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多飲多尿 -フードと手作りの子の「尿」の違い-

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「こんなに薄いオシッコを大量にするなんて、多飲多尿ではないか?」


これは実際によくある出来事ですが、手作り食を食べている子の尿を初めて見て、ドライフードを与えている飼い主さんはこう心配することがあります。

十分な塩分量の手作り食を食べている子の尿は、ドライフードを食べている子の尿と比べ、想像以上に「薄く多い」です。

そのため、よく勘違いされることがあります。
これは単におしっこが薄くて多いのです。

そもそも前提として、尿の濃度(尿比重)や尿量は、水分量や塩分量などの「食事の内容」に大きく左右されます。

そして、
・(適切な)手作り食を食べている子
→尿の濃度が薄く(尿比重が低い)、尿量が多い
・ドライフードを食べている子
→尿の濃度が濃く(尿比重が高い)、尿量は少ない
です。

また、フードを食べている子の尿の濃度(尿比重)や尿量が基準、なのではありません。

よって、「手作りの子はフードの子より尿が薄く尿量が多いから多飲多尿だ」といった評価にはならないということです。

むしろ私からすると、ドライフードを常食している子の尿が、「異常に濃すぎる」ことが普通としている風潮に疑問を感じます。

極端に濃い尿を排泄し続けるような食事内容は、腎臓に着実に負担をかけます。


〈おしっこが薄く多いことと、多飲多尿は違う〉

多飲多尿は、病気のサインとなることがあります。

特徴として、尿の濃度(尿比重)が低下し尿量が増えます。

多飲多尿かの判断は、ドライフード/手作り食のどちらであっても、「普段」より
・尿の濃度(尿比重)が薄くなっているか
・尿量が多くなっているか

を確認する必要があります。

一般的には、ドライフードを与えられている子がいつもと変わらない食事をしているのにもかかわらず、濃いはずの尿が薄くなってきたりすると、多飲多尿を疑います。


〈まず、多飲多尿とは〉

多量に水を飲んで、多量に尿を排泄することです。
多飲多尿は、「多尿多渇」と同様に使われます。

・多尿がゆえに、多飲(多渇)になるのか
・多飲(多渇)がゆえに、多尿になるのか

たまごが先か/ヒヨコが先かという考えで言うと、(病態によりますが)「多尿多渇」の方が私はしっくりきます。

ですが、多飲多尿としてお話していきます。


〈多飲多尿を起こす原因について 大別〉

ホルモン関係の異常には、
A.糖尿病
B.副腎皮質機能亢進症・低下症
C.甲状腺機能亢進症
など。

腎臓や肝臓の不調に関連して起こるものには、
E.慢性腎不全
F.肝不全
など。

その他には、
G.子宮蓄膿症による多飲多尿
E.心因性多飲(ホルモン異常に分類)
など、様々なものがあります。


〈多飲多尿になる流れ〉

機序として以下の理由により多尿になり、大量に失った水分を補うべく、たくさんの水を飲みます。

[糖尿病]
糸球体で濾過された濾過液(原尿)中のブドウ糖により、原尿の浸透圧が上がる。
浸透圧性に水分が引っぱられ、尿細管での水分の再吸収が不十分(浸透圧利尿)になる。

※体重減少や食欲増減は、ご家族が最初に気付く事が多いです。
同じくらい、多飲多尿を主訴として来院、診断に至る事も多いです。

[慢性腎臓病]
同じく尿細管において水分を再吸収できない疾患。

[副腎皮質機能亢進症]
副腎はホルモンの分泌をしています。
種々の原因により副腎の機能が亢進する、つまりストレスホルモンが多量に分泌されると尿が増えます。
(尿を減らすホルモン“抗利尿ホルモン:バソプレシン”が抑えられることを経て)


〈病気のサインとしての「多飲多尿」を見極めるためには〉

多飲多尿を判断する数値的基準は、もちろんあります。

しかし、ドライフードを与えている場合でも、

・シニア用のドライフード(低ナトリウム傾向)を給与
・尿石用(ストルバイト溶解)療法食(高ナトリウム傾向)を給与

のそれぞれで、尿の濃度(尿比重)も尿量も全く異なります。

ストルバイト溶解の尿石用療法食を給与することで、多飲多尿の状態になります。

これは尿石症の治療のため、はかってそのようになっています。

多飲多尿の病態を起こす疾患のサインではなく、治療のための設計による想定内の多飲多尿ということになります。

ただ、多飲多尿の目安としての数値基準を無視しろと言いたい訳ではなく、
基準値をこえるようであれば、適宜動物病院を受診する必要があります。

減塩のドライフードを食べていれば、基準に引っ掛かるまでに時間がかかる事もあります。

逆に、手作りご飯で塩分を十分に与えていれば、基準値を超えていても病気ではない事もあり、

『変化に着目』しておく必要があります。


〈ここからが重要 手作りごはんの方へ〉

尿の量はさきほども述べた通り、「食事内容」により全く異なります。

①減塩を売りにしてるドライフード
→少量のとても濃い尿(=尿比重が高い)。
砂漠出身の猫は、尿濃縮能力自体は高いので少量の水分でも生きながらえる事は可能です。
ただし、これは着実に腎臓に負担をかけます。

②尿石用(ストルバイト溶解)療法食ドライフード(特にR社)
→大量の薄い尿をします。
ドライフードの中ではトップクラスに尿が薄い(=尿比重が低い)。

③塩分を十分加えたつゆだく手作りご飯、スープ添え
→大量の薄い尿。(=尿比重が低い)。

尿の濃度(尿比重)でいうと、①→②→③で低くなります。

そして、手作りご飯の③は、病気ではなくても通常に起こります。

これが、この食事内容のときの尿の状態なのです。


〈多飲多尿の評価〉

尿の量・尿の濃度(尿比重)の評価は、『数値』的なものだけでするのではありません。

普段と比べて、
・尿量が増えたか
・尿の濃度(尿比重)が下がったか
の評価が必要です。

「普段」からの「変化」を目安にモニターしましょう。

尿の量に関しては、多頭飼育などの場合を除き、少し工夫すればそれほど苦労なく測る事ができます。

一方、尿の濃度(尿比重)に関しては、目で見ても数値までは分かりません。(ドライフードか手作りかの違いは、見た目でもすぐわかりますが)

ぜひ、尿比重計は簡易なものでいいですので、ワンコ・ニャンコと過ごすご家庭はご自宅に1つ持っておいて損はないです。


〈まとめ〉

多飲多尿を判断するのは、
おうちの子の尿を普段と比べて判断することが重要です。

フードが常識の世の中なので、ドライフードが基準になりがちです。

ですが、仮に栄養素が同じだとしても、手作り食とペットフードは食べているものが違うので、尿も当然変わってきます。

なので、フードの基準により手作り食の子の尿が薄く多いからといって、多飲多尿という判断にはなりません。

定期的な健康診断と日々のご家庭での体調管理で、病気の早期発見をして健康に長生きにつなげましょう!


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