見出し画像

連載小説★プロレスガールがビジネスヒロイン? 第十一章 対抗戦 <入社2年目冬>

第一章&全体目次はこちらから
トップ絵はOWP所属のトップヒール渋谷(^^♪現時点での国内最強選手🎵


本章のダイジェスト

  • 正月の自主トレでこっそり空中技を練習しているところを大沢にバレるミナミ。こういうところはどんくさいwそれはそれとして、初めて二人でディナーに。でもトレーニングウエアしか持っていないミナミ。やはりどんくさいwww

  • 正月が終わると、営業部が勝負に出る。OWPとの敵対的対抗戦を仕組みはじめた。巻き込まれるSJWサクラとOWP渋谷(二人は実は親友なのに敵対するように罵り合うことに💦)

  • そして、過度な煽りと緊張の中迎えた直接対決で、ついに事故が……

  • 後悔するサクラ。そして、大沢も監督責任を感じ、二度とこのようなことが怖らないように、プロレス改革を進めることを決意。ミナミにも協力を求めた

本章本編

第55話 極寒トレーニング

 SJWにとって最も大きな興行であるクリスマス大会も、QoRの10名全員参戦による豪華なカードが組まれ、大盛況で幕を閉じた。

 そして、SJWは年末年始にかけて2週間のオフシーズンを迎える。
 会社の方も長期休業。
 選手も社員も羽を伸ばす唯一のタイミングだった。

(どうしようか……)

 ツツジもゼミ仲間も帰郷していて、一緒に遊んではくれない。

(私は、親に反対してプロレス団体に入ったから、実家には帰りづらいのよね……)

 かといって、プロレス以外にできることといえば、スキーくらいだ。
 モーグルに転向してからホームゲレンデとなった八海山スキー場に、日帰りで行こうと思えば行けるけど、新幹線で往復1万3千円。
 リフト代、レンタルや食費を考えると2万円をはるかに超える。

(うー、さぶさぶ。ないわ、ないない)

 気温も寒いが財布の中身も寒い。

 こうして、結局本社に来てしまうミナミだった。

 スマホでスマートロックを一時開錠し中に入る。
 二階のジムでマシントレーニングで筋トレ。
 流石に暖房をつけるのは気が憚れる。
 吐く息が白い。

 ランニングマシンで無我夢中に走る。

 走りながら今年の出来事を思い返していた。

(色々あったけど、私、プロレスラーになりました)

 ここまで支えてくれたのは……

「ピッピッピッピッ」

 マシンが設定距離を走破したと教えてくれる。
 スローダウン。

 ミナミの体から、湯気が立っている。
 室温は外と変わらないので、0度に近いはず。

 1階に降りると、リングに上がる。

 ひたすら、受け身の練習と人形相手の技練習。

 とはいえ、正月三が日ずっとひとりで練習していると、さすがのミナミも飽きてくる。

(刺激が必要なのよね)

 クッションマットをリングに放り込む。
 その上に、練習用のダミー人形を寝かせる。

「よし」

 ひとりで頷くと、トップロープに飛び乗る。

(大沢さんに止められてからは、久しぶりの空中技の練習ね)

 胸の鼓動が大きく高鳴る。
 これは……尋常じゃない高鳴りだ。

 久しぶりだから?
 いや、違う。

 おそらく、だめだと言われているのに、その約束をコッソリ破ること。
 そして、それが恐ろしいほどに快感であること。

 身体に力を入れる。

 トップロープから背面方向にバク宙しながらリング中央に向かって円弧を描きつつ飛びだす。
 そして、ダミー人形の上にドスンと体を浴びせる。

(なかなか、いい感じね)

