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ゲームデザイナーがオススメしたい【ゲームデザイン力】を高める5つの訓練

どうも、浮雲です。

「プラなろ会」というゲームプランナー/ゲームデザイナー志望者のコミュニティ運営に参加してる話は以前にもしたと思いますが。

そこで、先日私がコメントした以下のtweetをキッカケに「“ゲームデザイン力”を高めるための手法にはどんなものがありますか?」という質問がありました。

自分自身のトレーニングや、新人研修のカリキュラムなどでもいろいろやってきましたが、そう言えば何かにまとめたりしたことなかったなと思ったので、良い機会だなとnoteにまとめてみようと思います。

※「プラなろ会」についてはこちら

なおnoteを書くことにしたキッカケもあってタイトルで「ゲームデザイン力」とうたってはいますが、以下の想定ターゲットの3番目にあるように「ゲーム以外」にも応用できるものになっていますので、色んな人に役立つものだと思います!

■この記事のターゲット
・ゲームデザインの実践的訓練をしてみたい方
・ゲームデザインをメンバーや学生にどう指導するのが良いか悩んでいる方
・ゲームに限らず、アイデアを形にする力を伸ばしたいと思っている方

「ゲームデザイン力」とは

そもそもで「ゲームデザイン力ってなんやねん?」という疑問もあるかと思うので、このnoteにおける「ゲームデザイン力」を定義しておきます。

■「ゲームデザイン力」に含まれるスキル
・コンセプトを正しく定義できる
・コンセプトに基づいて、そのゲームのセールスポイントを言語化できる
・コンセプトに基づいて、どんなゲームなのかを言語化できる
・コンセプトやセールスポイントを実現するためのルールを言語化できる

細かく挙げていけばキリがないのですが、特に重要なのはこんなところかと思います。

要は、「どんなゲームなのかをちゃんと説明できるくらいに、そのゲームに必要な要素を把握して、言語化できる能力」ということです。

トレーニングをはじめるにあたって

なお、各トレーニングの説明をする前に注意点を先にお伝えしておくと、これらすべてに共通して必要かつ大切なスキルは「分析力」です。

さらにかみ砕いて言うと、「観察」「分解」「分類」「再構築」の力です。
闇雲にトレーニングを続けても効果は薄いので、慣れるまでは1つ1つに時間をかけてでも、「これ以上はムリ!」と思うまで分析するクセをつけてもらうと、より高い効果が望めるようになると思います。

それでは、以下順番に紹介していきます。

1.既存タイトルのコンセプト分析

私自身がまだ企画職としてのキャリアが浅い時期に、企画書を作っていてコンセプトとセールスポイントがごっちゃになったりと、うまくコンセプトが見つけられなかったときにトレーニングとして行っていたものです。

内容はシンプルで、既存のゲームタイトルから逆算、つまり「分析」を行うことでそのゲームのコンセプトを見つけ出すというものです。
これは、自分で企画しているまだ形の見えていないゲームのコンセプトを考えるのに比べれば、目の前に完成したものがあってしかも遊べるわけなので、コンセプトを導き出す難易度は大きく下がります。

また、このトレーニングをたくさんのタイトルで繰り返していくことで、いろんなゲームのコンセプトを考える経験を積むことができるため、自分で企画書を作成したり、ゲームデザインを行う際に、自分なりのコンセプトを導き出すためのとても良い訓練になります。

なお、プラなろ会では、毎週「コンセプト大喜利」というイベントとして、このトレーニングを行っています。
毎回ではないですが、時にはこういう資料を作って共有したりもしていますので、さらっとご紹介。

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2.既存タイトルの企画書作成

1で行ったコンセプト分析の拡張版で、コンセプト以外にゲームのテーマ、セールスポイント、メカニクスなどを自分の手で「言語化」「視覚化」して、企画書を完成させるというトレーニングです。

とはいえあくまでトレーニングなので、デザインに凝った何ページもの企画書にする必要はなく、基本は「ワンページャー」と呼ばれる1枚企画書か、5ページ程度のもので十分です。

大切なことは、対象としているゲームを構成する各要素をしっかりと観察、分析して、そこから自分の言葉で言語化することです。

「ワンページャー」がどういうものか気になる方は、以下のブログで実例を紹介している方がいたので、参考に見ていただくとよいかと思います。

3.プロトタイピング(デジタル/アナログ)

ゲームはインタラクティブなコンテンツなので、ユーザー操作という「入力」と、それによるゲームからの「出力」とで成り立っています。

そのため、企画書などのドキュメント、あるいは頭の中にあるイメージだけでは、面白さの検証をするには正直不十分です。というか、頭の中にあるときは大抵「これめっちゃ面白いな!」「天才じゃね!?」となってることが多いので、どこかで冷静になる必要があります。

そこで、実際に動くものを作って検証することで、自分のアイデアや仕様の善し悪しを目で見て、手で触れる形で確認することができます。これを「プロトタイピング」といいます。
プロトタイピングは、ユーザーからのフィードバックを得られるという点でも、ゲームデザインの経験値としては大きなものになります。

