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ADHDの人が我慢しないでも楽に生きていける方法ーマインドフルライフ

ADHD(注意欠陥・多動性)の人は我慢が苦手です。でもわがままだから我慢ができないというわけではなくて、自分の中で起こってくる感覚のボリュームがすごく大きくて、普通の人よりも臨場感が抜群なんだと思ってください。

普通の人が花火をしているのだとしたら、ADHDの人はそのとなりで普通の人と同じ顔をして、打ち上げ花火をしています。

ADHDの方で、我慢できない自分は自己中でわがままなんだと自己嫌悪に陥っていたり、パートナーがADHDで振り回されて疲弊しているのであれば、これを読んでください。

今日はあなたにわたしの経験からシェアしたいことがあります。とりあえず我慢ができないあなたなので、結論から言いますね。我慢できない時の解決策はこの二つです。

①臨場感がやり過ごせるような工夫をする
②やってほしいことの臨場感を上げる工夫をする

わたしの元夫はADHDの典型的「我慢ができない人」でした

わたしの元夫はアスペルガー×ADHDで、IQが130以上という「頭がよくても使えない人」の典型みたいな人です。ポーランドの国立大学(国立しかないか)を首席で卒業して、MBAも持っており、6カ国語を操るマルチリンガル。卒業後はイギリスの大手製薬会社グラクソスミスクラインに入社。

と、ここまでは順調だったようですが、就職してからはボロが出まくったようで、5年間(我慢して)勤めて辞めてしまいます。離職理由が「会社の所有物をよく失くす」ことで揉めていたらしく、ノートパソコンをどこかで失くした(多分1回目じゃない)ところ、会社が弁償しろと言ってきたことがきっかけだったそうです。本人的にはかなりしんどかったから丁度いいタイミングと思って辞めたそうです。普通だったら「は?」って感じですけれど、彼の性格を知っていれば納得です。

これだけ読むとメンヘラ?隠キャなの?と思われたかもしれませんが、ADHDは注意欠陥・多動性なので、超社交的な陽キャです。いつも笑っていて(タレ目なので)、人懐っこくておしゃべり。話が面白くて、弁の立つ人です。猿のように運動神経が良く、ポーランド人なのでDIYが得意でなんでも修理してくれるし、料理も掃除も上手です。正義感が強くて浮気とか絶対ダメ!って言う堅いタイプです。

と、ここまで聞くとハイスペックの素敵な彼氏または旦那さまっぽいですよね。確かにモテてましたし、おじさんになった今でもモテていると思いますよ。でも毎日会社に行くとか、家事をするとか、子供の面倒をみるとか、奥さんと(普通に)暮らすとかいうルーティーンを維持することは無理なんです。彼の人生は、小麦粉の袋を開けようとして、思いっきりひっくり返してしまったような人生なので。

ADHDの彼は子供がいても、変な買い物をしてしまう

わたしと出会った頃の彼は自称「アナキスト」で、会社を辞めて2000年代のロンドンで流行っていたスクワッティングという空き家をアーティストたちが占拠して住むという「資本主義社会からの脱却」を目指したスタイルで生活していました(現在は法改正されてしまってできません)。

また、石油系燃料を使うことにも反対して、子供が生まれるまで車もバイクも一切持たず、移動手段は自転車と公共交通機関のみ。仕事は自転車が好きなので会社間の書類を届けるメッセンジャーをしていました。学歴が勿体無いようですが、多動の彼にとっては良い仕事だったようです。

子供ができた時は、当時タイに移住したてで無職なのに「家族で乗るから」という理由でHONDAのCBRという大型バイクを購入。意味不明ですよね。アナキストはどこ行ったんですか?そんなことより、そんなバイクに赤ちゃんなんか乗せません。結局「もう僕はバイクを買ってお金がないから」と言って、出産費用も全てわたし持ちになってしまいました。

いつもこんなだから、当然家計は切迫してきます。なんでこんな風になっちゃうのかな?って最初は本気で悩んでいました。ポーランドの人ってすごく質素で、外食もパーティーなどの理由がない限り「無意味」という持論を持っていて、服も物もボロボロになるまで使うし、決して浪費家ではありません。悪気がないので口論にもならないというか、口論すると、IQがなまじ高いのでありえない理論で論破されてしまうので、不可解で余計疲弊していました。

その後も突然車を購入して、子供の学費は払えないと言われたり、頭がいいはずなのに計算できないのかなあ?と首をかしげることばかり。わたしもわたしで割と弁が立つ方なので、何かあるごとに彼がうつむいてしゅんとしてしまうまで説教してしまい、夫婦関係は悪化する一方。被害者意識と罪悪感という矛盾に苛まれる日々でした。

ADHDの人に我慢してほしい時は、とにかく別のことで気を逸らすのが効果的

初めの頃は何も知らずに、彼が買い物をしようとすると「あなたがそうしたいんだったらいいんじゃないの?」と同意していましたが、しばらく経っておかしいことに気づいてからは、「これほしいな〜」と言出だしたら、わざと気を逸らすことができるように遠出したり、用事を頼んだりするようになりました。

