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【海外登山2】@カザフスタン 「馬が駆ける天山山脈の山」 クンベルピークの登り方 


中央アジアに天高く聳える天山(Tian Shan)。
最高峰は7439メートルを誇り、
カザフスタン、キルギスタン、ウズベキスタン、新疆自治区を跨ぐ。
人を寄せ付けない雪に覆われた山は、
「天の王(King Heaven)」と称され、
古くから信仰の対象となっている。
自然の雄大さと殺伐とした険しさを併せる山の懐にも、
馬と走り、
馬を育て、
馬を増やし、
馬を食べ、
馬で生計を立てる
人々がいる。

登山中のキャンプ場で、馬が駆ける瞬間に遭遇。

何百年も脈々と繰り広げられてきた馬や家畜との暮らし。
その一端を見ることができる興味深い登山道があります。
それがクンベルピークです。
筆者は6月17日-18日に、
天山山脈の北路にあるクンベルピークに登ってきました。
本記事では、読者がクンベルピーク登山の参考になるように、
登山行程や装備、アクセス方法などを書いていきます。



1.1 登山行程の概要

合計所要時間 26時間30分(休憩/睡眠時間等含む)
日本から往復する場合、最短でも4日と見ておいてください。

[1日目]   歩行距離:13km        標高差:1630M
アクブラックバス停(1550M) —【2時間30分 / 4.8km】
— コクザイラウ (キャンプ場 2251M)—【1時間40分 /2km】
— スリーブラザーズ—【2時間 /2.1km】— クンベルピーク(3180M)
—【3時間/4.1km】— コクザイラウ (キャンプ場)

[2日目]  歩行距離:4.8km    標高差:701M
コクザイラウ(キャンプ場)—【1時間50分/ 4.8km】—アクブラックバス停


1.2 難易度

体力※1  :★★★★☆
技術※1  :★★☆☆☆
アクスセス:★☆☆☆☆
(★が多ければ多いほど難易度が高くなると考えてください。)

・体力面
テントを担いでの登山だったので、
キャンプ場に到着するまでは、足に負担がかかります。
3180Mと高山でもあるため、高山病のリスクもあります。
無理せずゆっくり登ることが大切!

・技術面
登山道は分かりやすいです。
登山者も比較的多いので、
(スリーブラザーズまでは)
何かあったときに一人になることはないと思います。
サンダルで来ている地元の方もいました笑。
急勾配が要所毎にあるので、登り下りともに注意が必要です。
また、登山期間は6月上旬から9月中旬までです。
10月以降からは、気温が大きく下り、
11月以降は積雪の可能性があります。

・アクセス
行き、帰りともに、
アルマティから、かなりの頻度で
バスが出ています。
タクシーもYandexGoなどで
事前に決められた価格で呼びことができます。

・楽しさ
これは筆者の感想ですが、
登っていて全く飽きない山道でした。
各所で、放牧されいる馬や牛に会うことができます。
また、キャンプ場が開けた場所にあるので、
景色が圧巻です。
加えて、山頂では、都市と緑の深い山々、
そして人を寄せ付けない白銀の峰々を
垣間見ることができます。
道中、カザフ人との交流もありました。

※1  体力、技術はYAMA HACKの基準を参考にしました。
リンク:https://yamahack.com/grading-scale


1.3 装備

普段登山をされる装備があれば大丈夫ですが、
念の為、持っていったほうがいいものを紹介します。

・フィルター
(滝の水をフィルターしたほうが安全です。)

・テント
(キャンプ場が美しい高原になっています!!)

・トイレットペーパー+スコップ
(指定されたトイレが少ないので、森の中で用を済まし、
埋めましょう。(
・レインコート
(山頂へ向かう稜線には、4000M級の峰々が並んでいます。
 そのため、地上よりも天候が変わりやすいです。)

・Off-Line Map
(Maps Meがおすすめです。無料かつ比較的正確に案内してくれます。)

・Maps
(中央アジアで”2GIS”と同じくらい使われている地図アプリ。
 公共交通機関の経路や位置情報をライブ配信してくれます。)

“Maps”のアプリ。バスの路線番号や動きが分かるので、安心。




1.4 実際の登山行程

ここからは筆者の登山行程です。
要所となる場所には、※印と一緒にGoogle Mapの
リンクを貼っておきました。
気になる方は、マップを辿りながら、読み進めてもいいかもしれません。

