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【マクロ-01:不動産鑑定士試験のための経済学】 45度線分析 をわかりやすく(45度線分析)


1. 総需要と総供給

総需要とは、経済全体において消費者が購入したいと考える商品やサービスの合計量を指します。一方、総供給とは、経済全体で生産者が提供する商品やサービスの合計量のことを言います。
総需要曲線と総供給曲線が交差する点は、価格水準と実際に供給され、需要される総生産量が均衡する点となります。この均衡点は、均衡国民所得といい、市場の需給が一致し経済全体のバランスが取れる点を示しています。

1.1. 総需要曲線

総需要曲線は、収入(総生産)と支出(総需要)の関係を示すものであり、具体的にはYD=C+I+Gの式で表現されます(Y: 総生産(国民所得)、C:消費、I: 投資、G: 政府支出)
さらに、消費はC=cY+C₀(cは限界消費性向、Yは国民所得、C₀は基礎消費)という式で表されます。

1.1.1. 限界消費性向とは

限界消費性向とは、所得が1単位増加したときに増加する消費の単位を指します。具体的には、消費の増加量を所得の増加量で割った値として定義されます。この値が高いほど、所得が増えると大きく消費が増加します。逆にこの値が低いと、所得の増加に対して消費の増加は控えめになります。この概念は、消費の感応度を示すものとして、経済政策の分析などで重要な役割を果たします。限界消費性向は、0 <c<1となるため、総供給曲線の傾きより緩やかになります。

1.1.2. 基礎消費とは

基礎消費とは、所得がゼロのときの消費量を指します。これは、生計を維持するための最低限の消費であり、所得がなくても発生する消費を意味します。この基礎消費が高いと、所得が増加しても消費がそれほど増加しないことを示し、逆に基礎消費が低いと、所得の増加によって消費が大きく増加することを示します。

1.2. 総供給曲線

総供給曲線は、YS=Yと表されます。45度線分析は、収入(総生産)と支出(総需要)が等しくなるところを示す方法です。この45度線という名前は、傾きが45度であることから来ています。生産されたものは全て分配されるものとするため、その傾きは45度となります。

2. 有効需要の原理

有効需要とは、実際に市場で財やサービスを購入する意志と能力を持つ需要を指します。経済全体で見た場合、この有効需要が供給(生産)に影響を与え、経済の活動水準を決定します。有効需要の原理は、均衡国民所得は有効需要によって決まるという考え方を示しています。総需要と総供給が一致するところがこの有効需要であり、この点での生産水準や雇用水準が経済の実際の水準となります。

3. 政府支出の必要性

政府支出は、公共のサービスやインフラストラクチャーの提供、経済の安定化など多くの目的で行われます。特に、経済が不況や不振にある場合、政府が支出を増やすことで経済活動を刺激することができます。
政府支出は、総需要を直接増加させる効果があります。例えば、公共事業を進めることで、建設関連の需要が増えるとともに、関連する産業の雇用や生産も促進されることが期待されます。

3.1. インフレギャップの発生

インフレギャップとは、実際のGDPが潜在GDP(経済がフル稼働した場合のGDP)を超えた状態を指します。この状態は、経済が過熱しており、インフレのリスクが高まる状態です。
インフレギャップが発生すると、商品の価格が上昇し、生活費の増加や貨幣の価値の低下などの問題が生じます。このような状況を是正するためには、政府は財政政策や金融政策を通じて経済の冷却を図る必要があります。

3.2. デフレギャップの発生

デフレギャップとは、実際のGDPが潜在GDPよりも低い状態を指します。この状況は、経済の潜在的な生産能力を十分に活用していないことを示しており、自発的失業の存在を暗示している可能性があります。自発的失業とは、労働者が現行の賃金での雇用を拒否することを指し、デフレギャップの存在は、多くの労働者が雇用を求めているのに雇用の機会が不足していることを示唆しています。政府は、支出を増やすなどして経済を刺激し、このギャップを埋めるための対策を講じる必要があります。

4. 財市場の均衡条件式

財市場の均衡とは、総需要が総供給に一致することを指します。これは、家計や企業、政府の支出が、経済全体での生産量と等しくなる状態を示しています。総需要曲線をYD=cY+C₀+I+Gとして表現すると、この均衡条件式は、Y=cY+C₀+I+Gとして示され、ここで求められる均衡国民所得をY*と表します。この均衡国民所得は、経済全体での生産と消費、投資、政府支出が一致する所得水準を示しています。Y* =(C₀+I+G)/1-c と求められます。

5. 税金を考慮した場合の均衡条件式

税金を経済に導入すると、消費に回せる所得(可処分所得)が変化します。税金の影響を受けた消費と投資の合計が、総生産と等しくなる点が新たな均衡点となります。

5.1. 定額税の場合の均衡条件式

総需要曲線をYD=c(Y-T)+C₀+I+Gとして表現すると、均衡条件式はY* =(C₀-cT+I+G)/1-c と表されます。

5.2. 累進課税の場合の均衡条件式

5.2.1. 租税関数

累進課税の場合、税額は所得に応じて変動するので、租税関数はT = tYとして表現されることが一般的です。ここでtは税率を示します。

5.2.2. 均衡条件式

総需要曲線をYD=c(Y-tY)+C₀+I+Gとして表現すると、累進課税を導入した場合の均衡条件式はY* =( C₀+I+G)/1-c(1-t)と表されます。

5.2.3. ビルトインスタビライザーとは

累進課税は、所得が増えるにつれて相対的に高い税率で課税される税制を指します。このため、所得が増加すると税負担も相対的に増えるので、所得の増加分に対する消費増加が抑制されます。逆に、所得が減少すると税負担も相対的に減少するため、消費の減少を緩和します。
税を考慮しない場合の均衡条件式はY* =(C₀+I+G)/1-cと表されます。一方、累進課税を導入すると「Y* =( C₀+I+G)/1-c(1-t)」のように式が変わります。この新しい式において、tは税率を示しており、所得が増加すると、1-tが小さくなるため、分母が大きくなり、Y*が小さくなります。このことから、所得が増加すると、均衡国民所得の増加が抑制されることがわかります。
累進課税が国民所得の変動幅を小さくする理由は、所得が増加した場合、増加分の税負担が増えるため、所得の増加による消費の増加が抑制されるからです。逆に、所得が減少した場合、減少分の税負担が減少するため、所得の減少による消費の減少も緩和されます。このように、累進課税は自動的に経済の変動を緩和する役割を果たしており、これをビルトインスタビライザーと呼びます。

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