それは、別のことで気を逸らしてしまえばさっきまでの興奮が嘘みたいにどっかに行ってしまうということを何度も見てきたからです。たとえばあと一ヶ月待ったらこの型のパソコンは値段が下がるとか、そういうことであってもADHDの人は「イマココ」で使いたいから、すぐ買いたがるんです。一応言っておきますが、今ここを常に生きてるっぽいですけれど、マインドフルじゃないですからね。

そんな時は「週末みんなで自転車で遠出したい」とか彼が好きそうなことを言って、わざと何かを持ちかけるようにしました。すると興奮してルートとか細かく調べて、自転車のメンテナンスをし始め、結局自転車のメンテナンスに夢中になります。そうしてるうちに、パソコンのことはどうでも良くなる。でも面白いのが、一ヶ月後に「あなたが欲しがってたやつ、安くなってるよ!」と知らせても、「そうだっけ?」みたいな顔できょとんとして生返事をして、「別にもう買わなくていいよ」と言います。

ADHDの人に何かお願いしたい時は、優先順位が最上位になるような言い方が効果的

ADHDの人って、「あれやってみたい」って思った時のエネルギーが凄まじいんです。家の壁のペンキを一晩で塗って徹夜でクタクタになったりして、何も夜中に寝ずにやらなくてもいいのに、と言うようなことが度々ありました。

彼が車で長距離運転をしている時も、わたしが「トイレに行きたい」と言ってもなかなか止まってくれません。なぜなら目的地に着くということが彼の中で最優先事項になっているからです。そんな時はちょっと大げさに「もう漏れそう!」とこちらも臨場感を出して訴えて、優先順位を無理やり上げる以外に走り続ける彼を止める方法はありません。

ADHDの人に何かお願いする時は、本人の中で優先順位が上がるように、多少大げさにお願いしてみてください。そしたらすぐに対応してくれます。

ADHDの人は向いてないことはしなくてもいい。結婚もしかり。

そんなこんなで結局、家事も育児もワンオペで、度重なる突然の一文無し状態に疲弊して、わたしたちは一年別居し、最終的には5年間の結婚生活に終止符を打つことになりました。

一緒にいるとどうしても疲れてしまうので、まずは別居してみたのですが、離れていると離れているでビザが切れてたり、パスポートの期限が切れてたりとか一人で色々と「ありえないやらかし」が発覚することも多く、結局尻拭いをするのはわたし。元共産主義国で育った彼にはどうも「ボロは家族が何とかしてくれる」と言う共同責任感覚の甘えがあったみたいで、離れていてもヒヤヒヤする生活に疲れてしまいました。そして一年後、結局自分で何とかするという臨場感を上げるために離婚することにしました。

離婚するときも「あなたは結婚に向いてないからね、向いてないことを無理にしなくてもいいのよ」と言って説得すると、「僕は法律になんか縛られることない自由な男なんだ!」とペンを掲げてからサインしました。フツーの奥さんからしたら笑えないシーンでしょうが、わたしは笑ってしまいました。しかも爆笑。わたしたちは喧嘩は未だにしますけれど、険悪な仲ではありませんでしたから。

余談ですが、実は彼はポーランドでの婚姻届を用意していたにもかかわらず、渡航中に書類を紛失して出していなかったらしく、ポーランドではわたしたちの結婚は成立していないことになっていました(笑)

現在シングル・ペアレントですが、お互い生活が楽になりました。

現在も彼は気が向いたら時々やってきます。この気が向いたらというところが重要なポイントで、毎月〇〇とか週末は〇〇とか決めてしまったら上手く行きません。これが全ての人に有効かというと、責任放棄する人もいるだろうし、そうではないので見出しのタイトルにはしませんでした。でも元夫の場合は真面目で子煩悩なので、気が向いたらの頻度がかなり頻繁です。なぜなら「子供」の優先順位が彼の中で上位を占めているからです。

週に一度ほど息子に電話してきます。今はわたしが引っ越してしまって、別の街に住んでいるので会いに来るのは数ヶ月に一度ですが、しょっちゅう来ます。外出規制がなければ「もう来なくていいよ」と思うくらい来るので、タイはロックダウンで丁度いいくらいです。

一方私たちの息子は彼と真反対で通称「ジャパニーズ・トレイン」(日本の電車)と言われているほどルーティーンが大好きな性格(この人もこだわりが強くて自閉症スペクトラムの疑いがあると診断されています)で、「パパはちゃんと連絡する日時を決めてほしい」と言います。でもわたしが息子の何やかんやルーティーン化を尊重しているように、パパの性格を尊重するようお願いしています。(時々わたしも呆れたり、キレたりするけど)

過去のことなので笑い話にしか聞こえませんが、当事者にとっては過酷な結婚生活でした。元夫はアスペルガーなので時々この話をすると、夫の無茶ぶりに疲弊して抑うつ状態に陥る「カサンドラ症候群」にならなかったのですか?と聞かれます。はい、なりました。ならなかったら離婚していないと思います。離婚はわたしたちがお互いを大切にするための最善の選択だったんです。でもその話はまた次の機会に。


いただいたサポートは、博士課程への学費・研究費として、または息子の学費として使わせていただいています。みなさんのサポートで、より安心して研究や子育てに打ち込むことができます。ありがとうございます。