人生を愛でる
大人になったものだ。
自分の幸せよりも、人の喜ぶ顔を見るのが好きになった。
友人との過去のいざこざを、時間を理由に解決できるようになった。
初めて会った人との、心の距離を測るようになった。
長年会っていない友人に、連絡をとるのを躊躇するようになった。
新たな年の始まりを喜べなくなった。
甘いものよりも、煮物が食べたくなるようになった。
スノーボードよりも、こたつが1番になった。
新しいものよりも、使い慣れたものを再び手に取るようになった。
人の良さよりも、欠点が目につくようになった。
夕日の眩しさよりも、二日酔いの太陽のほうが、眩しく感じるようになった。
海沿いの街に集う焦げた肌が、二日酔いの太陽よりも、より眩しく感じるようになった。
だんだんと、できないことが増えてきて、大人になるのってこんなもんか、と思う。
だけど。
自分の幸せとは何なのか、はっきりと言葉にできるようになった。
小さな皺にも、愛着が持てるようになった。
好きな時に、好きな場所へ、好きな人と行ける決定権を持てるようになった。
自分の足で立って歩けるようになった。
些細な言葉ひとつも、染み入るようになった。
人の行いを許せるようになった。
コーヒー1杯で、ホッと一息つけるようになった。
新しい自分に出逢う度、新鮮な気持ちを感じれるようになった。
大人になったものだ。
こんなにも、自分のことがわかるようになったのだから。
ちょっといいもの食べて、もっといいヒトになりたい。