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303 政倫審


はじめに

自民党の裏金問題についてこれまでも岸田総理は、国会をはじめ多くの場で野党の質問に応じて答えていますが、政治倫理審査会、略して政倫審の場で説明することを表明しました。
大変に異例なことで、自民党総裁として現職の内閣総理大臣がこの場で釈明と説明をするなどということは日本の政治史上初めてのことです。
因みに政治倫理審査会は、政治倫理の確立のため、議員が「行為規範」その他の法令の規定に著しく違反し、政治的道義的に責任があると認めるかどうかについて審査し、適当な勧告を行う機関です。この機関は、国会法に基づいています。昭和60年から設置されています。
今日の教育コラムでは、賛否両論ありますが岸田首相自らが出席することを判断したことについて少しお話してみたいと思います。

経緯と仕組み

政治倫理審査会は、一言で言えば国会議員のとった行動や発言に対して、政治的責任を審査する制度です。こうした政治的な責任を追及する必要が大きく生じた事件がありました。それが、伝説の総理、コンピューター付きブルトーザーの異名で有名な故田中角栄元総理が関与したとされている、ロッキード事件です。この事件を機に1985年に衆参両院に設置されました。
この事件は、政界を揺るがす大汚職事件として扱われました。
因みに政倫審を開催するには政倫審委員の3分の1以上が申し立てて過半数の議決を得るか、審査対象の議員が自ら申し出る必要があります。原則は非公開で国会での証人喚問のような強制力もなく、審査される議員自らが出席するかも判断できるといったかなり緩い決まりになっています。

首相登場

政倫審のこれまでの開催は、衆議院では9回開催されています。基本的には本人の申し入れで行われることが大半です。2004年の自民党の平成研究会による日本歯科医師連盟からの1億円ヤミ献金事件では、橋本龍太郎元首相が出席して釈明をしました。この時も政治資金収支報告書への不記載でした。国民は、記載できないお金を受け取っていたのではないかという観点で、政治不信を抱きました。ある意味、今日の自民党問題と共通する点があるわけです。橋本元首相は、この時の政倫審で不記載であったこと、不記載のお金であるということについて「全く存じ上げない」と関与を否定しました。また、派閥の代表として政治道義に反していることや政治資金の透明化に配慮が足らなかったことを国民に詫びました。
唯一、自ら出席を申し出なかった上、出席要請に対して欠席した議員がいます。それが、当時民主党の議員であった鳩山由紀夫代表です。この時も政治と金の問題でした。鳩山氏は偽装献金問題について自ら説明する機会を失い、国民の信頼を回復することはできませんでした。そして、かれこれ15年ぶりの今回の開催というわけです。今回は、初の現職の総理の出席ということもありますし、国民の注目も大変集まっています。

賛否の賛の立場から

私は、自民党の裏金キックバックの問題は、脱税にもつながる重大な問題であり、企業献金をもらい続けてきた自民党の政治体質についても大きな問題意識をもっています。
自民党内の多くの議員が関与している今回の問題ですが、検察は不記載の政治資金の金額で線引きしていますが、金額の大小にとらわれることなく見れば、この問題に関わる議員は100名近くいるとも言われています。
ここまで自民党の様々な派閥で政治資金をめぐる問題が明らかになったわけですから、誰かごく一部の人だけに説明させるのではなく総裁自らが弁明と反省を述べることは一つの責任の取り方ではないかと思います。
しかも、メディアにも完全公開という条件ですから、岸田首相のリーダーシップと政治改革への意識の在りようを我々は確認できるというわけです。派閥を解体したはずなのに、派閥の足並みを意識して政倫審への出席を拒んでいる議員や後ろめたさが明らかになることを懸念し、非公開にこだわる議員などに対して、自らの姿で何かを示そうとしている総理に、私個人としては、肯定的な立場で感情移入してしまいます。
この後、中継を見てみないとその真意はわかりませんが今日予定されている歴史的なシーンは、多くの子どもたちにも問題やトラブルなどと向き合うときにどのような姿勢で向き合うべきなのかを良くも悪くも示すことになるのだと思います。

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