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マ・ドンソクの鉄拳RPG『無双の鉄拳』

※jason rodmanで連載していた記事のアーカイブになります

年末年始といえば、やはり外道が殴られる映画が観たい‼
そんな人に是非オススメしたいのが韓国映画『無双の鉄拳』だ。

かつて最強の喧嘩屋として名を馳せたドンチョル。
牛すらも素手で屠り、『雄牛』とアダ名されたのも過去の話だ。
今では美人な奥さんの為に足を洗い、魚市場で舎弟と一緒にカタギとして働いていた。

とはいえ今の仕事じゃ中々楽はさせられない。
一発逆転を狙って怪しい投資に手を出してみるも失敗を重ねる、実に冴えない日々を送っていた。
いつしか頭を下げるのがクセになっていたドンチョルであったが、ある日愛する奥さんが何者かに拉致されてしまう。
更には一方的に身代金を支払われ「この金で嫁さん買ったから。そこんとこヨロシク」と実に舐めた態度を取られてしまうのだった。
果たして相手は美人ばっかを拉致する人身売買組織なのが判明する。
これに頭を下げるのは男じゃない。
遂に過去の自分を解き放つ決意をするドンチョル。
今、大切な人を奪還すべく『キレたら誰も止められない』怒りの大逆襲が始まるのであった。

「女房が誘拐された!

よし!全員殴ろう!」

と元喧嘩屋が荒ぶる本作。
キャッチコピーは

「死にたい奴からかかってこい」


実に威勢がいい。
主演は、ご存じマ・ドンソク。
この人がいれば何とかなるだろう!という安心感は本作でも健在だ。
屈強なガタイ剛腕のみで人身売買組織に真っ向から喧嘩を売る、いわば彼しかできないであろう役柄を好演している。
いわば『舐めてたマ・ドンソクが、やっぱりマ・ドンソクだった』とでもいうべき横綱相撲を悪党相手に披露。
韓国裏社会モノといえば陰鬱な展開になりがちだが、ドンソクのフラグクラッシャーぶりに目を見張ってしまうだろう。
なにせ相手はド外道の人身売買組織だ。

どんなに殴っても文句は言われない!


…という訳で、机パワーボム、 目覚まし張り手、暴力壁ドン、 天井人間ミサイルなど、話が進むにつれ披露するステゴロ・テクニックもエスカレート!
「押してダメなら殴ってみろ 」という、鉄拳RPGの様相を呈していく。
アクション映画と言えば主人公・脇役問わず華麗な連撃や手数の多い攻防を描くのが定石だが、本作におけるドンソクの一撃一撃は重い。
一瞬劣勢になってもパンチ一発で事態を逆転する剛腕ぶりは必見だ。


そんなアクションを披露するまでの『溜め』の前半も勿論見逃せない。
高級レストランで誕生日を祝うために自前のデカいカニを振る舞う、誕生日ケーキを準備するもキレた嫁さんに放置プレイを食らう、投げつけられた金を拾うなど、芋を引きまくる。
ガタイとは裏腹に、うだつの上がらない恐妻家として尻に敷かれっぱなしの亭主演技は必見だ。
とぼけた愛嬌があるからこそ成立したであろう、この人間臭い演技。
スタローンへのリスペクトを語るドンソクだが、 どこかロッキーっぽさが伺える。
だが、嫁さんが拉致されてからは一転。
徐々に目が座っていき、気軽にマブリーと呼べない修羅の表情を浮かべる。
これも前半のドジな日常パートがあってこそ成立する迫力だ。

世界や宇宙レベルの危機で人を救う映画ばかりだと、見てるコチラも食傷気味になってしまう。
そんな時ほど町内会レベルの危機で人を救う話のがグッとくる人もいるのではないだろうか。
本作を見た後、かつて八代亜紀が「酒はぬるめの燗がいい。肴は炙ったイカでいい。」と歌った気持ちが少し分かった気がするのだった。
ともあれ話の規模は町内会レベルかもしれんが、理屈や道理を体固めでねじ伏せるド迫力のアクションが観れる本作。
『力こそパワー』という支離滅裂な言葉が思わず頭の中に浮かぶ映画ですよ。


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