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この気持ちを「放送作家の焦れんま」と名付けよう。

〝ジレンマ〟という言葉があります。

あなたにもあるでしょう? 

なにかを優先すると、なにかが犠牲になる。
どちらを選ぶか、とても悩ましい。

そんな状態に陥ることが。

「ヤマアラシのジレンマって知ってる?」
「相手にぬくもりを伝えたくても、身を寄せれば寄せるほどトゲで傷つけあってしまう」

『新世紀エヴァンゲリオン』第参話「鳴らない、電話」

もちろん、僕にもあります。

今日は仕事でよく陥る〝放送作家としてのジレンマ〟について。

僕の〝ジレンマ〟とはどんなものか。

それを語る前に、僕が毎週どういう流れで仕事しているか説明させてください。

大体、こんな感じ。

<企画準備>
ネタ出しとネタ選び。さらに、通ったネタについては取材などに向けて、どのような切り口で描いていくか相談していきます。

<原稿チェック>
素材が出揃ったところで、構成作業に入ります。ほとんどの場合、ディレクターが第一稿を書いてくるので、そこに対して意見していきます。

<映像チェック>
今度は映像化されたものに意見していきます。放送作家が〝最初の視聴者〟になる瞬間です。チェックは何度も行い、完成度を高めていきます。

<仕上げ>
責任者にもチェックしてもらい、最終調整へ。テロップ、ナレーションの表現を精査し、オンエアを迎えます。

さて――。

今回、僕が訴えたい〝ジレンマ〟は、主に<企画準備>から<原稿チェック>にかけての段階で生じるものです。

例えば、とある人物の取材が決まったとします。

僕たちはどんなテーマなら独自性が出るか、取材対象の個性を引き出せそうか、切り口や仕掛けを考えるわけです。

そして、手元にある情報と自分たちの経験・知識を総動員して、撮れ高を想定。ディレクターはそれをもとに取材へと臨みます。

さあ、問題はこのあとです。

ディレクターが第一稿を書いてきます。それを読むと「ん?」となる場合があるんです。予め話し合った方向には沿っている。でも、おもしろくない。

どうしてか。

そこに書いてあるのが、単なる〝予定調和〟だからです。

これは、事前の想定に縛られる・・・・ことで起こる現象。撮影していても、原稿を書いていても、取材対象が想定通りに振る舞うかどうかばかり気にしてしまう。なんなら、当てはめようと誘導してしまう。

結果、現場でしかわからない〝本質と真実〟を見逃してしまう。

ディレクターは「言われた通りに撮れました」なんて誇るけど、違うんだなあ……。僕は裏切られたいんですよ。

こう考えてみてください。

例えば、見知らぬ土地への観光旅行。

どんな名所があって、どんな順番で巡ったらいいのか、まずは事前に調べますよね? で、スケジュールを組んで当日を迎えると。そして、現地へ到着。

さあ、ここで大切なのは、スケジュールとにらめっこして予定を消化することか、それとも足を止めて風景や出会いを楽しむことか。

土産話として聞きたいのは、どちらですか?って。

悩ましいのは<企画準備>の段階で、どこまで固めるか。

ふんわりに留めたら、
広く浅くとりとめのないものしか撮れないかもしれない。
とはいえ――、
カッチリさせたら〝予定調和〟に導いてしまうかもしれない。

これこそ、僕の〝ジレンマ〟です。

匙加減は、現場を仕切るディレクターの力量・気質によって変わってくる。

あーーーーーッ、焦れったい!
〝ジレンマ〟ならぬ〝焦れんま〟

最近は「当てはめるのをやめましょう」と言って、念を押すようにしています笑

明日になったら、またそんな1週間が始まるなあ。

ちなみに、事前の想定がハマることでおもしろくなる場合もあります。

そこもまた、難しいところなんです……😞

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