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【能動的三分間#6-③】史上最強の哲学入門

【能動的三分間】「史上最強の哲学入門」③です。

③神様の「真理」について

神とは何か。宗教とは何か。どのようにすれば人は幸福になれるのか。

エピクロス(B.C341〜)「快楽主義」
アレクサンドロス大王によってほとんどの国家が滅ぼされてしまった時代。「幸福」に関する考えは主に3つに大別された。
・キュニコス派:最初から何も所有していなければ奪われることはない。この状態で幸せを感じることができれば本当の幸福に到達できるはずである。
・ストア派:「ストイック」の語源となった禁欲主義。欲望に負けない強い理性があれば人は幸せになることができる。
・エピクロス派:快楽主義。「苦痛」が取り除かれた普通の状態であれば人は既に幸福である。
神など信仰しなくても人は幸せになれるという考えの萌芽。

イエス・キリスト(B.C4〜)「汝の隣人を愛せよ」
古代エジプト人に「奴隷専用民族」として捕らえられたユダヤ人。苦難に耐えるために「神を信仰し続ければ、きっと救世主が現れる」という唯一神信仰が生まれる。そんなユダヤ人の前に救世主として現れたイエス・キリスト。「汝の隣人を愛せよ」「汝の敵を愛せよ」というあまりに優しい考え故にユダヤ人達に死刑にされてしまう。死後、キリストの考えを支持する人々によってキリスト教が広まることになる。

アウグスティヌス(354〜)「懺悔」
キリスト教には様々な解釈が生まれてしまうが、それぞれの教義をまとめ上げる。人間は欲望を自制できないか弱い存在であり、神に全てを告白し許しを請うことで救われるという懺悔的教義を打ち出す。

トマス・アクィナス(1225〜)「スコラ哲学」
12世紀を過ぎた頃、古代ギリシアの哲学者アリストテレスの著作が西洋キリスト教圏に入ってくる。それにより「論理的」な思考と「超自然的」な思想の対立が起こる。「全能のパラドックス」(全能の神は、自ら全能であることをやめて、全能ではない存在になることができるか?)等の思考実験により全能なる存在が否定されてしまう。「神」の存在が一時否定されかけたものの、トマス・アクィナスは下記の理論により理性では絶対に到達できない領域があることを提唱する。
「この世界の一番最初の原因は何か(現在ではビッグバンだとされているがそれすらもその原因が何かと問われると原因が分からない)、と問われると誰も答えることができない。つまり、原因と結果という関係を超越した何かを想定せざる得ない。それが神である。」

ニーチェ(1844〜)「超人思想」
神への信仰心が根強い西洋社会において、「神は死んだ」と主張した哲学者。宗教が生まれる以前の古代においては「強いこと」が正しいことであった(=騎士的、貴族的価値観)。だが、現実世界で勝つことができなかったユダヤ人が精神世界で作り出したユダヤ教の考え(=僧侶的、道徳的価値観)が広まったことにより、古代と価値観の大逆転が起こってしまった。強いものは悪しきもの、弱いものは善いもの、というユダヤ教・キリスト教的価値観を否定し、権力、財力、腕力などを得たいと思う向上心(=力への意志)の赴くままに、強くなること目指すべきであるという超人思想を提唱した。


この章では5人の哲学者が紹介されています。神といえば宗教が密接に関係してきますが、世界最大の宗教は20億人もの信者がいるキリスト教です。そのキリスト教的道徳を真っ向から否定するニーチェの思想は過激に見えます。

本書の著者である飲茶さんはニーチェを単にキリスト教的世界を否定した人として紹介している訳ではなく現代を生きる私達が学ぶべき哲学の提唱者であると言っています。
ニーチェは著書「終末の時代」において何も目指さずにただ生きている人間のことを「末人」と呼んでおり、飲茶さんは、私達現代人がまさに「末人」となってしまっているのではないかと指摘します。

”一日を24時間として労働時間は8時間、いや、通勤や休憩の時間も入れれば、10時間くらいになるだろうか。一日のうち、それだけの時間を「別にやりたくもないこと」に費やしていることになる。・・・24時間のうち、自分の自由にできる時間なんて、おそらくほんの数時間だけであろう。・・・だが、そこに残った貴重なわずかな時間ですら、テレビ、ネット、ゲーム、動画サイト、匿名掲示板・・・に費やし、まさに時間を「潰す」のである。そんな人生に何の価値も感動もないことは、誰に言われるまでもなく、本心では気がついている。”

「幸福」に対する考え方は人それぞれです。信仰によって幸せを感じる人、何かを達成した時に幸せを感じる人、生きているだけで常に幸せな人・・・
自分にとっての「幸福」はどのようにすれば実現できるのか。考えは尽きません。


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