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【ミクロ-08:不動産鑑定士試験のための経済学】 異時点間の消費 をわかりやすく(消費者の行動)


1. 効用最大化条件①

経済学では、消費者(この場合、貯蓄主体)は自分の利益(効用)を最大化するように行動すると仮定されます。効用は消費者が商品やサービスを購入することで得る満足度を示します。効用最大化条件は、限られた予算の中でどのように商品やサービスを購入すると効用が最大化されるかを示す条件です。ここでは、貯蓄主体が今期と来期のみ生き延び、正の貯蓄を行うという仮定を置きます。

この条件の下で、貯蓄主体は異時点間の消費の選択をします。すなわち、今期の財消費量x1と来期の財消費量x2の選択を行います。この選択は、今期の所得をM1、来期の所得をM2、そして利子率rに基づいて行われます。

1.1.貯蓄の決定

異時点間の消費の選択をする際の重要な要因の一つが「貯蓄」です。貯蓄Sは、今期の所得M1から今期の財消費量x1を引いたものです。つまり、貯蓄はS=M1-x1と表されます。貯蓄は、今期の消費を抑え、来期の消費を増やすために行います。

貯蓄の決定は、利子率rや来期の消費の価値に大きく影響されます。利子率が高ければ高いほど、貯蓄の効用が増加し、貯蓄主体は今期の消費x1を抑えて貯蓄Sを増やす傾向が強まります。

1.2.利子率が上昇した場合の予算制約線のシフト

予算制約線は、貯蓄主体が異時点間の消費を決定する際の選択肢を示すグラフです。効用最大化条件は、予算制約の式M1+M2/1+r=x1+x2/1+rで表されます。
利子率rが上昇すると、予算制約線は右上にシフトします。

2.効用最大化条件②

効用最大化条件は、MRSを用いて、MRS=1+rと表せます。
例えば、利子率rが上昇すると、今期の財消費量x1が来期の財消費量x2と比べて相対的に高くなります。この場合、代替効果が生じ、貯蓄主体はx1を抑えてx2を増やす傾向が強まる可能性があります。所得効果では、実質的な所得が増加すると、x1が増加する可能性があります。

3.代替効果>所得効果の場合

代替効果が所得効果よりも大きい場合、商品の相対的な価格の変化が消費行動に大きな影響を与えることを示しています。ここでは、利子率rが上昇すると考えてみましょう。

3.1.代替効果

所得効果は、商品の相対的な価格の変化が消費行動に与える影響を指します。利子率が上昇すると、現在の消費のコストが増加します。これにより、代替効果によって現在の消費を抑えて将来の消費を増やす傾向が強まります。貯蓄主体は、x1を抑えてx2を増やす傾向が強まります。

3.2. 所得効果

所得効果は、実質的な所得の変化が消費行動に与える影響を指します。利子率が上昇すると、所得効果により貯蓄主体の実質的な所得が増加します。これは、利子率の上昇により、過去の貯蓄がより多くの消費を可能にするためです。この実質的な所得の増加は、今期の財消費量x1を増加させる効果があります。
利子率の上昇による代替効果がx1を減少させるのに対して、所得効果はx1を増加させる効果があります。この2つの効果の相対的な強さによって、最終的なx1の変化が決まります。この場合、所得効果よりも代替効果の影響が大きいため、結果として今期の財消費量x1は減少します。

4.代替効果<所得効果の場合

所得効果が代替効果よりも大きい場合、実質的な所得の変化が消費行動に大きな影響を与えることを示しています。
具体的には、利子率rの上昇による実質的な所得の増加によるx1の増加がx1の減少を上回る場合です。この場合、結果として今期の財消費量x1は増加します。これは、貯蓄主体がx1の増加を望んでいる場合や、x2に対する期待が低い場合に起こることが考えられます。


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