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現代社会で働く全ての人に読んでほしい『自由になるための技術リベラルアーツ』は社会人の必読本

リベラルアーツという言葉を初めて目にしたのは池上彰さんの書籍の中だった。
東京工業大学・リベラルアーツ研究教育院(ILA)で特命教授をされている池上さんはリベラルアーツの重要性を説いていた。

リベラルアーツを日本語訳すると「一般教養」「教養教育」などと表現される。ただ、この訳し方は誤解を招く、というのが山口周さんや上田紀行さん(東京工業大学・リベラルアーツ研究教育院(ILA)教授)などの有識者の意見として一致しているようだ。

リベラルアーツの、もともとの起源は古代ギリシャ・ローマだ。
以下ウィキペディア先生を引用する。

リベラル・アーツの起源は、人間が自由人(兵役義務などを負う市民)と非自由人(奴隷)とに分けられていた古代ギリシャ・ローマでの、「自由人にふさわしい学芸である。これを理念的な源流として、中世欧州の大学においては七つの基礎的な学芸を指した。
wikipediaより引用

この中に出てくる当時の七つの基礎的な学芸とは、文法、修辞、弁証、算術、幾何、天文、音楽を指しているそうだ。

上田さんの説明がわかりやすかった。

なんとなく興味はあったものの、他の書籍にばかり目がいってしまい、なかなか関連書籍を読めずにいた。
そんな中で出会ったのが『自由になるための技術 リベラルアーツ』だ。

タイトルからちょっとしたチープさを感じてしまい、一瞬ためらった。
自由になるための技術??みたいな、ちょっと小馬鹿にしていた節は否定しない。
ただ、書籍の冒頭を立ち読みする中で共感した部分があったのだ。

私は、丸の内にある大書店、丸善丸の内本店の一階売り場がどうも苦手でした。入ってすぐの通路のは最新のビジネス書が、ギラギラした宣伝文句とともにびっしりと連ねられている。何か、首根っこを掴まれて強引に勧誘される、そんな息苦しさをいつも感じていました。
『自由になるための技術リベラルアーツ』p17より引用

わかるな〜。
「とりあえず本を買ってもらえたらそれでいいんで」みたいな「こういうインパクトあるタイトルじゃなきゃ、どうせあなたは手に取らないんでしょ」みたいな。
ちょっと読み手をバカにしているんじゃないかと穿ったものの見方をしてしまいそうな書籍は山ほどある。
そして、だいたい、中に書いてあることはすでに他の本に書いてあるし、大きないままでと違う気づきが得られる本は少ない。

ということで、書籍の冒頭を読み、共感ポイントを得たところで、こちらを読んでみることにした。

そして、読むことに決めた私の判断は間違っていなかった。これは面白い本だった。

1.書籍紹介

・タイトル|『自由になるための技術
       リベラルアーツ』
・著  者| 山口周(やまぐち・しゅう)
・発行年月| 2021.3.1
・発    元| 講談社
・著者略歴| 1970年東京生まれ。
       慶應義塾大学文学部哲学学科卒、
       同大学院文学研究科美学
       美術史学専攻修士課程修了。
       電通、ボストン・コンサルティング
       ・グループなどで戦略策定、
       文化政策、組織開発などに従事。
       独立研究者、著作家、パブリック
       スピーカー。

2.あらすじ

リベラルアーツとは、「自由になるための手段」にほかならない。
自分たちを縛り付ける固定観念や常識から解き放たれ、自らの価値基準を持って行動するために。
いままでの正解が突破するヒントがここにある。
独立研究家・山口周が、哲学・歴史・美術・宗教など知の達人たちと、リベラルアーツの力を探る。
Amazonより

3.感想

この書籍は山口周さんが7人の有識者それぞれと対談する中でリベラルアーツの意義について深く考えていく書籍だった。

日本でもリベラルアーツという言葉を聞く機会が増えてきたが、欧米ではすでに積極的に取り組まれているらしい。
日本はスキルを身につけることを良しとする。例えば、大学も専門性を養う教育の場として認識されている。いわゆる戦力として現場で使える人間を育てる場所になってしまっている。

さて。ここでいう使える人間というのは、どういう人なのだろうか。
会社のいうことを信じて疑わずに従事し続ける人だろうか。
大学で専門的で高度なスキルを身につけた、他のことはからっきし無知な人だろうか。
個の軸や信条は持たずに、組織に依存する人だろうか。
同じような考え方の人たちと、同じようなことをし続ける人だろうか。
どちらかというと、戦後から存在する日本社会は上記のような人たちを歓迎する傾向にあるのではないだろうか。
そもそも使えるという表現自体、問題があるのだが。

果たして、上記のような人たちが変化ばかりの時代の中で、柔軟で発想にとんだリーダーとなり多様性が重視される社会を牽引していけるのだろうか。
ここに、リベラルアーツの必要性を説く理由があるのだと思う。

そしてこの書籍には7人の有識者が出てくる。
それぞれの立場・分野で、何をどう捉えているのか。
彼・彼女らには個人の見解がしっかりとあり、自分の哲学の上で判断をしていく力を感じた。

本書は「リーダーこそリベラルアーツを」という書き方になっている印象があるが、こういうことは誰にこそというものではないのではないか。
これからの時代を働き、生きていくすべての人にとって、必要な考え方だと、私は思う。

そして最後に、本書に登場するライフネット生命・代表取締役兼CEOを勤める出口治明さんは、人に学び、本に学び、旅に学ぶことの大切さをおっしゃっていた。
コロナ禍で迎える3回目の夏。
最近はもっぱら本ばかりのわたしは、人に会い、旅に出ることにも踏み込んでいく必要があるなぁと反省した次第だ。

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