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神様時計 #毎週ショートショートnote

初めて訪れた商店街の奥に、古びた時計店の看板を見つけた。

レトロ看板が懐かしく感じる私は、その店に吸い寄せられるように扉を開けた。

店の奥には、老人が一人。
突然の訪問者に、視線は私に向けられた。

老人の後ろの壁には、大きな振り子時計が飾られている。
よく見ると、針が1本多いことに気が付いた。

「あれ、この時計には4本の針がありますね?時の短針、分の長針、秒針。もう一つは何を示しているのですか?」

私の声に老人は
「これは年針じゃよ。時間を示す短針と同じ長さじゃね。正月の0時0分には、4本の針が揃うじゃろ。それが、年に2度、3月の9時0分30秒と9月の3時0分30秒、この時刻に時計に向かってお願いをすると願い事が叶うのじゃよ。」

不思議そうな顔をする私に、
「それぞれの時刻の針の形を想像してみなされ。ほれ、あの形じゃろ。」
なるほど、これが噂の「神様時計」だったのだ。

「ご主人、仏教徒でも願いは叶いますか。」

老人は、十字を切りながら静かに首を振った。

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