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世界の動物運動から①アメリカ編【ゲスト:アニマル・アライアンス・アジア】

動物問題連続座段階第4回目。今回は世界の動物運動を知るために、海外での活動経験豊富なアニマル・アライアンス・アジアの方々にゲストに来ていただきました。アメリカ、イギリス、カナダやアジア7カ国(+ちょっとスペイン)と、日本での活動を比較し、どういった運動が効果的か、日本にはどのような問題があるかなどを議論していきます。

※動画の内容を一部、加筆・修正しています。

*参加者(敬称略)

【ゲスト:Animal Alliance Asia】

エリー(Director, Co-Foundor)
高橋有希(Japan Coordinator)
かほ(Programme and Research Coordinator)

【レギュラーメンバー】
司会:深沢レナ(大学のハラスメントを看過しない会代表、詩人、ヴィーガン)
関優花(大学のハラスメントを看過しない会副代表、Be With Ayano Anzai代表、美術家、ノン・ヴィーガン)
生田武志(野宿者ネットワーク代表、文芸評論家、フレキシタリアン)
栗田隆子(フェミニスト、文筆家、「働く女性の全国センター」元代表、ノン・ヴィーガン)


アニマル・アライアンス・アジアの活動内容


——今回はゲストにアニマル・アライアンス・アジアの皆さんにお越しいただきました。まず始めにアニマル・アライアンス・アジアの活動内容について教えてください。

エリー アニマル・アライアンス・アジアは、わたしともう1人の香港の活動家のエンジェルと一緒に2019年に立ち上げた、アジアの7カ国にわたる動物正義運動の運動作りをサポートしている団体です。

 始めたきっかけは、わたしもエンジェルもヨーロッパ に住んでいた経験があって、いろんなプロテストやアクティビズムの方法を経験していたのですが、自分が生まれ育ったアジアの国に、ヨーロッパと同じプロテストの方法をコピペのようにもってきてやってみようとしても、なぜかうまくいかないのを見てきました。それで、アジアの様々な国の文化に沿った活動の仕方って何なんだろう?と考え始めて香港と日本とで意見交換をしているうちに、他のアジアのいろんな国の人と話してみたら面白いんじゃないかと思い、最初にカンファレンスを始めました。欧米のやり方をそのままもってくるのではなく、アジア独自の活動の仕方を一緒に考えていって運動をもっと大きくしていこうというのを目的にしています。

 活動内容は主にアジア7カ国の活動家のサポート、教育、トレーニングです。また、活動家への助成金はアメリカからのものが多くて、アメリカの団体や個人、あるいは英語を話せる人に送られてしまって、なかなかアジアの活動家に行き渡らないのを目にしてきたので、アジアに住んでいて英語を喋らない人たちにも助成金が行き渡るように、中間の役としてその資金をアジアの人たちに送る活動も始めたところです。

——わたしたちも有希さんにアメリカの助成金をいろいろ教えてもらって、年末年始にかけて申し込んだんですけど、全部英語だよね。関さんが提出してくれたんですけど。

 そうですね。間違えずに読むだけでも結構大変で。これはみんながみんなできるわけじゃないよな、と思いながらやってました。



アメリカでの活動との出会い


——今日は3名のスタッフの方々にいらしていただいてますけど、それぞれこれまでの活動経験なども違うと思うので、1人ずつゆっくりお話伺っ ていきたいと思います。

 最初に有希さん。ヴィーガンになった理由やこれまでの活動経験について教えてください。

有希 アニマル・アライアンス・アジアで日本を担当しています、高橋有希です。僕は生まれはアメリカだったのですが小学校は日本でした。中学の時にまたアメリカに行き、その頃から宇宙飛行士になりたくて、高校からはアメリカに1人で勉強しに行って、それ以降ずっと海外暮らしでした。