なお、あくまで検証用のプロトタイピングなので、なるべく小さく、速くつくることが望ましいです。
今ならUnityやUEといったゲームデザインを用いることで、既存のアセットを活用してコンパクトかつ時短でのプロトタイピングが可能になったのは、とても良いなぁと思っています。
もしくは、これはゲームデザインによって向き不向きはありますが、例えばカードゲームやボードゲームであれば、ペーパープロトタイピングでの検証も可能なので、自分に合うやり方で問題ありません。

ペーパープロトタイピングの参考例は、こちらをどうぞ。

4.既存ゲームのモック制作

プロトタイピングはどちらかというと自分のアイデア、新しいゲームデザインを試すものですが、既存のタイトルをいわゆる「目コピ」で作ることもトレーニングとしては効果的です。
これは、スポーツや格闘技などで、正しいフォームや型を見てその動きをトレースするトレーニングに近いものだと思います。

実際にやったことがあるひとはわかると思いますが、例えば『テトリス』のように比較的シンプルに思えるゲームであっても、実際に自分で作ろうと思うととても大変です。遊んでいるときには気にしたことがなかったような、考えないといけないことがおそらく想像以上にたくさんあることに気づくと思います。
加えて、手触りだったり、気持ちよさだったり、面白さだったりをちゃんと感じられるようにしようと思うと、ちゃんと仕様通りに動くようになってからが本番だということも体験できます。

ちょうど今朝、セガが「ぷよぷよプログラミング」という「『ぷよぷよ』のソースコードを書き写す作業(写経)を通して、プログラミング学習できる教材」を用いた小学生向けのプログラミング教育カリキュラムを開発したというニュースが流れていたのですが、これも同様のトレーニングにあたりますね。

このカリキュラムの後半には「ぷよぷよのカスタマイズ(改造)」というものも用意されていて、これは最後の5に繋がる内容でもあります。

5.既存ゲームの「ワンアイデア」アップデート

5番目は先の「ぷよぷよプログラミング」にもあるような、既存のゲームに「ワンアイデア」を追加して新しい体験を作る、というトレーニングです。

4で行った既存ゲームのモックに、自分なりのコンセプトで新しいゲームデザインに変更してみたり、「追加ルール」「追加アイテム」「追加スキル」などを足すことでゲーム体験がどう変わるかを検証してみることで、より深くゲームデザインやチューニングに関する訓練を積むことができます。

もっとシンプルなやり方としては、例えば「縛りプレイ」のような遊び方をしたことがある方も多いと思いますが、自分で「ジャンプ禁止」「ガード禁止」のような「制約」をつけた遊び方をしてみることによってゲーム体験がどう変わるかを体験してみるのも手軽なトレーニングにはなります。

あるいは、ゲームデザインは試したいけど自分自身でプログラミングを行うのが難しいという場合には、アナログゲームやトランプなどを使ってみるのが良いと思います。アナログゲームであれば、実際にルールの追加等がすぐに出来て、かつテストプレイで検証するの簡単にできるので、個人的にはとてもおススメのトレーニングのひとつです。

実際にアナログゲームを使ったトレーニングの一例として、「ゼビウス」や「ドルアーガの塔」を手がけた遠藤雅伸さんが「すごろく」を使ったワークショップを実施されたときの記事に詳しいので、ぜひこちらを読んでみて、興味を持った方は実際にやってみてもらえればと思います。

「学ぶ(まなぶ)」は「真似ぶ(まねぶ)」

最後に、「学ぶの語源は『まねぶ』である」というような話を聞いたことがある方もいると思いますが、個人的には何かを学ぶ際にはとっかかりとしても、奥深さを追求するにしても、既存のものから学び取るのが一番だと思います。

なぜなら、実際に商品になっているということは、少なくともそうなっているだけの理由がそこにはあるはずだからです。

もちろん、時代背景や環境が変われば求められるものも変わるため、何でもかんでも学べば良いというわけではありませんが、長く続くものや大ヒットしたものからは、学ぶべきことが多いです。
また、変わっていくからこそ、常に学び続けることも必要なんだと思います。

こちらは参考までに、慶応大学の「学習パターンプロジェクト」がまとめた学習パターンのページの中から、『「まねぶ」ことから』というページのリンクを貼っておきます。ほかのページも面白いので、興味持った方は最初から読んでみると、新しい気づきがあるかもしれません。

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以上、5つのトレーニング方法について、なるべく実例を交えつつご紹介しました。

特に5の「ワンアイデア」的なことは、プロのゲームデザイナーであれば、何かのゲームを遊んでいるときにはおそらく意識することなく「こうしたらどうなるかな」「自分ならこうするかな」というのを考えながらプレイしていると思います(だからこそ、普通にゲームが楽しめなくなるんですが)。

ゲームをプレイした経験だったり、プログラミングの技術だったりがなくてもできるものを多く紹介したつもりなので、これから勉強するぞという方にも実践してもらい易いので、ぜひやってみてもらえればと思います!

それでは、また。

※何か質問や聞いてみたいテーマがあれば、以下の質問箱からどうぞ!



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