登山口の最寄りバス停である
アクブラックバス停に到着。
この看板を前にして背中側の道路を上って行きます。

登山口付近に到着すると、川が戦ぐ音が聞こえてきます。
ここで給水可能です。


川を必ず通ります。黒いホースからでる水を飲むことができます。

序盤の登りは急です。
息を整えながら上がりましょう。

いきなり急な斜面に入ります。

ある程度の登りが終わると、高原と稜線が
交互に続きます。

2キロほど登ると、登りが緩やかな稜線です。

土日ということもあり、
多様な人々が山に集います。
筆者が大ファンになってしまった
ロシア出身の登山家。

モザイクの向こう側は、快活な笑顔です。

この看板が見えたら、キャンプ場のコクザイラウ※2に着いたサインです。
ここ一面でテント泊が可能です。
どこにしよう?広すぎて困ります。

ここが地元の人々にも愛されるキャンプ場、コクザイラウ。

ここでは、地元の方がキャンプ目的で来る憩いの場です。
また、乗馬体験やインスタ映えのブランコなど、
色々なアクティビティもあります。
疲れて、これ以上登る士気がない場合は、
ここでキャンプをして帰るのもあり。
キャンプ場は無料ですが、
直火は山火事の原因になるので厳禁です。
ガチで注意されている方を見ました。

馬の向こうにテントが見えますね!

このキャンプ場を越えていくと、
上り道が見えてきます。最も急勾配です。
ここを登って行きます。

中央の急な坂をひたすら登ります。

途中で、馬や牛と会えると思います。
敢えて近づきすぎないようにして、
そっと見守りましょう。
小馬が乳を飲む瞬間にも出会えるかもしれません。

ミルクを飲む小馬さん。

この3つの大きな岩が見えます。
これがスリーブラザーズ※3です。
開けた場所から臨む広大な景色は圧巻です。

残雪が見られます。

スリーブラザーズを正面にして左側を歩いて行きます。
あと2kmで最高峰の
クンベルピーク※ 4です。

あと2時間弱で到着します。

稜線の上がり下りを3度繰り返すと
ようやく辿り着くことができます。
360°の絶景です。
この先は、写真ではおさまりせんので、
ご自身の目に焼きつけてきてください。
帰りは、
ピストンで帰りのバス停まで駆け降りるか、
コクザイラウのキャンプ場で一晩を明かすことになるでしょう。

※1:アクブラックバス停 (Aqbulaq)

※2 :  コクザイラウ(koi-Zhaylau)

※3 :  スリーブラザーズ(три брата)

※4 :クンベルピーク(Kumbel Peak)


1.5 登山口までのアクセス

アルマティ空港→アルマティ市内

・手段:バス No.86 / タクシー
・価格:バス 150Tenge  / タクシー  2000Tenge
・所要時間:バス 1時間10分 / タクシー 30分
・出発時間:バス  夜10時まで定期的に運行 /  タクシー いつでもあります

空港に到着したら、一階に黄色と緑のATMがあります。
念の為現金を持っておきましょう。

ATM

・宿泊先
アルマティ市内の宿泊を選ぶ際には、
メデオ (Medeu / Медеу)地区※5がおすすめです。
登山口行きのバスNo12は、メデオ地区(アルマティの南東)
から出発するからです。
また、アルマティ市内であれば、
バス網が整っているので、
メデオ地区以外でも大丈夫です。
筆者は、地図から宿泊先を探せる
Booking.com、または、Agodaなどで
予約をしました。

・バスの場合
メデオ地区へ向かうバスは、No.86です。
No.86のバス停※6のリンクを下記に貼ってあるので
ご確認ください。
アルマティの市内バスは、一律150Tengeです。
運転手に直接現金で渡してください。

・タクシーの場合
タクシーはYandexGoの調べだと、
2000~2500Tengeです。
あまりにも高い料金をふっかけられたら、
最高でも2500Tenge前後に落ち着くように交渉しましょう。
もしも、タクシーの交渉に不安な場合は、
YandexGoをダウンロードしておきましょう。
これは、タクシーを呼ぶアプリです。
事前に決まった価格で、指定した場所まで
送り届けてくるので、価格的にも
精神的にも安心です。

