


どちらの小説でも描写されていますが、
認知症になると、元気だった頃には考えられない
行動をすることがあるようです。

ぼくは自分で自分をコントロールしていたい気持ちが強いので、
自分がそんな状態になるのはせつないですね。

「介護する側、介護される側とに意識の乖離があるというわけですね」

「患者本人が、こうなってまで生きたくはないと思っても、家族は一日でも長く生きて欲しい。そう願うことですよ」

『終の盟約』楡周平 著(P.291)


これまでは、
「いかに長生きするか」が人類最大の関心ごとでした。

医学も引き続き進歩していくでしょう。

『神域』にあるようなアルツハイマー病を治す
「奇跡の細胞」もいずれ開発されるかもしれません。


でもこれからはいかに終わらせるか、
「終わりかた」にも関心を持つことが必要な時代になったなと、
両書を読んで気づかせてもらいました。

死を迎えるのが時間の問題となった時、延命治療を望むか、治療を中断するかを決めるのは、医師でもなければ家族でもない。
まして、社会でもない。
やはり本人が決めることなのかもしれないとね」

『終の盟約』楡周平 著(P.414)


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『終の盟約』楡周平 著


『神域』真山仁 著


マガジンにも保存しました。


「学びをよろこびに、人生にリーダシップを」
ディアログ合同会社 小川剛司(つよし)


美味しいものを食べて、次回の投稿に向けて英気を養います(笑)。