作り変わる青。
あの頃の原風景のような場所に仕事の移動で通りかかった。
バスの一番後ろの席に座って、あの頃と少しも差異のない心の私がいた。
大切なものは日々のあれこれで簡単に後回しになってしまう。
変わってしまうのは仕方がないことだから、
あの頃と同じ熱量でいられない自分を後ろめたく感じている言い訳のように。
変化、変化、変化する。
でも今日、原風景のような車窓の外の景色を目にした途端、耳の奥で音楽が鳴った。
感傷的なギターのリフから始まるその音楽。
一音一音をなぞるように、滑らかに音が滑り込んでくる。
懐かしい、という感覚じゃない。
〝あの頃〟そのものだった。
忘れていたわけじゃない。
それはいつも心の片隅にあって、本当に私が望んでいたもの。
失くすはずのない魂の結びつき。
本当に大切なものへ、大切なあまりどうやって手を伸ばしたらいいのかずっと分からなくなっていた。
彼の歌う音楽。
もうずっと耳にしていなかったのに、原風景に触れた途端その歌詞を昨日のことのようになぞっていた。
こういう出来事はもう何度目なんだろう。
捨てることも忘れることもない。
時間は止まらないけれど、あの頃の特別な時間を私は確かに過ごした。
私にははっきりと2つの世界があった。
それが〝ある〟世界と〝ない〟世界。
ある世界は心が豊かで
ない世界は毎日が忙しない。
片方しか選べないわけじゃないけど、体が一つしかないからなかなかもどかしい。
でも、原風景の中へ足を踏み入れることが
手を伸ばすことだと思った。
正しい孤独と、あたたかな感傷を教えてくれた音楽。
幾度心が作り変わっても、揺るぎのないもの。
今日は人生で一番といってもいいほど過酷な仕事だった。あまりにも疲れ過ぎて、余計な感覚が働かなくなったのかもしれない。
今日のような日に、原風景に触れられたことを愛おしく思った。
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