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【マクロ-02:不動産鑑定士試験のための経済学】 乗数効果 をわかりやすく(45度線分析)


1. 政府支出乗数

1.1. 政府支出乗数とは

政府支出乗数とは、政府の支出の変化が最終的に経済全体の所得にどれだけの影響を与えるかを示す指標で、1/1-cと表されます。具体的には、政府が1円追加で支出した場合、それが経済全体の所得をどれだけ増加させるかを表します。
「乗数」とは、ある初期の変化が連鎖的な反応を引き起こすことで、初期の変化よりも大きな結果をもたらすことを指します。政府の支出が経済に与える影響を示すものが政府支出乗数です。

1.2. 乗数効果とは

乗数効果とは、政府や中央銀行が経済政策を実施する際に、直接の政策効果を超えて、経済全体に与える影響を指します。具体的には、政府が公共事業などでお金を支出すると、それが所得として人々の手に渡り、消費や投資として経済内で循環します。
この乗数効果の大きさは、多くの要因に依存しますが、特に人々の消費傾向や企業の投資意欲が強いと、乗数効果は大きくなります。また、経済が停滞している時や、失業者が多い時など、経済に潜在的な余力がある場合には、乗数効果が高まる傾向があります。

1.3. 政府支出の増加額を全額税金で賄う場合

政府が支出を増やすために税金を増やす場合、所得を受け取る人々の手取りが減少します。これにより、消費や投資の機会が減少します。
しかし、政府がその税収を使って公共事業や社会保障などの支出を増やす場合、その支出が経済活動を刺激します。そのため、増税による負担と政府支出による経済成長のバランスや、どのような形で税金が徴収・支出されるかによって、乗数効果の大きさが変わる可能性があります。

1.4. 均衡財政乗数の定理

均衡財政乗数の定理は、政府の支出増加と税収増加が同額である場合、均衡国民所得が変わらないというものです。税金の増加によるマイナスの影響と、政府支出の増加によるプラスの影響が打ち消し合うためです。

2. 租税乗数

2.1. 租税乗数とは

租税乗数とは、税収の変化が経済全体の所得にどれだけの影響を与えるかを示す指標で、-c/1-cと表されます。
マイナスの符号がつく理由は、税収が増えると消費や投資の機会が減少し、その結果経済活動が萎縮するためです。逆に、税収が減少すると経済活動が刺激されると予想されるため、租税乗数は負の値をとります。

2.2. 税金を減額する場合

税金を減額すると、家計や企業の所得が増えます。この結果、消費や投資が活発化し、経済全体の活動が刺激されることが期待されます。

2.3. なぜ乗数効果が小さくなるか

乗数効果の大きさは、限界消費性向に大きく影響されます。限界消費性向とは、追加の所得が増えたときに、それが消費にどれだけ使われるかを示す指標です。例えば、所得が100円増えて、それの70円が消費に使われる場合、限界消費性向は0.7となります。
税金を減額した場合、乗数効果が政府支出乗数よりも小さくなる主な理由は、人々が追加の所得の全額を消費に使わないためです。追加の所得が得られたとき、人々はそれを消費と貯蓄の二つの方法で使用します。もし追加の所得の全額が消費に回される場合、乗数効果は大きくなります。しかし、一部が貯蓄される場合、乗数効果は小さくなります。
経済の状態や人々の消費行動、貯蓄傾向などによって、この乗数効果の大きさは変わります。

3. 投資乗数

投資乗数とは、ある初期の投資が経済全体の所得にどれだけの影響を与えるかを示す指標で、1/1-cと表されます。初期の投資が行われると、それが所得や雇用の増加を引き起こし、さらに消費や投資が増加するという連鎖反応が生じます。
例えば、民間の企業が新しいプロジェクトに投資を行うと、それが雇用や所得の増加を引き起こし、結果として経済全体の活動が活性化します。これは、民間投資は市場の需要と供給のバランス、技術の進歩、競争環境などに応じて効率的に行われるため、その影響力が非常に大きいからです。

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