鈍亀

ランニングがメインの趣味ですが、定年退職となり、小説を書くことを始めようと「てのひら小…

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ランニングがメインの趣味ですが、定年退職となり、小説を書くことを始めようと「てのひら小説講座」に参加。500文字制限のショートショートが意外に好評で、こちらで作品発表をしてみることにしました。はたしてどんな評価となるのか楽しみ。最終目標は、坊ちゃん文学賞への応募です。

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  • IYO夢みらい館てのひら小説講座専用マガジン

    • 121本

    2020年からIYO夢みらい館で開催している「てのひら小説講座」受講生作品のマガジンです。

最近の記事

【レトルト三角関係】   #毎週ショートショートnote  魅力的な・・・

男女婚姻多面的関係法案が衆議院を通過した。 100年余り前に「従来とは次元の異なる少子化対策」を唱えた指導者がいたが、大きな効果もないままに人口は減り続けている。 今回の法案も「禁断の少子化対策」と銘打ち、人口減少に歯止めをかけると期待されるが、簡単に言うと男女の三角関係を法律で後押しする法案である。 マスコミは、簡単に三角関係が構築できるとの意味を込めて「レトルト三角関係法案」成立と騒ぎ立てている。 数年後に日本の人口が一千万人を下回るであろうとの危機感は、倫理的な

    • 洞窟の奥はお子様ランチ  #毎週ショートショートnote

      チーン 「さっ、解凍が終わったらお料理しなくっちゃ!」 そう言うや否や台所へと立ち上がった妻。 手際よく食器棚から息子が使っていたお子様ランチ用のプレートを取り出し、 電子レンジの扉を開いた。 「なぜ?何も入ってない。」 彼女は、庫内に手を入れ見えない材料を探し続ける。 十三年前 私は妻と一人息子の昇を連れて、ある有名なキャンプ場に来ていた。 傍には川が流れ、山々は新緑の眩しい季節。 余りの好天に心が緩んでいたのかもしれない。 「遠くに行っちゃだめだよ。」 と川に向かう息子

      • 太陽系第三惑星Ⅱ          #毎週ショートショートnote    【行列のできるリモコン③】

        M77星雲の中心部にあるイリヨテ星の大学研究室 そこでは危険性のある文明が生まれていないか調査研究されている 教授:太陽系第三惑星のその後の状況はどうなんだい。 学生:それが、新型のウイルスを散布した後、3公転したあたりから、効き目が弱まっています。 教授:それじゃあ困るよね。 学生:ハイ そこで新しい装置を開発しました。 教授:ほう それかい。 学生:ハイ これで太陽系惑星群を直列させようと思っています。 教授:惑星直列? 以前、効果が無いと報告があったはずだ

        • 行列のできるリモコン②   #毎週ショートショートnote(青春の香る)

          ある年の瀬、閑古鳥が鳴いていたラーメン店の前に、お客さんの長い行列ができていた。 どうも夢が叶うリモコンを手に入れたらしい。 店主に聞くと、 「実は数日前、パタパタと言う音がして、その方向を見上げると、青い色をしたネコの様なものが浮かんでいたんだよ。頭の上には小さなプロペラが回っていてねぇ、メガネをかけた小学生ぐらいの少年も一緒に浮かんでいたんだ。しばらく眺めていると、青いネコの様な物のお腹のあたりからリモコンが落ちてきたんだ。すぐに駆け寄ってそれを拾った時には、ネコと少

        【レトルト三角関係】   #毎週ショートショートnote  魅力的な・・・

        • 洞窟の奥はお子様ランチ  #毎週ショートショートnote

        • 太陽系第三惑星Ⅱ          #毎週ショートショートnote    【行列のできるリモコン③】

        • 行列のできるリモコン②   #毎週ショートショートnote(青春の香る)

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          行列のできるリモコン   #毎週ショートショートnote 青春の香るで

