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文字 × 蝶 [空想惑星探査記2日目]

私の名前は、イマミ・テルージャン。
宇宙冒険家だ。

現在、未知の惑星にて、絶賛遭難中。

だが、幸い水も食糧も十分に残っているため、せっかくなので、この惑星を気ままに散歩してみることにした。

これは、私が未知の星を気の向くままに冒険した記録である。

2日目

この星の生き物は、私の母星の生き物とよく似ている。

今日は、私の星で「蝶」と呼ばれている生き物に類似した生物に出会った。

だが、私の知る蝶と比べると、かなりサイズが大きい。

ちょうど持ってきていた文庫本と比較すると、大体同じくらいの大きさだろう。

近付いて確認してみると、羽の部分に文字の羅列のような模様を発見した。
模様は、左右の羽で非対称になっている。
私には読めないが……何か、意味のある文字列なのだろうか?

警戒させない うに離れたところか 観察してい のだが、しばらくすると、蝶のほうから私に近づ てきた。
羽を休め かのように、私の日記帳の上 着地する。
サイズの割に、ほと ど重さは感じない。

近くで観察 きるのはむしろ好都合だ、と暢気に考えて たのだが……。

なんという とだ!
蝶が止まっていたところから、日記帳の文字が消えていくではないか!

私は、慌てて蝶を振り払った。
せっかくの記録を消されては困る。

再び蝶を見ると、日記帳から消えた文字が、蝶の羽に模様として刻まれているのが観察できた。

なるほど……あの羽の模様は、こういうことだったのか。

おそらく、あの蝶は、何らかの方法で外部から「文字」を吸収できるのだろう。
そして、吸収した文字は模様として羽に残る。
とても興味深い習性だ。

何故そんなことをするのか、謎は残るが……もしかすると、彼らにとって「文字」は栄養源なのかもしれない。

だとすれば、この星の「文字」に該当するものは、彼らに吸い尽くされてしまっているのだろうか?

……想像に過ぎないが。

日記帳の消された文字は、書き直すこともできるが……せっかくの経験だ。
このままにしておこう。

私はあの蝶を『字吸蝶(ジスイチョウ)』と名付け、今日は眠ることにした。

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