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好奇心には領域があるーミニ読書感想「子どもは40000回質問する」(イアン・レズリーさん)

イアン・レズリーさんのノンフィクション「子どもは40000回質問する」(光文社未来ライブラリー)が大変興味深かった。テーマは好奇心。「なぜ?」「どうして?」と問うことが、人間の知能や技術革新の根幹だと説き、その主張を支えるたくさんの研究や実験結果を示してくれる。好奇心は、才能とは違う。放っておいては育たない。ある「領域」において好奇心は伸びるのだ、という内容が学べて面白かった。


タイトル通り、人間が幼少期に発する質問は万単位に及ぶそうだ。それは赤ちゃんの頃から始まり、たとえば何かを指差す動作が赤ちゃんなりの質問だそう。

一方、言語を理解するなど知能の高い類人猿は、人間のように質問しない。問い掛け、フィードバックを得ることで学習を深めることは人間の特徴だと言える。

この質問に、周囲の大人がどう答えるかが、子どもの好奇心の伸びを左右すると著者は指摘する。子育て中の人にとっては、学びになると同時に、恐ろしく感じることだろう。子どもの質問攻勢にひとつひとつ丁寧な対応をするのはすごく難しいので。

たくさんの発見がある本書だが、最も学びになったのは、「好奇心の領域」という考え方だった。

好奇心は、無から発生するわけではない。子どもが質問を発するのは、日々の生活でさまざまなことを学び、さらに知りたいと思うから。つまり、好奇心は一定程度の知識がなければ生まれない。

知識が少しあり、かといって完全な知識がないとき、私たちはその「空白」を埋めようと好奇心を発揮する。つまり好奇心は、知識が少ない状態と多い状態のあいだの「領域」に起こるものだというのだ。

言い換えれば、知識は好奇心を育てるために必要な栄養素、肥料と例えられる。どんなに豊かな好奇心を持っている子でも、知識がゼロならその好奇心は枯れてしまう。

だから本書では、基礎的な知識をあれこれ教える学校のシステムは好奇心を育むうえで案外悪くないと指摘する。「知識を詰め込む」というと筋悪な印象を抱くが、知識を軽視しては好奇心は成り立たない。

だから、何はともあれ、学ぼう。学び続けよう。そうすると好奇心は、後付けで私たちを支えてくれる。

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