          彼の指が、私に触れた。 優しく撫でるように。 そのタッチに思わず身を震わせる。 彼との合言葉は、彼の生年月日。 そんなのは止めた方がイイと言われるけれど、 彼はそれを変えるつもりは無いらしい。 そんな彼が、私の中に理想の女性を作り上げようとし始めた。 ヨシ、目と鼻はこれでいいかな。 唇はこんな感じにしてっと・・・ 声は美波ちゃんで決定! 今日から始まったミスコンの「リモートコンテスト」 画像生成アプリを使ってAI美女を作り上げ ミスAIを決めるコンテスト 女性と

          行列のできるリモコン   #毎週ショートショートnote 青春の香るで

          ツノがある東館  #毎週ショートショートnote (一行目で惹きつける)

          ラブホテルは永遠に ある所に 予約が取りづらいほど人気の カプセル型ラブホテルがあった 左右対称の造りで 西館と東館とに分かれている これと言って特徴は無いのだが 強いて言えば ベッドが渦巻き状になっていることぐらいだろう 西館は左巻き 東館は右巻き 西館は空室が目立っているが 東館はいつも満室だ 特に梅雨時期になると 東館の入り口には行列が出来るほどで その長く続く足跡が 雲間から漏れた光に照らされ 輝いている そんな東館は ツノがある東館と呼ば

          ツノがある東館  #毎週ショートショートnote (一行目で惹きつける)

          アメリカ製保健室②    #毎週ショートショートnote

          ジェンダー問題が叫ばれて久しい。 そんな中教諭の定年が撤廃され、本人が希望すれば何歳まででも仕事が可能となった。 教諭不足を補うための対策だが、こうなると保健室の養護教諭も高齢化が進んでいた。 80歳を超えた梅田先生も、まだまだいけると頑張っていました。 しかしここで、前任で70歳台の寅雲風先生が、梅田先生を追い出そうとし始めました。 寅雲風先生は、前回の選任結果に不満を持っていたのです。 「そもそも今の梅田は、教育委員会内の不正によって選ばれた奴だ。梅田が、この

          アメリカ製保健室②    #毎週ショートショートnote

          アメリカ製保健室  #毎週ショートショートnote

          アメリカ人の美人先生がやってくる。 そんな情報を学級委員長の伊勢崎くんが教室に持ち込んだ。 男子生徒は、よろこんで飛び跳ねた。 アメリカ製保健室だ!と騒ぐ奴もいる。 女子生徒は、そんな男子生徒を横目で見ている。 「オイ、伊勢崎。おまえ職員室で見てきたんだろう。」 「ああ、真っ赤な洋服でよぅ、えらくデッカかったぜ。」 そこへ担任が入ってきて、教室は静まり返った。 担任の後ろには赤い服を纏った女性がいた。 「みんなに紹介しておく。こんど養護教諭に赴任してきたクレイ

          アメリカ製保健室  #毎週ショートショートnote

          ドローンの課長 #毎週ショートショートnote

          人類が滅亡した後、残された機械たちにも平等は訪れなかった。 そもそも人類によって作られたものから、人間性を消すことは出来なかったのである。 そのため機械社会となっても、 「働かざる者エネルギーを消費するべからず。」 と言われる社会となっていた。 おのずと機械性能によって階級が生まれ、機種ごとの会社組織が育った。 空間飛行機種が設立した会社の募集要項の一部である。 1.採用対象は、以下の機能を有すること。 ・プログラム飛行機能 ・姿勢制御機能 ・リターン機能 上司の

          ドローンの課長 #毎週ショートショートnote

          航跡  #ショートショート

          私は、船に乗って旅をする時間が何よりも好きだ。 豪華クルーズ船での世界一周旅行には憧れるが、船の大きさや旅の種類には拘らない。 対岸がすぐ目の前にある渡し舟でも十分に楽しめる。 とは言うものの、映画タイタニックの様に、ステキな女性と舳先で風を感じる瞬間を味わいたいと思うこともある。 あの映画タイタニックの場面においては、アメリカという新世界を目指す若者にはやはり、舳先が相応しい。 もし、主人公が60歳代だったとしたら、場面は船尾になっていたことだろう。 だからだろうか、

