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信仰【村田沙耶香ワールド全開!】

皆様の「信仰」が揺さぶられるかもしれません!?
今回はそんな作品をご紹介します!

〇著者

 村田 沙耶香

〇ジャンル

 小説

〇あらすじ

 8作の短編集。

 表題作の『信仰』は「原価いくら?」が口癖の女性、永岡が主人公。
 永岡は、目に見えない「幻想」に騙されている周囲の人々のために、「現実」を積極的に提示してあげているにも関わらず、だんだんと人が離れていくことで、自分自身の考え方に徐々に違和感を持つように。
 そして、自分自身がまさに「「現実」を「信仰」しているのでは?」と思い始めます。
 カルト商法を本気で始めようとする友人と接していくなかで、彼女の「信仰」にどう変化がもたらされるのか注目!

 他の短編にも、

・65歳時の生存の可能性をA〜Dのランクで評価する「生存率」
・人間からの「野人化」
・イマジナリー宇宙人
・「均一化」「カルチャーショック」の2種類の街しか存在しない世界
・自分にとって気持ちが悪い「多様性」
・4体のクローンとの生活
・ヒュポーポロラヒュン

 といった奇妙、不思議な概念や言葉、設定、ストーリーが作品中に溢れています!


〇感想

・この作品では色々な「信じる(信仰)」を想起させ、自分の好きだったり、興味を持ったり、軸になる考えや行動の中にも、気づかないうちに「信仰」しているものがたくさんあり、それは他者からみたら「変わった」、奇妙なものだと思われているのかもしれないと感じました。

※私は著者の村田沙耶香さんの作品は、これまで『コンビニ人間』(芥川賞受賞作)しか読んだことがなく、著者についてあまり知らないので偉そうなことは言えないことを承知で、ここからは書きます。

・『コンビニ人間』や本作を読んで、「この著者は、「変わった」人物や概念、設定を生み出す創造力に長けていて、更にそれを展開させていくのが非常に上手い」と感じました。

・しかも、その「変わった」というのも、単に話がぶっとび過ぎているというものではなく、
 ・私たちの現実世界にいてもおかしくなさそうな変わった人物
 ・現実世界から少し延長した非日常の世界の日常
 ・SFやファンタジーのように現実世界とかけ離れた世界
など、色々な種類の「変わった」があります。

・また、「変わった」の中にも「これはちょっと自分にも共感できるかもしれない…」と思うことも多く、この「変わった」と「共感」のバランスが絶妙なラインをついてきます。
 そのため、「もし、自分がこの世界観に存在したら、どのように考え振る舞うだろう」とイメージしながら読むのも面白いです。

・『気持ちよさという罪』では著者本人のことが書かれており、これを読みながら、著者に対して自分が上記のようなことを思ったのが、少し合点がいきました。

・「変わった」設定を扱っていますが、文章は分かりやすく流れるようなので、大変読みやすく1日で一気読みしました!
 途中、「変わった」概念に、「これは何を表しているのだろう?何かの比喩だろうか?」と考えるために止まったことは何度かありましたが、文章がとっつきにくくて止まってしまうということは少なくともありませんでした。

・どの話も大変面白く、著者の他の作品にも挑戦してみたいと思いました。


〇細かすぎる感想

・この話とこの話はもしかしたら繋がっている?同じ世界観では?と感じる組み合わせがありました。

・『書かれなかった小説』を読んでいると「夏子」という文字がゲシュタルト崩壊します(笑)

・『最後の展覧会』では宇宙船や「K」という呼称が登場しており、もしかしたら、星新一(ショートショートのレジェンド)を意識?


皆様もぜひ読んでみてください!


※こちらでは著者の芥川賞受賞作『コンビニ人間』の感想を書いています!


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