 そう思った次の瞬間。
 ミナミの全身が凍り付く。

 いつの間にか、リングサイドに大沢が立っていた。

第56話 封印の原因

「あ、あの、えっと、ち、違うんです。これは……」

 誰も来ないと信じて確信犯でムーンサルトプレスの練習をしていたのだから、弁明の余地もない。

「まったく、何やってるんだか……」
「……ごめんなさい……」

 大沢はあきれ顔。
 そして、ため息をひとつ吐く。

「……ミナミが空中技が得意だということも、ムーンサルトに憧れているということもわかっている」

 つかつかとリングに近づく。

「……でも、イズミとコンビを組んだんだろ?まずは、そこから学んだらどうだ?」
「え?どういうことですか?」

 話の流れがつかめずにリングの上でオロオロする。
 大沢はリングに上がった。

「イズミの得意技は?」
「え、と……ギロチンドロップです」

 前回のタッグ戦でのフィニッシュホールドでもある。

「そうだ」

 大沢は、突如人形に向かって足を延ばし、人形ののど元に太ももの裏を打ち付けるように落下する。

「ギロチンドロップは、膝への負担が少ない」

 それを聞いて、ミナミはハッと目を見開いた。

「空中技は選手生命を削る。だから、順を追って体と技術を育てていかないといけない。わかるな?」
「……はい」

 ムーンサルトのようなバク宙系は頭を支点に回転するので、膝がマットに打ち付けられる。
 これは、選手の膝を痛める原因の一つになっている。
 実際、この技を使う有名選手たちの何人もが膝の手術を余儀なくされており、引退に追い込まれるケースも多発している。

(大沢さん、私の体を気遣って封印を指示してくれていたんだ……それに比べて、私の考えの浅はかなこと……情けない)

 ミナミは安易にコッソリ練習していたことを恥じた。
 穴があったら入りたい。
 
「明日から仕事も練習も再開だ。今日はほどほどにしてゆっくり休めよ」
「……はい……」

 そして、階段に向かいながら。

「……おれも、そろそろあがるから、どこかで食事でもしていくか?奢るぞ」
「え?……いいんですか?」

 鼓動が一気に高まる。
 満面の表情。

(初めて、大沢さんに誘われた。しかも、二人きりのディナー!?)

 さっき怒られたことなど、すっかり忘れているようだ。

「ファミレスくらいしか開いていないと思うけど、それでもよければ」
「行きます、行きます。すぐに着替えてきます」

 慌ててリングを片付け始める。
 それをみて、大沢はふっと笑いながら階段を上っていった。

第57話 コート

(ばか、ばか、ばか……私のばか)

 すっかり忘れていた。
 トレーニングウエアしか着るものがない。
 仕事用スーツはクリーニング中だ。

「ファミレスだし格好なんて気にしなくていいさ。それよりたくさん食べろ。体作りは大事だからな」

 タブレットで食事を注文。ついでにビール。

「昨年はよく頑張ったな。DXの効果も順調に出ているし、QoRを交えたクリスマス大会も大成功。ミナミのおかげだ」
「いえいえ、大沢さんやみなさんに支えていただいたおかげです」

 大沢にこんなに褒められることなどほとんどないからニヤニヤが止まらない。

「それに、ついに念願のプロにもなったしな」
「はい。お待たせしました」
「ふっ、本当だ。今年はよろしく頼むぞ」

 二人で笑い合う。
 練習生として入社してから2年、これだけかかるケースは今までなかっただろう。

(何だか、こうして二人で話しているのって新鮮ね)

 せっかくだから、違う話題も振ってみる。

「大沢さん、お休みの日は何しているんですか?」

 そういえば、会社での大沢は、いつもクールで口数は少ないから、自分の仕事やプロレス以外の会話をしたことがない。

「そうだな。オフロードバイクでダートを走りに行ったり、昨日までは年越しスキーに行ってたよ。一人でだけどな」
「ええ?アウトドア派だったんですか?」
「らしくないって?」
「い、いえ。そんなことないですよ」

 普通に会話しているつもりだが、実はびっくりしていた。

(二人きりの食事だからかな、こんなに一生懸命喋ってくれているんだ)

 ミナミは何だか嬉しくて、ニコニコしながらビールを飲んだ。

(今度、スキーに一緒に行こうって誘ったら、びっくりするかしら)

 やがて、食事も終わり外に出る。
 さすがに、息が白い。

「今日はありがとうございました」
「いやいや。でもその格好じゃ寒いだろ。ほら」

 不意に大沢がコートを脱ぐと、トレーニングウエアのミナミの方にそれをかける。

「え?いや、これはちょっと。大沢さんの方が……」
「気にするな。選手が風邪引いたらおれの責任になるからな」

 そうして、大通りに向けて歩き出す。
 その後ろ姿を追いながら、ミナミは無口になっていた。

(……これが、大沢さんの匂いなのね。私の汗の匂いがコートについちゃったらどうしよう……)

