蕩尽伝説

大塚日記→ライコス→マイぷれすと流れてきた。流浪の哲学者、蕩尽伝説のブログである(哲学…

蕩尽伝説

大塚日記→ライコス→マイぷれすと流れてきた。流浪の哲学者、蕩尽伝説のブログである(哲学・文学・映画・芸術・競馬)。近年はもっぱらツイッターを利用してきたが、日本ツイッター社の言論弾圧に遭い、居場所を移すことにした。

最近の記事

遊びと行動――権力の源泉として

ヒューマニエンス「“遊び” それは人類の可能性の宝庫」@NHKBS この番組は時々見ている。最新の研究情報を踏まえた良質な科学番組なのだが、コロナ以来、早寝早起きが身についた健康至上主義者のオレには放送時間がやや遅い上、司会を務める織田裕二が相変わらず暑苦しい。いや、視聴者のレベルに即した巧みな道化役を演じていて決して悪くはないのだが、とにかく黒くて暑苦しい。松崎しげるの後継者はきっとこの男だ。 今回の「遊び」というテーマには、かねてより興味がある。昔、論文に書いたぐらい

    • 文化とフロー

      読書によってもたらされる心の静けさの正体 「読書に没頭することで人は我を忘れ、フロー状態にも似た経験をすることができる」という一説に目が行き、興味を覚えて以下の記事を読んでみた。以下、印象に残った個所を抜き出してみる。 2010年に刊行され、今日のほうがますますよく当てはまる、『ネット・バカ――インターネットがわたしたちの脳にしていること』という本の中で、ジャーナリストで社会学者のニコラス・カーは、オンラインの生活は中断に尽きる、と嘆いている。 オンラインで物を読んで情

      • 『機動戦士ガンダム ククルス・ドアンの島』――アニメ作家・富野由悠季の闘い

        『機動戦士ガンダム ククルス・ドアンの島』 かつてテレビシリーズで見たような記憶がかすかにあるのだが、映画版は印象が全然違う。富野由悠季はカルトの人なので、こうした小コミュニティーの自給自足的な生活を理想としていたのかもしれない。その資質がストレートに出た印象的な小品である。 無人島アレグランサ島を探索に向かった宇宙連邦軍の先遣隊が謎の全滅を遂げた。残敵がいるらしい。連邦の上層部はホワイトベースにその掃討を命じる。ガンダムを先頭に一同が調査に向かうが、島に潜んでいたザクに

        • 富田騎手への謝罪

          札幌エルムSの顚末 8月6日札幌エルムS後に、ワイはこう書いた。 ところが、その2週間後の8月20日の札幌7R。オレにバカにされた富田が発奮したのか、トチ狂ったのか、14番人気ワレハウミノコで勝利(単勝10460円)。 2着が最低16番人気のシャドウエリス、3着が9番人気のポーレットで、3連単が1千7百73万円。これは日本競馬史上10位の高配当とか。札幌競馬場では馬連、馬単、3連複、3連単ともに至上最高額。 富田よ、オレの愛の鞭が効きすぎたのか。鞭をもって愛する俺流の

        遊びと行動――権力の源泉として

          バズ・ライトイヤー、新しい土地に住む新しい者の権利

          ピクサー映画『トイ・ストーリー』のシリーズはもう見ていないが、そのスピンオフ作品で、ホッカイロレンが褒めていたので見てみた。驚いたことに、スペースレンジャーのバズ・ライトイヤーを主人公とする本作は、シリーズの本筋とは無関係な傑作だった。 アメリカ人は自らの出自であるヨーロッパの豊かな風土や文化に尽きざる郷愁を抱き続けている。べつだんアメリカ人ではなくとも、故郷への帰愁は色々なかたちで誰もが感じるところだろう。それを見事に描いている。 巨大な宇宙探査船が地球に帰還中、居住可

          バズ・ライトイヤー、新しい土地に住む新しい者の権利

          にょろにょろ虫くんがスリザー!

          『スリザー』(2006年) 保険証を無くしたようだ。思い返すと某所で提示を求められて渡したが、それを受け取った記憶がない。その日はひどく急いでいた。それ以外に保険証など財布から出したことは一度もない。それで電話して探してもらったが、もうずいぶん前のこと。 多分あそこに違いないと思うのだが、誠意をもって確認してもらったので、もうそれ以上は無理。ワイの保険証は歴史の闇に消えた。再発行の手続きの面倒さを考えるとウンザリ。とまれ、アルツが急激に進んでいる。凹む。 とても『アソー

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          ストーンズVS五木寛之

          このインタビューのことは全く覚えていない。でも、いかにも五木が訊きそうな質問だと興味深かった。 自分は五木の初期エッセイ『風に吹かれて』を小学校6年ぐらいの時だったか?ヒマつぶしに読んでいた。その後の彼の大衆小説にはまったく興味を持てず。 五木は若い頃から欧米における黒人の差別および社会からの排除という問題に鋭敏だった。今でも覚えているのは、アメリカの黒人差別はひどい。ヨーロッパとりわけフランスはジャズをいち早く受け入れたように、アメリカと比べると差別は目立たないように見

          ストーンズVS五木寛之

          バービーはケンを愛することができるか?

          大ヒット『バービー』をTOHOシネマズ日本橋で見る オレは原色が大好きだ。 インドネシアに行ったときは、みんな色とりどりのバティックを着ていて、ここでこそ生きられる!と思ったものだ。 中学校のときだったか?デパートで赤い傘がきれいだと思い、折り畳みを買って学校に持って行ったが、雨の帰り道、男子で赤い傘など差している者など1人もいなかった。 自分が最初に書いた本の装丁はピンク色だった。今でも気に入っている。 今の日本の男子には色彩が禁じられているらしい。朝の総武線で柄

          バービーはケンを愛することができるか?

