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【ミクロ-17:不動産鑑定士試験のための経済学】 ゲーム理論 をわかりやすく(ミクロその他)


1. ゲーム理論とは

1.1. ゲーム理論が活用される場面とは

ゲーム理論は経済学だけでなく、社会科学、生物学、工学などの多岐にわたる分野で利用されています。それは、多くの現実の状況が「ゲーム」としてモデル化できるため、この理論が幅広い応用を持つからです。様々な場面において、個体や団体は他者の行動を予測し、最適な戦略を選択する必要があります。

1.2. ゲーム理論の用語

ゲーム理論を理解するためには、基本的な用語の理解が欠かせません。以下では、主要な用語について説明します。
ゲーム理論の用語は数多く存在しますが、以下の項目はゲーム理論の基本を理解する上で特に重要です。

1.2.1. プレーヤー

プレーヤーとは、ゲームに参加する意思決定者のことを指します。彼らはそれぞれの利益を最大化するための戦略を選択します。これは個人であることも、団体や国などの集団であることもあります。
ゲームには、2人以上のプレーヤーが存在することが一般的です。これらのプレーヤーは、互いの選択によって影響を受けます。

1.2.2. ゲーム

ゲームとは、プレーヤー間の相互作用のルールや構造を定義したものです。具体的には、どのプレーヤーがどのような選択肢を持ち、どのような選択をした場合にどのような結果が生じるかを示します。
ゲームは、一度だけ行われるものから繰り返し行われるものまで、さまざまな形があります。それぞれのゲームには独自の戦略が求められます。

1.2.3. 利得表

利得表は、プレーヤーが選択できる戦略の組み合わせごとに、各プレーヤーが得る利得(または損失)を示す表です。これを通じて、プレーヤーは最適な戦略を選択する手助けとなります。
利得は通常、数値で示されます。この数値が高いほど、プレーヤーにとって好ましい結果が得られることを示しています。

1.2.4. 最適戦略

最適戦略とは、与えられたゲームの中で、プレーヤーが取ることができる最も利得の高い戦略のことを指します。これは、他のプレーヤーの選択に応じて変わることがあります。
最適戦略を選択するためには、プレーヤーは利得表を参考にし、予想される他者の行動を考慮に入れながら、自身の利得を最大化する選択を行います。

2.ナッシュ均衡

ナッシュ均衡はゲーム理論における中心的な概念であり、各プレーヤーが自分の利得を最大化する選択をした結果、どのプレーヤーも自分の戦略を変える動機がない状態を指します。
言い換えれば、ナッシュ均衡は各プレーヤーが自身の最適戦略を選択した時点で、他のプレーヤーの戦略を固定したままで自分だけが戦略を変えた場合、利得が改善されない状態を意味します。

2.1. ナッシュ均衡とは

ナッシュ均衡は、名前の由来となったジョン・ナッシュによって提唱された概念です。この均衡は、すべてのプレーヤーが他のプレーヤーの戦略を考慮して最適な戦略を選択した結果として生じるものです。
この概念はゲーム理論において非常に重要であり、多くの実際の状況での意思決定や交渉の分析に利用されています。それは、ナッシュ均衡がしばしば最も合理的な選択の結果として現れるからです。

2.2. ナッシュ均衡が複数存在する場合

あるゲームでは、ナッシュ均衡が一つだけ存在するとは限りません。複数のナッシュ均衡が存在する場合、それはプレーヤーの戦略の組み合わせによって異なる均衡点が存在することを示します。これは特に、プレーヤー間の相互作用が複雑である、あるいはゲームの構造が多岐にわたる場合に現れやすい現象です。

2.3. ナッシュ均衡が存在しない場合

すべてのゲームにナッシュ均衡が存在するわけではありません。特定のゲームや状況においては、どのプレーヤーも他者の選択に対して最適な反応を持たない場合があります。
ナッシュ均衡が存在しない場合、プレーヤー間の相互作用が予測困難となり、結果的にゲームの結果も不確実になります。このような場合、他の均衡概念やアプローチが必要となることがあります。

3. パレート最適

パレート最適は、経済学者ヴィルフレド・パレートに由来する概念で、ある状態がパレート最適であるとは、その状態から他の状態に移行することで誰か一人でもより良い状態にすることができる場合、同時に他の誰かが悪化する状況を指します。
つまり、パレート最適の状態では、誰かの状況を改善するためには他の誰かの状況を犠牲にする必要があります。この概念は、リソースの配分や社会的選択において重要な役割を果たしています。

4. 囚人のジレンマ

囚人のジレンマは、ナッシュ均衡がパレート最適ではない状況をいいます。各プレイヤーは、協力することが双方にとって最適な選択であるにも関わらず、互いの不信から協力しない選択をします。

5. 有限回繰り返しゲームのナッシュ均衡

有限回繰り返しゲームでは、プレーヤーが以前の結果を基に次の行動を選択します。ここで、裏切ることで一時的に大きな利得を得ることができるが、それにより他のプレーヤーとの信頼が失われ、その後のラウンドでの利得が小さくなると仮定します。
相手を裏切る回は利得が大きくなるため、有限回繰り返しゲームでは、最後の1回に相手を裏切る戦略を取ります。よって、「最後まで互いに協調すること」がナッシュ均衡となることはありません。

6. 無限回繰り返しゲームのナッシュ均衡

無限回繰り返しゲームでは、ゲームの終了がないため、プレーヤーは未来の行動も考慮する必要があります。プレーヤーが未来の利得を現在の利得よりも低く評価する場合、割引率という考え方が取り入れられます。この割引率が高ければ高いほど、未来の利得を重視する傾向が強まります。
ここで、割引率が十分に高い場合、プレーヤーは短期的な利得よりも長期的な関係を重視することとなり、互いに協調する戦略がナッシュ均衡となる可能性があります。これは、短期的な裏切りによる利得よりも、長期的な協調関係による累積利得の方が大きいと判断されるためです。しかし、割引率が低い場合は、短期的な利得を追求する戦略が支配的となり、「最後まで互いに協調すること」がナッシュ均衡となる可能性は低くなります。

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