 やがてタクシーが見つかる。

「明日からもよろしくな」
「はい。大沢さんも、風邪ひかないように」

 タクシーが出ると、ミナミはコートの温もりを思い出して一人で赤面した。

第58話 全面対抗戦

 1月第二週に入ると、団体としても会社としても通常営業が始まる。
 いつも通りであれば、普通にSJWの面々で練習して興行に臨み試合を行っていく。

 しかし、今年の1月はいつもとは違った。

 TVのバラエティショーに出ていたイズミが、大阪の女子プロレス団体『OWP』に関して爆弾発言をしたのだ。

『女子プロレスはヒールの時代だ。SJWはヒールのトップ。大阪のOWP?パワーだけが取り柄の渋谷?あんなのおれたちに比べたら相手にならねえ』

 渋谷といえば、日本で一番と評されている現時点でのトップヒール。
 その渋谷にかつてのトップヒールであるイズミが喧嘩を打った形だ。

 そこまでなら、バラエティの席での暴発で済んだ。
 だが、騒ぎは徐々に大きくなる。

 翌週。
 渋谷はOWPの興行の中で『自身が一番のヒールだ、SJWは口だけだ、文句があるならかかってこい』とマイクパフォーマンスを見せる。

 更にその翌週。
 なんとSJWトップヒールのサクラが大阪に単身乗り込んだのだ。

 たまたま、渋谷のカードが組まれていない大阪郊外の興行。
 中盤の試合に乱入。
 大ブーイングの中、試合をぶち壊し、若手レスラー二人をマットに沈めるとマイクを取る。

「渋谷、どこに隠れてやがる?おれは逃げも隠れもしねえ。東京に出てこいや、いつでもケリをつけてやる」

 これを受けて、SNSでは大騒ぎに発展。
 サクラの行動の是非が真っ二つに分かれて議論された。

 そこに火をつけたのがマスメディアだ。
 特に、バラエティにも出ているイズミの発言が発端だったこともありテレビ局が執拗に問題を取り上げる。

 その間もそれぞれの興行後のインタビューを通じて、渋谷、イズミ&サクラが激しく自己主張を繰り返し、両団体が対立する構図が出来上がっていった。

 もはや、直接対決をするしかない。
 そのような認識が日本全国に広がっていくまでに、1ヶ月とかからなかった。

 こうして、ついに両社代表による正式発表が行われる。

 3月下旬。
 エディオンアリーナ大阪でのSJWとOWPの全面対決がアナウンスされた。

第59話 営業戦略

「大沢さん、やっぱりこれっておかしいですよ」

 ミナミは社長室に入るといきなり苦言を呈した。

「OWPのことか?」
「はい。だって、イズミさんはまだしも、サクラさんが自分からあんな挑発するわけないですよ」

 ミナミは、サクラと渋沢がプライベートで仲が良いことを知っている。
 あんな挑発をするような仲じゃない。

(大沢さんも知っているはず……)

 しかし、大沢は難しい顔で答えた。

「わかっているが、これは営業部が決定した営業戦略だ」
「営業戦略?」
「ああ。OWPともすり合わせをした上で仕掛けている。メディアを通じてこんなに過熱しすぎるとは考えていなかったがな」
「それって……無理矢理、団体間の対立構造を作ったってことですか?」

 そんなことがあって良いのだろうか。
 団体の都合により、仲が良いはずのサクラと渋谷は、本心を隠して罵り合っている。

「残念ながら、その通りだ」

 大沢は無表情に答える。

「社長権限で見直しはできないんですか?」
「今となっては難しい。そもそも、おれも賛成したことだ。それに、エディオン大阪は最大5000人。もうすでにチケット販売も進んでいるし、2社共同興行だ。途中では止められない」

 確かにその通りだ。
 それに、ファンたちの期待もすでに直接対決一色だ。
 今更手遅れなのはわかる。

 でも、納得いかない。
 もっと前に、止められなかったのだろうか。

「ミナミ、言いたいことはわかる」

 ミナミは、大沢の表情を見て、言葉を失った。

「こんな姑息な対抗意識を煽ってでも、今は営業売上アップを追求しなければいけない。理想を語るためにも、それだけの財務基盤を充実させる必要があるんだ。おれたちはまだまだ、理想には近づけていない」

 覚悟とも無念ともいえる複雑な表情で応える大沢だった。

第60話 エディオンアリーナ大阪

 エディオンアリーナ大阪。
 元の名を大阪府立体育館。
 リングサイド席も合わせて5000席がほぼ満席。

 興行としては大成功だった。

 自分の試合は予定されていないが、珍しく関東以外の興行に同行することになったミナミ。
 大沢から、よく見ておくようにと言われたからだ。
 そのとき、大沢はすでに何かを感じていたのかもしれない。