 ヴィーガンになった最初のきっかけは、20年くらい前に、アメリカのUCバークレーという大学の大学院生だった時、キャンパスでチラシをもらって動物の扱いについて知ったんです。それでショックを受けてお肉を食べるのをやめて、それから4年後にはベジタリアンのシェアハウスに入りました。そのシェアハウスは同じバークレーのもので、そこにはヴィーガンの人たちもいて、採卵鶏や乳牛の問題も教えてもらいました。その後は長い間できるだけヴィーガンに近い生き方を心がけながら、 引き続き宇宙の夢を追いかけていたんですが、8年ぐらい前、次に何をしようかなと自分で考えていた時に、やっぱり動物の問題が1番緊急で何よりもそれ に取り組みたいと思って、本当にヴィーガンの生き方を始めまし た。

 ヴィーガンになって初めの2年間ぐらいは、色々な動物保護団体でとにかくボランティアや研修から始めました。その頃、僕は定住していなくて、5年間ぐらいリュックにテントと寝袋を持って世界を放浪してたんですね。なので初めはスペインやカリフォルニアの動物サンクチュアリーで手伝ったり、ボストンでヒューメイン・リーグ(The Humane League)という動物保護団体の元で研修したり、アメリカ南部の大学30校を回ってチラシ配りをひたすらしたりしていました。その後は自分で仲間を集めて、住んでいたところで街頭活動をしたり、“Anonymous for the Voiceless”という、キューブをやっている団体のチャプターを立ち上げました。

 僕は何よりも自然が好きなので、当時はハワイ島に住んでいたのですが、たまたま日本に一時帰国していた時に、日本のアニマルライツセンターでフル タイムで動物のための仕事ができるという機会を頂いたので、5年前にスタッフになりました。去年からは、アニマル・アライアンス・アジアが日本の担当者を探してたので、自分の英語力をもっと活かせるかなと思い、4月からAAAで活動しています。

——キューブってどういうものか説明してもらってもいい?

有希 キューブというのは、路上でパソコンのスクリーンやテレビ画面をもって、工場畜産の映像や、人間がどのように動物を搾取しているのかがわかる映像を流して、普段はそういう現実を知る機会がない人たちに見てもらったり、対話する活動です。

キューブの活動

——あれ、画面持つの重いよね。

有希 そこですか(笑)。そうですね、特に大きな画面だと重いから交代でやります。

——わたしも一回渋谷でやったんだけど、重すぎて「こんなのできない」ってやめた。

有希 首からぶら下げたりするとだいぶ楽になるよ。あとリュックにつけたりしてやったりしてました。



アニマル・サンクチュアリー


——海外だとサンクチュアリーも多かったんですか?

栗田 すみません、「サンクチュアリー」とは?

有希 サンクチュアリーというのは、畜産農場などから動物を保護したときに、その動物たちが亡くなるまで世話をする施設のようなものですね。大きな目的としては、サンクチュアリーを通して、動物たちのもっと自然な姿を見てもらって意識を変えていこう、という狙いのものが多いです。

——サンクチュアリーだと基本的にヴィーガンだったりするのかな?

有希 サンクチュアリーの種類にもよりますけど、ヴィーガンが多いですね。

——日本だと身近なところにあまりないから、サンクチュアリーって言われても分からないですよね。


*日本のサンクチュアリー


栗田
 「サンクチュアリー 日本」で検索すると、宗教施設とか、なぜか陰謀論とか、全然違うものが出てきます。

生田 福島の「希望の牧場」は、もしかしたらサンクチュアリーとして機能してるかもしれませんね。元々肉牛の農場だったんだけど、被爆して全く出荷できなくなって、結局牧場の人たちが終生飼育をしているので、結果的にはそうなってしまった。


——サンクチュアリとシェルターってどう違うんだろう?

