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"どんな感情だって膨らんだら痛い"

江國香織「きらきらひかる」読了しました。

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恐らく50回目くらいの読了です。

この物語には笑子(しょうこ)と睦月(むつき)と紺(こん)という三人の主人公がいるのですが、わたしは紺くんがとても好きです。
ずるくて、しなやかで、優しくて。
彼は睦月の恋人で、睦月曰く「紺の背中は背骨がまっすぐで、コーラの匂いがする」ということらしく、わたしは今のところ男性の恋人を作ったことがないし、抱きあったこともないので背中からコーラの匂いがすることは実感としては理解しにくいのですが、男の子の匂いそのものは知っているつもりなので、なんだか胸がしわしわになります。ほんとうに好きじゃないと出てこない言葉だと思うし、正直で嘘をつけない睦月のことも好きだなぁ、と思います。

「きらきらひかる」を読んだことのない人に説明しておくと、笑子と睦月は新婚夫婦で、睦月と紺は昔からの恋人です。睦月はゲイなので笑子を抱くことはできません。
誠実、友情、愛情、さまざまな感情が絡まって三人の心は激しく揺れ動いていきます。

さっきたまたま聴いていたSHE IS SUMMERの「CALL ME IN YOUR SUMMER」という曲にこんなフレーズがありました。

"どんな感情だって 膨らんだら痛い"

適当に当たり障りのないことを言って自分の気持ちが溢れないようにセーブしていれば楽だったかもしれないのに、それができないから感情が身体より大きくどんどん膨らんでいってしまう。
いい歌詞ですよね。好き。

『まっすぐな眼差しは、いつも私を悲しくさせる。あの善良な目つきでみつめられると、私はどうしたって目をそらしてしまうのだ。』(笑子)
『笑子がいつもあんまりまっすぐなので、僕は不安になってつい目をそらしてしまうのだ。そんな風に愛される価値があるのかどうか、すっかり自信がなくなってしまう。』(睦月)

笑子と睦月はお互いのことを「まっすぐ」と思っているからこそ自信がなくなってつい目をそらしてしまいます。物語が進むにつれて二人の感情はどんどん膨らんでいきます。
わたしはこのひとたちが愛しくて堪りません。もしもまた恋愛することがあったらこんな風にやりたい。わたしも恐らく過去に似たような経験をしたのでしょうが、もうずいぶんと時間が経ちました。

"本気でやると後悔しない"と友達も言っていました。
人間みんな師匠ですね。
人間嫌いだけど。好きだけど。


#江國香織  さん
#きらきらひかる
#SHEISSUMMER
#恋愛
#エッセイ


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