見出し画像

222 富士山登山鉄道の賛否


はじめに

皆さんは、富士山に登山鉄道を設置しようとする計画があることをご存じでしょうか。先日、12月6日に、富士山登山鉄道構想に対するアンケートの中間報告を富士吉田市が公開しました。
11月末時点で約12,000人が回答しました。その内、鉄道建設に反対が約6割賛成が約4割という結果でした。因みに、富士山のおひざ元である富士吉田市民は1200人が回答していて、反対が約8割、賛成が約2割という結果になりました。
今日の教育コラムでは、山梨のシンボルでもあり、日本の象徴的な存在でもある富士山への登山鉄道の建設について今日は少しお話してみたいと思います。

アンケート結果の特徴

中間報告ではありますが、今回のアンケートの結果には2つ特徴がありま
す。
1つ目が、回答者全体のうち、この構想を知らない人が約5割ほどいたということです。知らなかった人の賛否は、双方とも5割でした。
2つ目が知っていた人約5割のうちでは、反対が約7割で賛成が約3割という大差が出ている点です。富士登山鉄道の建設に関心があるまたは、知っているということは、きっと富士登山の経験者または、富士山周辺でのレジャーなどをしたことがある人なのかもしれません。
富士山との関りがある人は反対傾向が強く、無い人はどちらでもよいと考えていることがこのことからわかります。つまり、登山鉄道という方法では登山者数の規制や環境に配慮した富士登山の運営は難しいということを自身の体験を根拠に感じている人が多いともいえるのです。

富士山の登山鉄道の構想とは

今回の登山鉄道構想とはどのようなものなのでしょうか。結ぶ区間は、富士山の麓から、5合目までです。この区間に次世代型路面電車(LRT)を走らせる計画を進めているのが山梨県知事です。
この構想は、登山者数を抑えるだけではなく、車の排ガスによる環境破壊や大量の車が駐車することによる景観の問題といった富士登山によって生じる近年の様々な問題の解決策として立てられたものです。
これに対して、様々な反対意見が出ています。例えば、山梨県や静岡県の神社などの関係者からは信仰の対象である富士山にそうした鉄道建設を施すことに抵抗感があるという意見が出されています。また、富士吉田市の市長は、LRT整備が信仰の山である富士山を傷つけることを指摘しつつ、排ガス量も少ない電気バスの使用という代替案を提案しています。
また、富士登山の経験者からは、弾丸登山や登山者の飽和状態を解消するために、登山者数を制限する方法として富士スバルラインの規制やシャトルバスによる移動制限を設ければよいのではないかという意見も出されています。実際、私も上高地に行ったときは、自家用車の乗り入れ規制がありシャトルバスで移動しましたが、現地の景色や空気がとてもすがすがしかったことを覚えています。

高額な鉄道利用料

山梨県知事によれば、LRTの乗車料金を往復1万円とする考えがあるそうです。知事は「1万円払ってでも行きたいと思う場所を作りたい」とも述べています。こうした発言は、富士山は「作るもの」ではなく「守るもの」であるとという立場の人々にとってはむなしい一言なのかもしれません。
文化遺産として信仰の対象として山梨の産業や文化を豊かにしてきた富士山を山梨県民はその代表者としてどのように後世に伝えていくのかを今問われているようにも思います。
また、富士山は過去に何度も噴火を繰り返した活火山です。移動の自由度の低い鉄道と自由度の高い電気バスではどちらが不測の事態に即しているのかも考慮に入れてほしいとも思います。

変化するものに対して

大切な物が変化しようとする時、知らぬ間に変化を受け入れていることほど大きな後悔を生み出すものはありません。私たちが、富士山鉄道についてどれくらい自分の考えをもっているかは、富士山への愛情に比例するのかもしれません。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?