有希 僕も確実には分からないんですけど、シェルターっていうと、とにかくその動物たちを一旦避難させる感じなので、もしかしたら環境はそこまで良くないかもしれない。サンクチュアリーというと、もっと動物たちが生き生きと過ごせるような印象があります。

——もう最後までそこで暮すっていう前提なのかな。

有希 そうですね。シェルターは次の飼主が見つかるまでですね。

――有希さんが活動されていたヒューメイン・リーグというのはどういうのがメインの団体だったんですか?

有希 ヒューメイン・リーグは、世界でも1番大きな動物保護団体の一つで、アメリカを拠点として世界中で活動しています。効果的利他主義をもとに、できるだけ多くの苦しみをこの世から減らしていこうという目的なので、主に、採卵鶏や肉用鶏のための活動——例えばケージフリー運動——卵を生むための鶏たちをケージの中に閉じ込めないで飼育する平飼いを進めたりする活動をしているところです。



公民権運動の歴史のある街で


——世界放浪されて、いろんな国の事情を見てきて、どこの国の状況が良かったですか?

有希 僕が今まで行った中で 1番動物に関して意識が高いと感じたのは、バークレーというカルフォニアのサンフランシスコの近くの街でした。60年代に公民権運動が盛んだったという歴史があるところで、それも関係してるのか社会運動に対して意識が高く、ベジタリアンのシェアハウスに住んでた頃、僕は大学院生で、60人くらいの学部生と一緒だったんですが、僕が学部生だった時と比べて話す内容や意識が高くてびっくりしました。僕が大学生の時は、社会問題に全く関心がなかったわけじゃないけど、関心を向ける余裕があまりなくて、僕も周りの友人も勉強ばかりに集中していたのですが、そのシェアハウスでは学生たちが日々社会運動をやっていて、その中の1つとして動物の運動もやっていてすごいなと思いました。

——ベジタリアンのシェアハウスがあるっていうのがすごいね 。

有希 そうだね。確かに日本ではないかもしれない。シェアハウスはベジタリアンだったけど、一緒に食べる食事 はみんなヴィーガンだったんですね。そこに住んでるみんながみんなベジタリアンやヴィーガンというわけじゃなく、その家ではお肉が禁止だったんですが、そこではすごく勉強になりました。

——日本に帰ってきてどうでした?

有希 僕は大人として日本に住んだことがなかったので、正直、日本がそこまで遅れてることを知らなかったんですが、久しぶりに帰ってきてアニマルライツセンターと活動をはじめて、そこで「あ、日本って本当にそういう意識低いんだな」と実感しましたね。他のアジアの国——韓国とか台湾とかと比べても遅れています。やっぱり動物の問題について知らない人がすごく多いし、活動以外の場でベジタリアンとかヴィーガンの人に会う機会もほぼなかったです。海外では結構普通にあったんですけど。あとヴィーガンのお店とかに行かない限り選択肢もない。海外では、ほぼ僕が住んでたところでは、どのお店に行っても、少なくてもベジタリアンの選択肢はあったりはしてたんだけど。

 あと、環境問題もそうなんですけど、インターネットでヴィーガン関係のことや動物のことを検索すると、英語で調べるのとはだいぶ結果が違いましたね。

——悪口ばっかだよね。

有希 そうそう。 あ、レナさんも言ってたね。

——日本が嫌にならない?

有希 嫌にはならないかな。別に人が悪いわけじゃなくて、ただ知られてないだけだから、知れば日本もどんどんこれから変わっていくだろう、という希望があります。もちろんアメリカの方が住み心地はずっといいので、僕は日本に住もうなんて全然思ってなかったんだけど、日本には活動家自体も少ないし、あえてそういうところでやった方が、それだけやりがいを感じるので残ってやることにしました。


社会運動と自分の夢と


——有希さんに前から聞きたかったんですが、宇宙開発のことをずっと勉強されてたじゃないですか。それから動物の活動に方向を切り替えるって、なかなかできないことだと思うんですよね。

 わたし自身も、動物の問題を最優先でやるべきだと思いつつも、どうしても文学が好きだった自分も捨てきれず、この前も正月からずっと本を読んでたりして、でも「ああーこうしている間にも活動しないと動物たちが・・・」と思って自己嫌悪になりました。なかなかその辺捨てきれないんですが、この辺どうやっ て割り切っていますか?