Yandex Go

アルマティ市内→アクブラックバス停※1

・手段:バス No.12 / タクシー
・価格:バス 150Tenge  / タクシー  2000Tenge
・所要時間:バス 1時間 / タクシー 30分
・出発時間:バス  夜10時まで定期的に運行 /  タクシー いつでもあります

・バスの場合
一番分かりやすいバス停の場所は、
ドストゥク・プラザ(Dostyk Plaza)付近のバス停※7です。
ドストゥク通りであれば、
どのバス停でもNo.12に乗ることができます。
朝の7時から運行しています。
下車する場所は、アクブラックバス停で、
この大きな看板が目印です。

・タクシーの場合
YandexGoの価格だと、
2000Tengeが相場のようです。
価格や安全性を考慮すると、
YandexGoでタクシーを呼ぶのが
一番安全です。

アクブラックバス停→登山口

アクブラックバス停→登山口
バス停からはいよいよ歩きます。
まずは、アクブラックバス停を背中に、
車道に沿って歩いて行きます。

車道から、砂の道に入り、登山道を表す看板が見えてきます。
この看板のKok Jailayについて行けば大丈夫です。

帰路

アクブラックバス停の反対側のバス停※8から、
バスをNo.12のバスをつかまえることができます。
夜9時までは運行しているので、
ピストンを狙うのもありですね。

※5  :  メデオ地区

※6:No.86バス停(空港から最寄りのバス停)

※7:ドストゥク・プラザ(Dostyk Plaza)付近のバス停

※8 :帰りのバス停



1.6  おすすめのレストラン

山登りの後は、ご褒美を自身に与えたいものです。
もしも時間があるなら、
カザフスタンの伝統料理で舌鼓はいかがでしょうか?

価格が安く、ローカルに人気な
ラグマンレストランを
一つ紹介します。
ラグマンは、中央アジアで庶民的な食べ物で、
腰のあるうどんを濃厚なスープにつけて、
または、絡めて食べます。
中には、炒めラグマンもあります。

ラグマンレストランに何軒か足を運びました。
その結果、一番に選出したいのが、
Lagmankhana Urumchi※9というお店です。

辛すぎない、お肉が多め、
なおかつ、
ラグマンメニューの多さとローカルの人々が
決め手です。
ぜひ、行ってみてください!!

※9:Lagmankhana Urumchi


1.7 雑記 カザフ人と仕事

クンベルピーク登山を通して、印象に残ったのは、
①天山山脈の果てしなさ
②広大なキャンプ場
③カザフ人との交流で学んだ30代のカザフ人と仕事

③のことについて記載します。
クンベルピークから下山している最中に、
たまたま出会った六人組のカザフ人のキャンパーと、
会話する機会がありました。
面白いことに誰一人として、
フルタイマーで企業勤めをする人がいなかったのです。

彼ら/彼女らの仕事は
1.カフェのオーナー+レストランの雑用
2.中国-カザフスタン間のおもちゃの行商
3.フリーランスITエンジニア
4.ツアーガイド+車の修理
5.専業主婦+タクシー運転手+家族の陶芸屋の手伝い
6.タクシー運転手+車の修理

どれも自営です。
フルタイマーとして、
多くの人を雇う受け皿としての企業が多くない、
というのが彼ら、彼女らの見解です。
そのため、学歴よりも
今までに経験してきた実践的な側面が、
カザフスタンで重視されるようです。
色々なことに挑戦し経験を稼いでいくこと。
これさえ積み重ねていければ、
どうにかなると笑顔で言っていました。

カザフスタンの「カザフ」の語源には、
“Wander(さすらう/放浪する/流浪する)”という意味があります。
彼らの/彼女らのように、色々な経験を通して、
人生をさすらってみようじゃないか。
そう思いながら、筆者は、夕暮れの急勾配を下山していました。

付き合いをいただきありがとうございました。
まだまだ、書きたい山があるので、
次々更新して行きます。

次回もアルマティの山に書く予定です。
кейінірек кездесеміз !!!!

【関連記事】

カザフスタンの他の登山やハイキングについても書いています!!
全てアルマティからのアクセスが可能なので、
チェックしてみてください。


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