 試合も残すところ、あと三試合。
 セミセミメイン、セミメインに出るイズミとアキラが会場に向かう。

 ミナミはイズミの後を追う前に、メインイベントを待つサクラに声をかけた。

「大丈夫ですか?」

 サクラは苦笑いした。

「ははは。正直、こえーよ。あいつは半端ねぇ。でもな、SJWの看板掲げて喧嘩を売ったんだ。恥ずかしいところは見せらんねえだろ」

 はははと乾笑いする。
 そして、ミナミをぐっとつかむと、顔を近づけて小声で言った。

「昨日の夜、あいつと飲んだんだ。お互いに、どんな結果に終わっても恨みっこなしだぞってな」

 そして、バンとミナミの背中を叩く。

「ほら、イズミさんのセコンドだろ?早く行けよ」
「はい、サクラさんも、頑張ってください」

 こうして、ミナミはイズミの試合のセコンドに向かった。

 イズミ、アキラの試合がそれぞれ終わり、サクラと渋谷のメインイベントが始まった。

 ミナミは、なんとなく気になり、リングサイドに残って観戦する。

 両者はほぼ互角の流れ、拮抗した試合を繰り広げていった。
 しかし、徐々にサクラの肩の脈動が大きくなる。

(オーバーペースだ。やはり、渋谷さんについていくために、かなり無理をしている)

 そして、ついに捕まる。
 渋谷の必殺技、ラリアット。そして、パワーボム。

 カウントは2。

 SJWの全員が声が枯れんばかりに応援するが、それを上回るOWP地元大阪の大きな歓声。

 もう一発。
 そこを、サクラが切り返して、渋谷を持ち上げた。

 ここしかない。
 垂直落下式ブレインバスター。

 しかし、ミナミは違和感を感じる。
 サクラの足が揺れている。

(やばい、角度が……)

 そのまま、斜めに肩から落ちる渋谷。
 渋谷は苦しい表情で動けない。

 サクラが渋谷をフォール。

 カウントが3つ入る。
 悲鳴と大歓声の中、サクラが右腕をあげ、控え室に引き上げる。

 渋谷はリング上で動かない。

「タンカ、タンカ運んで」

 OWP側のセコンドの絶叫が聞こえる中、ミナミは無我夢中でサクラを追いかけた。

第61話 どん底

 サクラはSJWの控え室には戻らず、OWPの控え室に向かう。

「ついてくんな」

 そう言われ、SJWの選手たちは、その場にとどまる。

 ふらふらと一人で歩くサクラ。
 ミナミは、その横にそっとついた。

「ミナミか」
「はい」
「……最悪だ。やっちまった」

 やがて、タンカが運ばれてきた。
 渋谷がサクラに視線を向ける。

「ごめん……足の踏ん張りが効かなかった」

 サクラが渋谷に頭を下げる。
 渋谷は苦しそうにしながらも笑顔を作って答えた。

「何言ってるのよ。受け身をとれなかった私が未熟だったんだから。だから、気にしないで」

 しかし、渋谷が言うほど事態は甘くない。
 OWPの他の選手は、トップ選手をケガさせた張本人に対し冷たい視線をぶつける。
 技をかける方のミスは厳禁なのだ。
 落とし方が悪いと、最悪取り返しのつかない事故になりかねない。

 結局、渋谷はこのまま救急車で病院に運ばれることになった。

 サクラは、壁をどすんと叩いた。

「……一人にしてくれ」

 ミナミはこくんと頷くと、ゆっくりとその場を離れる。
 そして、選手の控え室ではなく、運営控え室に向った。

(なんで、こんなことに……やはり、強引な営業戦略が裏目に出たとしか思えない)

 批判をしたいのか。
 それとも一緒に現実の厳しさを慰め合いたかったのか。

 自分の気持ちの整理もできないまま、運営控室の扉を叩いた。
 予想通り、大沢はそこに一人で壁に向かって座っていた。

「ミナミか」
「はい……」

 大沢の姿が小さく見える。

「おれは今日の日を絶対に忘れない」

 無理やり火をつけた過度な対抗ムード。
 限界を超えた使命感と緊張感。
 その中で迎えてしまった悲劇。

「選手に無理をさせすぎて、結果として怪我させてしまうなんてことは絶対にあってはならないことだ……社長として、絶対に避けなければいけないことだった」

 常々、大沢は選手の健康と安全を第一に掲げてきた。
 その考えに団体の垣根はない。
 にも関わらず、今日はついにけが人を出してしまった。しかも対抗戦相手のトップ選手だ。