          航跡  #ショートショート

          ブヒブヒ野郎 #ショートショート

          「ブヒブヒ」 腹が減ったと奴が泣き出した キャベツを数枚剥ぎ取り与えてやる 「ブヒッブヒッ」 今度は嬉しそうに鳴いた コイツが台所に来てまだ半年程だ。 最初の頃は、野菜の切れ端を少し与えるだけで嬉しそうな顔をしていた。 バナナの皮と少し傷んだ実の部分をちぎって口の中に放り込んだ時などは、 「ブヒブヒブッヒ〜〜」 と歓喜の鳴き声を上げる表情はもう、可愛くてしょうがなかった。 それが今では、もっとくれよと言わんばかりに鳴くようになり、いつしかジャガイモやニンジンは、食べ

          ブヒブヒ野郎 #ショートショート

          太陽系第三惑星

           M77星雲の中心部で高度文明を誇るイリテヨ星では、危険性のある文明が遠くの星で生まれていないか調査研究されていた。 教授:この太陽系第三惑星の管理をしているのは君かい? 学生:ハイ 教授:この惑星の生物は進化し過ぎているとの報告が届いているんだが、どうなんだい? 学生:ええ、核分裂の技術を習得してしまいました。 教授:なんだって!大丈夫なのかい? 学生:ハイ、対策として新型のウィルスを散布しておきましたから。 このウィルスが宿主細胞に侵入すると、ウィルスの遺伝子が宿主細胞

          太陽系第三惑星

          お歳玉

          若者の政治離れが叫ばれてもう久しい。 投票権を18歳に下げたものの、度重なる政治家の不祥事による諦めムードも加わり、30歳以下の投票率は1割を大きく割り込んでしまった。31〜50歳でさえも1割前後の状況だ。 これに反して高齢者(65歳以上)の投票率は、その年齢を大きく超えた数字を叩き出している。 こうなるともう、政治家は高齢者の言いなりである。 手始めに、今年の春から熱中症予防対策として、高齢者のいる家庭へのエアコン設置補助制度が始まり、空調機メーカーの株価を押し上げた。

          KKKKKKKKKK   第19回坊ちゃん文学賞応募作品

          私の趣味はランニングである。 私たち市民ランナー憧れの大会と言えば、地元で開催される愛媛マラソンだ。 最近は、マラソンブームでエントリー数も多く、2年連続で抽選漏れだったが、今回久しぶりに当選。早速、ランニングの師匠である白方さんに当選連絡を入れ、一緒に受付をする約束をした。 そして大会当日。 待ち合わせをしていた白方さんと受付を済ませ、ゴール後の楽しみにしようと二人で、屋台エリアをウロウロしていた。 すると、奥まったところに[貴方の旅ラン10K]の看板があることに気付い

          KKKKKKKKKK   第19回坊ちゃん文学賞応募作品

          雨は似合わない #ショートショート

          「冬だから雨は似合わない 冬だから君を思い出す♬」 20世紀後半のフォークグループNSP(New Sadistic Pink)天野滋さんの作品、「雨は似合わない」のさびの部分だ。 21世紀前半には、大雪の影響で東京が大混乱となったこともあったようだが、21世紀終盤には、北海道の山間部で降雪が観測されたものの、22世紀になった今、日本国内で雪を見ることは無くなってしまった。 地球温暖化の進行は、人類の科学技術だけではどうしようもない事だったのだ。 出生率の低下と新しい感染症

          雨は似合わない #ショートショート

          ある冬の日  #ショートショート

          ある冬の日、老婆が行方不明となった。 泣き止まない孫を背中におぶい、綿入りの半纏(はんてん)を羽織っていたそうだ。すぐに大がかりな捜索が行われたが、発見されないまま時は過ぎていった。 そして100年後の冬 今度は、買い物に出かけた若い主婦が、抱っこ紐で子供を抱いたまま行方不明となった。 *** 「この、太陽系第3惑星の生態研究に間違いがあったというのは、本当かね?」 教授が心配そうに話しかけてきた。 彼は、外来侵略種探索研究室の責任者だ。 「そうなんです。100年前にも捕獲

          ある冬の日  #ショートショート