          性獣ジャニー喜多川が追い求めたもの

          34年後の暴露 ジャニー喜多川の性犯罪にかんしては、とうに一定の報道をされ、裁判でも決着がついていた。もう年寄りだし、まさかつい最近まで「現役」でやり続けていたなどと思いもしなかった。北公次の告発の件をよく覚えているけど、その後87歳で死去するまで34年間も野放しだったなんて……これを許していた回りの責任は大きい。そんな事務所を重用していた日本社会全体の問題だ。 日本支配層の禁忌としての同性愛 BSの報道番組で、松原耕二と元朝日新聞の政治記者が真摯に反省の弁を述べていた

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          ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー(Vol.3)――普遍的生存権のために

          『アソーカ』の退屈さ 『アソーカ』を見るためにディズニープラスに再加入したのだが……つまらん。最初の20分で見るのをやめてしまった。そもそもこのアソーカって女、やたら高慢チキで、ハナから人を見下している。そんな演技をさせる理由が解らない。男社会相手に戦うフェミニズム戦士なのか? 古代遺跡の地下に入り込み、4隅の石を動かして隠された宇宙地図を取り出すのが導入部なのだが、このシーンがやたら長い。石をゴリッと動かすたびに、このイキり女が「オー、マンダム!」(=古代語)みたいに悦

          ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー(Vol.3)――普遍的生存権のために

          大阪夏の陣――代替定理は代替できるか?

          産業連関論におけるサプライチェーンの位置づけ ワイの人生とも学問とも恐らく無縁であるが、数理経済の研究会に呼ばれて大阪へ。「少しは会に貢献せんと」と思い、中瓶の日本酒を2本ほど買ってぶら下げて行く。森ノ宮まで遠回りしたせいで遅刻し、最初の発表者の報告が始まってずいぶん経っていた。 最初から最後まで数学的な証明なので素人に解るわけがない。そもそも問題設定からしてピンと来ない。サンギョウレンカンロンにおけるチュウカンザイが問題らしい。論文の書き出しにこうある。「中間財部門が経

          大阪夏の陣――代替定理は代替できるか?

          蔡國強(ツァイ・グオチャン)と宇宙的思考

          蔡國強(ツァイ・グオチャン) 宇宙遊 ―〈原初火球〉から始まる @国立新美術館 はじめに 「テート展」を見た帰り、寄ろうと思ったが、入り口でもっぱら中国の若者が長い列を作っている。なかなかの人気だ。ネット・チケットだとすぐ入れるらしいのでやってみたが、むやみに面倒くさいサイトで、住所から何から個人情報を一から打ち込まないと行けない。時間もなかったし、その日はあきらめた。 とはいえ面白そうだったし、会期終了も迫っていたので、別の日の午後あらためて六本木へ。チケットはやむな

          蔡國強(ツァイ・グオチャン)と宇宙的思考

          Z Bull ゼット・ブル

          近年、これといったホラー・コメディがないとお嘆きの貴兄に自信をもってお勧めする快作。毎晩このレベルのB級映画を見てから寝ることができれば快適なのに…… 主役のブレントン・スウェイツがイケメンすぎるのが唯一の欠点かも。大スタアになるには顔が小さくて美形すぎるだろう。 本作で彼が演じるのは、やる気皆無のダメ社員デズモンド。巨大兵器会社の若手のくせに遅刻の常習犯で、リストラ候補になっている。ある日、例によって遅れて出社すると、オフィスの雰囲気がおかしい。いたるところ死体だらけだ

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          MEG ザ・モンスター

          夏はやっぱりサメ映画である!本作はアマプラの評価が微妙だったので、無料になったら見ようと思っていた。先日確かめたら100円になっていたので購入。最初の5分で引き込まれ、15分後には気づいたら涙がはらはら溢れていた。まごうことなき傑作!2時間を超す長尺だが、一点の瑕瑾もない。 21世紀のサメ映画はここに始まる!アマプラの評価はまったく当てにならない。★5つしか有りえないだろう。深海の底にさらに深い海が広がっていて、そこに200年前の巨大サメ「メガロドン」が彷徨しているというア

          MEG ザ・モンスター

          マティスと顔の不在

          マティス展@東京都美術館 20年ぶりの大規模なマティス展だという。20年前のやつは見たっけか?正直、マティスには飽きてしまった。が、せっかくの機会なので、酷暑の中わざわざ上野に出かけた。 学生時代に《赤の大きな室内》の大きなポスターを買い、部屋に長年ずっと掛けていた。画家の晩年に近い、その力量が絶頂に達していた時代の作品で、マティスの最高傑作じゃないかと今なお思う。 室内画だけど、上半分に掛けられた2枚の絵が独特の効果を上げている。絵なのか、鏡なのか、それとも窓なのかは

          マティスと顔の不在

          ホッカイロレンを大いに褒める

          はじめに これから仮面のユーチューバー、ホッカイロレンを大いに褒めようと思う。が、なぜそんなに褒めるのか、理由を説明するのはいささか遠回りになりそうだ。まずは競馬と新聞の関係について述べたい。 ここでテーマにしたいのはホッカイロレンという個人ではなく、もっと大局的に書く文化と話す文化の違いである。いま書く文化から話す文化への大移行が起こっている。そこに YouTube の特性を活かした新しい視聴覚文化が生まれつつある。その可能性について述べたい。 いかにして私は札幌エル

          ホッカイロレンを大いに褒める