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猪瀬直樹著『太陽の男 石原慎太郎伝』評。

 2022年2月1日。昭和を代表する伝説が逝去した。石原慎太郎。まさに「巨星墜つ」てある。本著で注目しなければならないのは、石原慎太郎と同じ作家であり、東京都知事と副知事としてタッグを組み、都政を推進してきた猪瀬直樹氏が、身近で数年接してきた立場で石原慎太郎伝を書いたことであろう。やはり若い世代には政治家のイメージが強いだろうが、石原の原点は作家であり、本著のテーマである「価値紊乱者」として三島由紀夫から激励され世に出ることになる。そして、商業的処女作である『太陽の季節』から芥川賞は有名になり、小説の副産物として映画化されて、弟石原裕次郎がデビューするのである。著者は歴史的背景を加味しながらも、昭和、平成、令和と3つの時代を掻き乱した男の一代記を詳細な筆致で書き上げている。典子夫人との出会いは運命を感じさせる箇所で、馴れ初めを初めて知る読者も多いのではないだろうか。
 そして、この作品には更に2人の主人公がいる。三島由紀夫と石原裕次郎である。この2人も、ある意味価値紊乱者であり、昭和を掻き乱した人物であり、その過程を楽しむのもありであろう。
 私個人として推奨したいのは、猪瀬氏は文学評伝を数多く書いているが、本著の隣に置きながら読み進めて頂きたいのは、三島由紀夫について書いた『ペルソナ』である。2冊、時代を合わせながら読むと、石原慎太郎、三島由紀夫との関連性が重層的に把握できる。そして、三島由紀夫研究に新しい光を照らす名著が令和の、虚無な時代に生まれたことを素直に私は喜びたい。

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