アドラー心理学

10年前くらいから今まで比較的長い間「アドラー心理学」が注目されている気がする。この心理学は端的に言えば、人間の行動はすべて目的があり、人生の決定は自分が選択しているということを主張している。今kindleで「愛とためらいの哲学(岸見一郎著)」を読んでいて思い出したことがある。

私は9年前くらいの大学生のときに、この心理学に基づいたベストセラー「嫌われる勇気(岸見一郎著)」を書店で初めて目にした。もともと心理学には興味があったこともあって、最初の数十ページに目を通した。

そして数十ページで読むのをやめた。
「うんうん、こういう考え方もあるよね。でも、いや、トラウマとか過去とか関係ないっていうけど、関係あるよね。自分で変えられるとか言ってるけど、極端な話、戦争中の国に生まれた場合にもこの人は環境は関係ないって言うのかな。私はそうは思わないけど。」と私は思った。

そしてそれから約半年後、看護実習の期間に入った。看護実習は人と場所によっては地獄のような場所である(看護実習と看護師の闇については、いつか自分の体験を踏まえて記事にしたいと思う)。そして私も適応障害になりつつあると言われて、抗不安薬を飲みつつなんとか実習を乗り越えた一人だ。

そして、その実習の終盤、母性看護学の実習指導の先生が私に出した課題が、この「嫌われる勇気」を読んでその感想を書くことだった(正式な課題ではなく面談での個人的な口頭の約束のようなもの)。

私は読んでみたことはあるが、ピンとこなかったことを思い出しながらも、この助教授の先生は好感があったため、もう一度読んでみることにした。正直気が合う先生が勧めてくれなかったら最後まで読むこともなかっただろう。

そして、私はその本の内容で語られていることを自分の状況に当てはめて考えて感想文を書いて先生に渡した。先生は「なんだ、一応分かってんじゃん。」っていう感じの反応だった。それ以上でもそれ以下でもなかった。

自分のことを冷静に本を通して分析してみると、自分の思考や認知の歪み(特に1か0思想になっていることとか)に気付くことができたりする。ただぐるぐると考えるだけではなく、気付いたことを書き出すことで見えてくることもある。それはときどき自分の短所を見ることにも繋がるためちょっと苦しい経験になったりするし、一度分かった!と思ってもまた同じ沼に嵌ることもあるため、一度ですべてがすっきりと解決するわけでもない。

感情と理論は別だから、私も今でも悩むことはあるけど、頭では今の状況だって「外国には私が来たくて来た。今、本当に無理だったら、私は恋人を置いて帰ることだってできるし、一人で都会に引っ越してチャレンジすることだってできる。そして私が本当にそうしたいと言ったら、恋人は許してくれる人だ。でもそうしたくないのは、私は仕事を求めて都会に行くよりも、仕事がなくても許されるならここにいたいから。だから、色々な選択肢の中で私はこの(半ひきこもりの)生活を選んでいる。」と思ってる。そう思ってても、辛いときは辛いし、悲しい時は悲しい。孤独なときは孤独だ。その感情も感情として認めるようにできるだけしてる。思考と感情は矛盾があってもいいし、自分で選んだことで悲しんだって別にいいと思うし。

そしてそうしてる今は、母に色々と強制されているように、そしてそれがこれからも果てしなく続くように感じて、自分の置かれた環境に絶望していたそれまでのころと比べると全然ましだと思える。自分の経験からも自分がこれを選んでいるというマインドセットは意外と効果があるのかもしれない (もちろん生死にかかわる病気を患っている状況や精神的な病気の急性期(本を読んで自己分析することができる状況ではなく休むことが優先される状況)にいたり、戦下にいるような環境であればマインドセットではどうにもならないことも多くまた状況は違うと思うが、私はそうではなかったし、その場合のことは私は考える必要はなかったことにも気づいた)。

自己啓発本はたくさんは読まないけど、ときどき読むとある種の本はカウンセラーのようなものなのかもしれないと感じたりする。媒体が違うだけであって、目指すところは同じ。ときに共感を通して癒しを与え、ときに厳しく自己分析を促して自分にとっての幸せについてちゃんと考えるように指摘し、みんながもっと幸せに生きれるようにしてくれるものなのかもしれない。そして求めているときにだけ、手を貸してくれるような。こちら側にも本の内容やアドバイスをある程度受け止める準備が必要だとも思う。その準備がないと最初に私が読むのを辞めたように自分とは価値観が違う本だと思うだろうし、読んだところでなんとも思わない可能性もある。

その母性看護学の先生には半強制的に私に最後までこの本を読ませてくれて考えるように促してくれたことは、今でもときどき思い出して感謝している。

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