幻 × メガネ[空想惑星探査記6日目]
私の名前は、イマミ・テルージャン。
宇宙冒険家だ。
現在、未知の惑星にて、絶賛遭難中。
だが、幸い水も食糧も十分に残っているため、せっかくなので、この惑星を気ままに散歩してみることにした。
これは、私が未知の星を気の向くままに冒険した記録である。
6日目
今日は、朝に起きたときから、視界の端に何かがチラついていた。
簡単に言ってしまえば、「メガネ」だ。
メガネとは、私の星で使用されている、視力を補うための道具だが……そのメガネが、チラチラ視界に入り込むのだ。
もっと言えば、メガネと「視線」がセット。
ふと気付けば、メガネの奥からじーっと見られているような視線を感じている。
「何か、見られてる」というやつだ。
歯を磨いていても、食事をしていても、散歩をしていても……ずーっと、メガネと視線の気配を感じるのだ。
奇妙なのはそれだけじゃない。
私がそちらに反応しようとすると、メガネと視線は消えてしまう。
どこかへ隠れてしまうのだ。
幻覚を見るほど弱っていないつもりだが……この星特有の現象か何かなのだろうか。
さすがに一日中視線を感じていると、私も気になってくる。
それに、あのメガネが何なのか……じっくり観察してみたいという欲求が湧いてきた。
そこで私は、あのメガネに接触してみることにした。
見たら消えてしまうのであれば、見ずに近づけばいい。
夜、宇宙船で再び視線を感じた私は、そちらに目を向けないようにしながら、じわじわと歩み寄っていった。
後ろ歩きで、ゆっくりと。
変則的なルールの「だるまさんが転んだ」で、遊んでいるかのようだ。
そして、メガネがあると思しきところまで来た。
気配は、もうすぐそこにある。
おそるおそる手を伸ばすと……
「!$%%'」
何か声が聞こえて、そして——気配は消えてしまった。
その後、視線を感じることはなくなったのだが……あれは、もしかすると、シャイな性格の生き物だったのかもしれない。
明らかに意思があったし、こちらへ強い興味を持っている雰囲気があった。
現象と呼べるほど、無機質なものではない。
遊びたいけど声はかけられない——そんな、恥ずかしがり屋な生き物だったりするのだろうか。
少なくとも、今の私はそう感じている。
ちょっと可愛いヤツじゃないか。
少しほっこりした私は、あの恥ずかしがり屋な生き物を『照れ眼鏡(テレメガネ)』と名付け、今日は眠ることにした。
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