「おれは、必ず今日のようなことが起こらないプロレスの世界を作る……」

 痛いほど、辛い気持ちがわかる。

(その気持ちに嘘偽りは無いんだわ)

 ミナミは大沢に近づいた。
 ミナミはその背中に手を触れそうになる。
 その肩を抱きしめてあげたい気持ちになるが踏みとどまる。

 いつもクールで、自信満々の姿しか見てこなかった。
 背中と肩が重く沈んでいる大沢を見るのは初めてだった。

第62話 理念

 その夜のうちに大沢は東京へ戻り、ミナミたち選手は一泊の後バスで東京へと戻った。

 SNSでは、サクラが渋谷に勝ったことを受け、SJWが注目を浴び始めている。
 けがをしてしまったのは自身のせいだと渋谷が表明したためにSJWへの非難は今のところ大きくは無い。

 午後に事務所に入ると、営業部はあまり浮かれていない。
 協働興行だったとはいえ、記録的な売り上げだった。
 本来であれば、大喜びしているはずだ。

 やはり昨日のことを社長から先に伝えられていたのだろう。
 特に、精神的にダメージを受けているサクラへの配慮が必要な状況だ。

 席に着くや否や、早速大沢に呼び出される。

「長距離移動、お疲れ様。で、昨日のことだけど」
「は、はいっ……」
「早速、理念の定義をしっかりと整えたい」
「理、理念ですよね。はい」

 大沢の様子を見てホッとした。
 すでに、いつも通りの前向きに突き進む大沢に戻っている。

「『純粋な技と技の凌ぎ合いによって人を感動させる』これがおれの理念だ」
「はい」
「この理念はおれがまだ駆け出しだった10年ほど前に教えてもらった言葉だ。それ以来、いつかこれを実現したいと考えてきた」

 ミナミはほっとした。

(私も、大学1年の時から、大沢さんに理念、知ってますよ)

 大沢は表情を引き締める。

「本当はもう少し経営基盤が整ってからにしたかったけど、イズミさんたちも合流してくれたし、最低限の準備は整った。昨日のこともある。ミナミが手伝ってくれるなら、今からチャレンジしたい。時間はかかると思う。手伝ってくれるか?」

 大沢の誘いを断る理由などない。
 むしろ、声をかけてくれただけでうれしくて仕方がなかった。

「もちろんです。喜んで!」

 元気に答えて、ハッと急に思い出した。
 以前、大沢が言っていたこと。

『技術で魅せたいという気持ちは大事にとっておけ。いつか、その理想を実現できるときが来る』

(大沢さんは、ずっと、このときを待っていたんだ。そして、私のことも、最初から誘ってくれるつもりだったのかもしれない)

 あのときは、まだ大沢との距離が縮まっていないとブルーにもなった。
 でも、あのときから、実は……
 実は……

(距離は、縮まっているのかも……)

おまけ

年明けから、頻繁に更新してしまいすみません(しかも、一回1章分なので相当に重くてごめんなさい)
これにはふかーい大人の事情がございまして💦
(嘘です。カクヨムコンの締め切りが1月末で、そこまでに完結できるように焦っているだけです。ペース配分ミスとストック不足のダブルパンチw冬休みの宿題を最後に貯めた小学生と変わりないです💦)

ということで、カクヨムコン順位分析♫

年末年始に250位前後まで行ったけど、そこからまた一気に450位まで戻っちゃいました。
なんなんだろう、やはりカテエラ(カテゴリーエラー)すぎますかね?
ラブコメなんですよ?この小説は……カテあってるはずなのに💦

オレンジの線は第一話PVの累積です。
これの伸び率も鈍化傾向。
これについては、特段営業活動してないからなぁ。でも、そもそも第一話PV取れなければ読者は増えてくれないわけでしてw

まあいっか。とにかく、来てくれた人をしっかりと掴めるように、内容を頑張るぜぃ(その前に完結頑張れよ……という話でした)

#女子プロレス
#ビジネス
#エムアンドエー
#スポコン
#恋愛
#連載小説

この記事が参加している募集

#創作大賞2024

書いてみる

締切:

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?