有希 僕は、ずっと宇宙に行きたいという1本でやってきて、それが本当に夢だったんですが、SpaceXというイーロン・ マスクのロケット会社で働いていた時も、みんなすごく頑張って宇宙船やロケットを開発していて、イーロン・マスク自身も他の人たちも「それが世界にとっていいことだ」と思ってる人も多かったんですけど、僕は常に違和感を感じていたんですね。“いいこと”をやろうとしているのに、お昼ご飯には苦しんだ動物たちを食べたりして、知らないうちに自分たちが目指してるものとは反したものに加担してしまってる。その矛盾にモヤモヤしていました。宇宙のこと勉強してる時も、難しいことを議論し合ったりしていると、さっきレナさんも言っていたように、今この瞬間も、人間のせいでものすごい 苦しんでいる動物たちがたくさんいる中で、宇宙のことや自分の楽しみのことだけやっている場合じゃないな、って本当に思った。極端に言うとバカバカしくなるくらい。なので、宇宙にいきたい夢はまだあるけど、もっと緊急でもっと大事なことがあると思ったから、変えるのはすごく簡単でしたね。

 あと、僕は物理を専攻していたんですけど、それは特権であって、こういう活動していてもしいつかお金がなくなっても、自分の学歴や勉強したことを使えば仕事はみつかる、という安心感はあるので、僕はすごい恵まれてると思うんです。だからこそ活動がしやすい感じですね。



「動物のことをやっている暇があったら・・・」


生田 「日本が遅れているのはみんなが知らないだけ」という話がありましたけども、確かにそういう面もあると思うんですね。圧倒的に知られていない。ただ一方で、そもそも知ろうとしない人も多いし、知ってもむしろ反発する人が結構多いような印象もあるんです。例えば、貧困問題や、セクシャル マイノリティの問題に関わっている人からも、動物問題の抗議活動のようす見て、「そんなことやってる暇があったら他にやるべきことあるだろう、と思った」みたいな つぶやきが聞かれたりします。そういうのは日本独特の反応なのか、海外だとどの程度違うのかお聞きしたいです。

有希 それは海外でも絶対あります。日本人の方が特別そういう反応があるという印象は特にないですね。でもやっぱり、全体的な意識のレベルの高さによって、どれくらい多くの人が反発するか、その割合が違うと思うので、日本の方が、拒否反応やアンチっぽい反応をすることに対して、周りから批判されない確率が高くなる、ということはあると思います。

生田 なるほどね。あとお話の中で、「動物の問題が1番緊急な問題だと思って自分で何かしようと思った」と言われていて、僕もそれよく分かるんですね。ただ一方で、海外でもそうでしょうけど、「なんだかんだいって動物より人間の問題が優先だね」って人も多いと思うんです。それについて 、もしそういった意見があった時、どういう風に答えられているのかをお聞きしたいです。

有希 僕がいう「動物」というのは人間も含めてなんですけど、でも人間を含めて考えても、数とその苦しみの度合を見てみると、やっぱり動物たちの方が——特に畜産や養殖に使われている動物たちの方が圧倒的に数も多いし、一生監禁されて自由がなく、自由がないだけではなくて苦しんでいる状態だというの を考えると、やはりそこが大きいんじゃないかと思います。

 もちろん人間の問題にも関心はあって、 特に僕が1番衝撃を受けて動物の問題と似ていると思ったのが、人身売買や性奴隷の問題です。そういうことに関して僕も寄付したりはしてます。要するに同じような問題だと思うので、あんまり「人間だから」「動物だから」と区別をしてない感じです。



→②イギリス編(あとちょっとスペイン)へ




※2023/2/23 一部修正しました。

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